第105話 大変身
それから数日たち、新たな店舗の計画は順調に進んでいる。
「オーナー、そういえばこの商品の名前は何にするのですか?」
「ああ、これは醤油というのですよ。基本的に煮込みであったり、焼き物であったりと料理のバリエーションが広がります。」
「煮込みというのは聞いたことがないですね?茹でるのとは違うのですか?」
この世界には醤油などのような調味料が存在していないため、煮つけや煮込みといった料理の技法すら存在していなかった。
「全然違いますよ。ルークにはいつもお世話になっていますから今度、煮込み料理を作りましょう!」
「ほんとですか!わーい、とっても嬉しいです。そうだ、醤油を販売する時に、その料理も一緒に販売しませんか?そして、レシピなどをお客さんに教えてあげるんです。そうすればきっと醤油を買ってくれるはずですよ!」
「それはいいアイデアですね!確かに、どんな風に使える調味料なのかがわからなければ買うはずもありませんね。ルークの言う通り、料理のレシピも広げましょう!」
二人が新たな店舗の計画を話している中、クレハに一通の手紙が届く。その送り主はなんと王妃だった。
王妃からの手紙には、とにかく助けてほしいという内容しか書かれておらず、具体的なことは一切かかれていなかった。そのため、緊急な用件ではないかと考えたクレハはすぐさま、王妃のいる王城へと向かうのであった。
「ルーク、王妃様からの緊急の手紙です。私は直ぐにお城に向かいますのでお店のことは任せましたよ。」
「分かりました、ですが護衛はちゃんとつけてくださいよね!さすがにまた誘拐されるようなことになるのはごめんですから。」
「分かっていますよ、さすがにそれはドルクスさんが許さないと思って事前に護衛の人たちと馬車を用意していただいていますよ。」
「それならいいです、いってらっしゃい!」
ここは王城、クレハはメイドに案内され王妃の部屋へと通される。いつもであれば王妃の元にサラが仕えているはずだが、珍しく彼女はいない。
「王妃様、お久しぶりです。それで、私をお呼びだとか?」
「久しぶりね、クレハ。領地の経営は順調か話を聞いてみたいところだけど、少し困ったことになってしまってね。あなたに力を貸してほしいの。」
「もちろんです!王妃様にはいつも大変お世話になっているので私にできることであればなんでも仰ってください。」
クレハが自信満々に王妃に訴えかけると王妃は困ったような顔をして話し始める。
「ありがとう、実はお願いというのはサラのことなの。」
「サラさんですか?そういえば今日はいらっしゃらないのですね?」
「いえ、彼女なら隣の部屋にいるわ。サラ、出てきてちょうだい。」
王妃の呼びかけで、サラが隣の部屋からやってくる。しかし、その姿を見たクレハは衝撃を受ける。いつもの自信ありげなサラではなく、恐る恐るクレハの目の前に現れる。今の彼女からは以前のような明るく、自信の満ちた姿は感じられない。
「お、お久しぶりです。クレハ様。」
「えっ、サラさんですよね?」
「あなたがそう思う気持ちは分かるけど、彼女は紛れもなくサラ本人よ。」
クレハはサラのあまりの変わりように、本当に自分の知っているサラなのか一瞬疑ってしまったくらいだ。
サラの変化は自信が感じられなくなっただけではない。その姿も、変化していたのだ。今までのゆとりのあったメイド服はピチピチになり、今にもはち切れそうだ。呼吸もなんだか荒いようで、こちらまで聞こえてくる。
そう、サラは以前のようなスリムな体形から、かなりのぽっちゃり体形に変化していた。
「え~~~っ!」
静かな部屋に、クレハの驚きの声のみが響くのであった。
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