第276話 プアア王妃の結末
チーリエ国王がプアア王妃の様子を見に行くと彼女は檻の中で喚き散らし暴れていた。彼女は檻の中に入れられているこの現状でも自分が悪いことをしたと言う自覚がなく、なぜ、このような事態になっているのか理由すら分かっていなかったのだ。
「ちょっと、ここから出しなさいよ!人殺しに人殺しって言って何が悪いのよ、いきなりこんなところに閉じ込めて出しなさいよ!」
「黙れ、貴様のせいでどれだけ大変なことになったと思っているのだ。連邦内での発言権は失ってしまうし、これからコーカリアス王国や周辺諸国に謝罪をして回らなければならないんだ。しかもその謝罪にかかる金はすべてうちから出すのだぞ。
これからうちに入ってくる金も奴らにもっていかれてしまうというのに、どれだけ大変なことになっているか理解しているのか。」
会議で決定した内容の中にはチーリエ王国に入る収入のうち10%ずつを賠償金として2カ国に何年もの間支払うことも決定していた。
もちろん、この条件を断わるという選択肢も存在していた。しかしながら、もしもこの条件をのまないのであればチーリエ王国は連邦から脱退してもらうことになるとあの場で言われたのだ。
自国だけで独立していくだけの国力がないチーリエ王国にとってそれは死刑宣告とでも言えるようなことだった。だからこそ、それだけは勘弁してほしいとチーリエ国王は泣く泣く条件をのんだのである。
「そんなの知らないわよ、あんたが支払うって約束したのが悪いんじゃない。」
チーリエ国王が少しでも条件を軽減してほしいと頭を下げていた努力も知らずにプアア王妃が自分勝手に彼を批判したことに、ついにはチーリエ国王も我慢の限界を迎えてしまう。
さすがの彼もプアア王妃がここまで無茶苦茶で現状を理解することが出来ない人間だとは思ってもいなかったのだ。
「そうか、もはやお前など人として扱わん。お前は我が国を脅かす害悪だ、害悪は害悪なりの生き方しかできないということを私自ら教えてやろう。今の生活がどれだけ恵まれたものだったかすべてを失ってから思い出すのだな。」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。どこに行くの、ここから出しなさいよ!」
チーリエ国王は彼女にそう告げるとプアア王妃の声に耳を傾けることなく彼女の元を去るのであった。
チーリエ国王の決定により、プアア王妃は表向きは自身の息子をその手で殺してしまったため自責の念に駆られ自殺したということが発表された。
しかしながら実際には国で開発中の新薬の臨床実験を彼女で行うことになる。彼女は自身の体を使って国に与えた損害を賠償することになったのだ。
その新薬が結果的にははやり病の特効薬となり、その莫大な収益でチーリエ王国の財政に彼女が貢献することになるのだがそれは別のお話である。
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