第217話 貴族狩り伯爵

「何を言っている?それはこっちのセリフだ。お前は俺が誰なのか未だに理解していないのか?そこにいる兵士たちがお前の命令を聞かない時点で察しろよ。」


「う、うるさい!貴様ら、何をしている。さっさとこいつを捕らえろ。」


男は先ほどムール男爵に自分が彼よりも身分が高いことを伝えたはずなのに彼は全く信用しておらず、未だに兵士たちに命令している。


そんなムール男爵にあきれ果ててしまったのか、男は兵士たちに命令を下すのだった。


「おい、そのうるさい奴を大人しくさせてくれ、うるさくてかなわん。」


「「「はっ!」」」


彼が兵士たちに命令をするとムール男爵の時とは打って変わって速やかに行動に移る。


「な、何をする!ぶ、無礼者が、捕らえるのは私ではない、あいつだ!」


ムール男爵に兵士たちが迫ってき、彼は抵抗するもののすぐさま兵士たちに取り押さえられてしまう。ムール男爵が体ごと縛られ、地面に押さえつけられていると兵士たちに命令を下した男がゆっくりと彼の元へとやってくる。


「まったく、ここにいる兵士は俺が誰だか理解していたぞ、それなのに貴族であるお前が俺のことを知らないなんてどうなんだ。お前が知らないようだから教えてやる、俺の名はタルフ伯爵。貴族狩り伯爵と言った方が分かりやすいか?」


タルフ伯爵が自身の二つ名との言える別名をムール男爵に告げると彼は突然固まり、震え出してしまう。


「き、貴族狩り伯爵!そ、そ、そんな人間がど、ど、どうしてこんなところにいるんだ!あっ、いや、いるんでしょうか?」


「なんだ、俺が誰か分かったら急に怖くなったのか?俺が来た理由なんてお前が一番わかっていると思うんだがな、本当に心当たりがないのか?」


タルフ伯爵はニヤニヤと笑みを浮かべながらムール男爵に尋ねている。そんな彼に質問をされているムール男爵は体中から汗があふれ出ているようで、どんどん汗がしたたり落ちている。


「い、いやですね、あなた様に目をつけられるようなことなど私は何もしていませんよ。タルフ伯爵と言えば貴族の特権を使って悪事を働く貴族を粛正することを国王陛下に直々に認められたお方なのですから、そんな方が私に用があるなんて私が悪事を働いているみたいじゃないですか、そんなことなんて今まで一度だってしたことがありませんよ。ハハハッ。」


ムール男爵はタルフ伯爵がここに来たのは何かの手違いだと笑っているが既にもう遅いのだ、彼の命運は今尽きようとしている。

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