第295話 殺害計画

「いいえ、あなたは立派な小心者ですよ。胸を張っていいくらいです。現に、あなた達が王都ではなくこの場所で抗議をしている理由も好きでやっているからではないですよね。


正確にはここでしかできないからです。単純に怖いんですよ、国王が規制を始めたばかりのこの時に王都で抗議などを突然始めればもしかすれば反逆者として兵士に捕らえられてしまうかもしれない。


そうでなくても国王の意見に賛成している貴族に目をつけられればそれだけで自分たちはひどい目に合うかもしれないとそう思ったんですよね。


だからこそ、私の所でこんなことをやっているんですよね。私であれば商会もやっていますから下手なことをして信用を落とさないために多少のことには目を瞑ってくれると考えたんじゃないですか?


結局のところあなたのやっていることは自分が安全圏にいながら反撃ができない相手に手をあげて喜んでいるようなゴミと一緒です。ほんと、性格から腐った生ゴミですね。」


クレハにさんざんバカにされ、ついには生ゴミなどという不名誉な名前まで付けられ、抗議をするだけだと考えていた彼の脳内で何かがはち切れてしまった。


「貴族だからってなめるなよ、俺が小心者だと、お前に手を出さないだと、本当にそうかお前の体で確かめるんだな!」


ついには我慢できずにクレハに手を出そうとした彼らのリーダーであったがこの状況でいきなり、クレハがにっこりと彼に微笑みかけたのだ。これには彼も思わず動きを止めてしまう。


「そんな必要はありませんよ、あなたが自分には手を出せない相手を選んでいるのであれば私は自分で安全圏を作るだけですから。・・・さぁ、反逆者を捕らえてください!」


そうクレハが声をあげると瞬く間に兵士たちが現れ、彼らが逃げられないように包囲したのだ。突然のことで抗議者たちはおろかルークでさえもこの状況に驚きを隠せないでいた。


「お、おい、こんなことをしていいのか、俺たちに手を出せばバックにいる奴が黙っちゃいねーぞ!それに、商会の会長としては善良な市民を兵士たちで威圧させて取り押さえようとするなんて噂を流されちゃおしまいだろうが。分かったらさっさとこいつらをどけろ!」


「ふむ、ただのバカの単独行動かとも思っていましたが背後に本当に誰かがいるのであれば詳しい話を聞かないといけませんね。


とりあえず兵士の皆さん、ここにいる全員を国王陛下の殺害計画を企てた罪でとらえてください!」


クレハの口から飛び出した言葉にここにいる全員が困惑してしまっている。もちろん、取り押さえられるはずの彼らも自分たちはそんなことなどしていないとクレハに抗議する。


「ふざけるなよ、冤罪だ、冤罪。俺たちは国王の殺害計画なんて企ててない!はっ、ようやく化けの皮が剥がれたな。そうやってお前は何の罪のない平民を冤罪でとらえて点数を稼いでいるんだろ。


今に見ていろ、俺のバックにこのことを話してお前を破滅させてやる。それで俺はこの街のトップになり変わってやる。お前が今まで積み上げてきたものも何もかも俺が頂いてやるぜ!」


いわれのない罪で冤罪をかけられヒートアップしている彼に対してクレハはいたって冷静だった。


「ルーク、先ほど彼らは薬の規制を行っているものは全員ぶっ殺してやると言ってましたよね。それって、殺害予告だと思いませんか?」


突然クレハに問われたルークは一瞬だけ押し黙ってしまうも、よくよく考えれば国王こそが規制を発表した人間であるためそう言われればそうである。


「た、確かに、国王陛下が規制を発表したんですから、彼の発言は国王陛下に対しての発言とみて間違いないですね。」


「そう、つまり私はこの国の貴族として国王の殺害予告を企んでいる者たちを捕らえる必要があるんですよ。ここにいる全員、一人残らず。」


その言葉にリーダーはとんでもないことになったと顔を青くするとともに今までずっとリーダーの陰に隠れ、合いの手で抗議をしていたものたちは異議を唱えるのであった。

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