第364話 クレハの忠告
「あら、クレハじゃない。晩餐会では、なかなか話す機会がなかったから、会いに来てくれたの?」
クレハが王妃に面会を求めると彼女は他の貴族達にクレハが遠慮しており、今日は話す機会がなかったため、再度、挨拶に来てくれたのではないかと勘違いしていた。しかしながら、クレハが面会を求めた理由は全く違ったのだ。
「挨拶ではありません。先ほどの晩餐会でホルイン伯爵から王妃様がホルイン家の新作の香水を付けているというお話を聞きました。」
「あら、そのことね。ごめんね、ホルイン伯爵とのわだかまりは話に聞いているわ。クレハのものは今度、使わせてもらうから、今日は許してちょうだい。」
クレハの話とはホルイン伯爵家の香水を自分が使用したことだと考えた王妃は次こそはクレハのものを使用するからと彼女をなだめようとするが、クレハはそれをすぐさま否定する。
「そうではありません、あまり、このようなことを言っては失礼になってしまうかもしれませんが、あの香水を使うのはお勧めできません。もしも、ホルイン家の香水を使うのであれば、以前の香水を使うほうがよろしいと思います。」
「えっ、それは一体?」
クレハに唐突にホルイン家の香水を使うことを否定された王妃は困惑していた。そんな時だ、この場に別の客人が現れることになる。
「王妃様、失礼いたします!晩餐会では我がホルイン家の香水を使用いただきまして誠にありがとうございます。今後も、ぜひとも、我がホルイン家の香水をお使いください。むっ、なぜ貴様がここにいるのだ!」
クレハと王妃が話している途中にやって来たのはホルイン伯爵だった。本来であれば王妃が許可を出す前に勝手に入室してくるなど、無礼としか言いようがないが、彼はそんなことなど全く気にしていなかった。
そんな事よりも、彼が気になったのはこの場に商売敵ともいえるクレハがおり、王妃と何やら話をしていたことだった。
「ホルイン伯爵、王妃様の許可もなく勝手に入室するなど無礼ですよ。」
「そんなことはどうでも良い、それよりも重要なのはなぜ貴様がここにいるのだ!まさか、王妃様が我が商会の香水を使っていたからといって自分のものを使って欲しいと泣きつきに来たのか!」
ハッキリ言って、クレハ商会ほどにもなれば王妃の宣伝は無くても商売は成功することが可能なのだ。しかしながら、クレハ商会を認めていないホルイン伯爵からすれば彼女がここにいること自体が自分を出し抜こうとしているとしか思えなかったのだ。
「違います、王妃様には今日つけていた香水の使用を控えるように忠告に来たんです。」
クレハがここに来た目的をホルイン伯爵に話すと彼は突然、笑い始めるのだった。
「ぶははははっ、貴様、そのような事をして恥ずかしくないのか!ふははははっ、やはり成り上がりは三流、三流以下だな!」
王妃にホルイン家の香水の使用を控えるように忠告したのは彼女の匂いが酷かった為なのだが、ホルイン伯爵は自身の香水の売り上げが下がってしまうと考えたクレハが王妃に駄々をこねたものだと考えたのだ。
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