第365話 晩餐会での真実
ホルイン伯爵は香水の売り上げを心配したクレハが無駄な抵抗を試みていると笑っているが、そんな彼を彼女は冷めた目で見ている。
「何、訳の分からないことを言っているんですか?私はあなたと違って自身の商会で真っ当な製品を作れますので変なことはしません。」
「な、なんだと!貴様、どれだけ私を侮辱すれっ。」
クレハの反論に一気に不快になるホルイン伯爵であったが彼の言葉を遮りクレハは話を続ける。
「王妃様、この際、元凶が来てしまったので失礼かと思いますが、正直なことを言っても良いですか?」
「えっ、正直なことって一体何のこと?それに、先ほどはホルイン伯爵の香水を使うのであれば以前のものを使ったほうが良いって言っていたわよね。その事と関係があるの?」
「おい、貴様、伯爵である私の話を遮るなど大罪だぞ!」
王妃の部屋に許可なく入ってきた彼が言えたことではないがクレハに文句を言うと彼を止めたのは王妃だった。
「伯爵、私はクレハと話しているの。すこし、そのうるさい口を閉じてくれるかしら?」
「えっ、は、はい。」
王妃の一言で先ほどの威勢はどこに行ってしまったのか、ホルイン伯爵は瞬く間に静かになってしまう。それもそうだろう、先ほどから騒ぎ立てているホルイン伯爵のうるささに王妃は少しだけ不機嫌になっており、かなり威圧のあるにらみをぶつけたのだ。
「それで、聞かせてくれるかしら?」
「はい、正直に言いまして、本日の晩餐会の話題は王妃様の匂いで持ち切りです。」
「匂い?それって、新しい香水のことかしら?」
「ほら見たことか!これで我が家の香水は大ブレイクに違いない。話題が話題を呼んですぐに売り切れるぞ!」
ホルイン伯爵は王妃の匂いが晩餐会で話題になっていたと知り、自分の計画がうまくいったと満足気である。
自身の新作の香水を王妃に使用させ、その香水が話題を呼んで自分は香水で大儲け。そして、自分に歯向かった男爵は香水の売れ行きが著しく低下し、店を畳むことになる。
今の状況はホルイン伯爵が計画した通りに進んでいるように見えた。しかしながら、次の瞬間、クレハの口から出た言葉で部屋の空気は凍り付くのであった。
「違います、王妃様の匂いが話題になっていたのは確かですが、良い匂いと話題になっていたのではありません。臭くて話題になっていたのです。皆さん、王妃様とあいさつを終えるとひどく顔を歪めていました。」
「えっ・・・。」
「はっ・・・。」
ホルイン伯爵は高笑いしていた表情のまま固まり、王妃に至っては目から光が失われていたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます