第363話 晩餐会の終わり

「ざまぁみろって、何がですか?」


クレハはホルイン伯爵がここまで自信満々な理由が分からず、思わず、首を傾げてしまう。もちろん、急に現れたホルイン伯爵に、隣にいるポティリ男爵も顔をしかめてしまう。


「ふははっ、まだ分からないのか。あの王妃様が付けている香水、あれは我がホルイン家で生み出した最新の香水だ。王妃様がこのような場で使用すればいい宣伝になるだろう。


そうなれば明日からは貴族どもが貴様の香水ではなく、私の香水を買うのだ!私から客を奪ったつもりかもしれんが、それはもう終わりだ。残念だったな!」


ホルイン伯爵は一人で高笑いしているがクレハとポティリ男爵は思わず顔を見合わせてしまう。


「ビオミカ男爵、まさか、あの王妃様の匂い・・・。」


「えぇ、彼の言い分だとポティリ男爵の考えている通りだと思います。」


二人は高笑いしているホルイン伯爵に呆れた目を向けると彼はその視線を勘違いしたのか、さらに笑いを響かせるのであった。


「くくくっ、なんだ、その目は、そんなに羨ましいのかぁ~。」


「違いますよ、何で私たちがあなたを羨まなければならないんですか?むしろ呆れているんですよ、あなた、自分が使った香水の香りを試していないんですか?」


「はぁ、何を言っているんだ、貴様にはあの濃厚なバラの香りの良さが分からんのか。これだから成り上がりは、鼻まで三流だな。まぁ良い、明日からは私の時代だ!貴様らは我がホルイン家の香水の人気を、指をくわえてみているんだな。はっはっはっはっは!」


こうして、何を勘違いしたのか、ホルイン伯爵は勝手に満足してしまい、クレハ達の元から去っていったのだった。クレハは王妃に彼女の状態を伝えようとするも挨拶に来ている貴族たちが多く、ただの男爵であるクレハが話しかける隙など無かった。


そのまま、晩餐会は終わりを迎えてしまい、ついには王妃に香水のことを伝えることができなかったのである。


当然、本日の晩餐会では王妃の耳に入らないように貴族たちは気を付けていたが、彼女の匂いが強烈であったことは瞬く間に広がってしまう。


それもそうだろう、王妃やホルイン伯爵はバラの香水を使用していたため、新たな香水は少しだけ匂いが強いものだと考えていた。


しかしながら、普段からあまりバラの香水を使わない者たちからすれば彼女の匂いはあまりにも強烈だったのだ。だからこそ、王妃の前だけ表情を崩さずに、その場を去るとひどく顔をしかめるものが多発し、貴族たちの間でも会話のネタとなっていたのだ。


今日の晩餐会ではどうすることもできなかったが、これからの王妃のことを考えれば少しでも早く彼女にそのことを伝えたほうが良いとクレハはすぐさま、王妃との面会を求めたのだった。

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