第350話 ギュラーの脅し
時は過ぎ、ギュラーが学園長の秘密を知ってしまってから、しばらく経った頃だ。あてにしていたクレハも自分の言うことを聞かないということが判明し、彼は父親にそのことを告げ口していた。
「親父、あの成り上がり、俺の言うことを全然聞きやがらないんだ。このままじゃ、せっかく掴んだ情報も意味がないぞ。」
「あぁ、男爵家のくせに伯爵家の人間の言うことが聞けないというのか。その男爵家、なんていう家名だったか?」
「ビオミカ男爵だよ、ビオミカ男爵!前に話しただろ、忘れたのか。あの野郎、俺を馬鹿にしやがって。ふざけるな!」
ギュラーはクレハとの会話を思い出し、不機嫌になりながら地団駄を踏む。しかし、そんな彼とは異なり、彼の父であるホルイン伯爵はあまり気にしていないようだ。
「あぁ、そう言えばそんな奴がいたな。まったく、これだから成り上がりの商人風情は。古くから貴族の血を引くものと新参者を一緒にしているわけではないだろうな。それに、男爵家だと、子爵ですらないのか。
そんなものは早々に処理しなければならん。我ら王国貴族の膿だ!学園長など、後だ、我がホルイン家に歯向かったビオミカ男爵を早々に何とかしろ。そうだな、ちょうどいい、その学園長を脅してビオミカ男爵を破滅させてこい。」
そんな父親の言葉を聞き、ギュラーは一気に悪い顔になる。
「あぁ、それならあの成り上がりもどうすることもできないだろうな。」
ギュラーは早速、ホルイン伯爵の指示通り、学園長に秘密裏に接触していた。
「学園長、あんた、相当な変態なんだな。以前にあの成り上がりに鼻水をつけながら抱きついているのを見ちまったぜ。」
「ヒョゲッ、な、なな、何のことですかいな。」
突然、ギュラーに話があると二人きりになった学園長であったがいきなり、自分の秘密がばれていることに動揺を隠せなかった。
「どんだけ動揺しているんだよ、それで隠し通せていると思っているのか?滑稽だな、こんな奴がこの学園の長だなんて、恥ずかしい限りだぜ。」
「で、ですから、私には何のことか分かりませんね。リゼラン先生に口止めでお給料を1.2倍にしておいたんですから、そんなことはありえませんよ。」
学園長はとぼけているつもりだが動揺がすさまじく、完全に墓穴を掘っていた。
「教師に口止め料まで払っているのかよ、ほんと情けない野郎だな。まぁ良い、こっちの要求はただ一つだ。あの成り上がりの商人を全校生徒の前でクビにしろ!全校生徒の目の前で、この権威ある学園から追放されれば流石のあいつもただでは済まないだろう。」
この王立学園から追放される、それは生徒であっても教師であっても非常に不名誉なことなのである。だからこそ、ここを追放される人間の人生は終わったと言っても過言ではない。
ギュラーはクレハを全校生徒の目の前で追放させることによって国中から信用を無くそうと考えていたのだ。
「えっ、嫌ですけど。」
学園長の秘密を握った今、自分の言うことを何でも聞くと考えていたギュラーであったが、クレハの時と同様に彼女も自身の言うことを全く聞く気がなく、怒りでどんどん顔を赤らめるのであった。
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