第369話 二回目の晩餐会

例の晩餐会から数日後、王妃の呼びかけで再び、晩餐会が開かれようとしていた。招待された貴族は以前の晩餐会に参加していた人間で、この晩餐会の意図は皆、理解していた。


しかしながら、彼らに参加しないという選択肢はない。この晩餐会の意図が先日の王妃の失態を拭うためのものであったとしても、王妃直々に招待があった晩餐会であり、断るのは失礼にあたるからだ。


そんな貴族たちの考えが渦巻く中、晩餐会は開かれるのであった。もちろん、本日も以前と同様に貴族たちの後に国王や王妃が入場し、彼らに挨拶を行う流れだ。


しかし、本日は以前と異なることが一つだけあった。それは、王妃へのあいさつを終えた貴族の表情を伺えば明らかだろう。


「なぁ、先日は王妃様の匂いは正直、酷いものだったが、今日は心地いい匂いがしたな。」


「えぇ、そうですね。何だか、自然の中にいるような心地よい香りでした。」


「先日の一件は何だったのか。あれは何か香水を付けていられるのだろうか?あの香りなら私も試してみたいものだ。」


以前とは異なり、王妃とのあいさつを終えた貴族の中には誰も顔をしかめるような人間はいなかった。むしろ、彼女から感じられた香りを心地よいと皆、褒めたたえている。


そんな風に挨拶が終わるといよいよ、王妃が貴族たちに話を始める。


「皆さん、今日は私の招待に応じていきましてありがとうございます。今日は皆さんに紹介したいものがいますのでお呼びしたんです。クレハ、こちらに来てください。」


「はい!」


王妃の言葉にこの場にいる貴族たちが注目している中、彼女に指名されたクレハは王妃の元へと向かう。


「この中には知っている人もいるかもしれませんが彼女はクレハ商会の商会長であり男爵でもあるビオミカ男爵です。彼女にはホルイン伯爵にはめられた私を救って頂いた恩があります。」


王妃がそう説明するとクレハが自己紹介を始めるのだった。


「皆様初めまして、クレハ・ビオミカと申します。以前の晩餐会であろうことか、王妃様に酷い匂いのする香水を使用させ、その名誉を著しく穢したホルイン伯爵に変わり、新たな香水を開発させていただきました。


私の香水で少しでも皆様の心が心地よくなり、穢された王妃様の名誉を回復できれば幸いです。」


クレハのその言葉に会場中の貴族達はざわざわと動揺を見せ始めるのだった。

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