十三章 王立学園

第340話 正気に戻った学園長

「グヘッ?あれ、ここは、・・・。というか、何で縄で縛られているの?」


クレハに突撃してきた変態、タミトン学園長が目を覚まし自身の置かれている状況に困惑しているとクレハがようやく目を覚ましたかと声をかける。


「正気に戻りましたか、タミトン学園長。」


それはクレハが声をかけた瞬間だった、先ほどの困惑していた様子から急にスイッチが入ったように目をぎらつかせ、縄で縛られた体を芋虫の様に動かし、再びクレハに突撃しようとしたのだ。


「グヘヘッ、グヘヘヘッ、クレハ様~~~~~、ブヘラッ。」


しかし、クレハもこのことは予想していたのか顔面を足で押さえつけることで彼女の動きを止める。


「さて、どうやら未だに正気に戻られていないようなのでもう一度気絶させて王妃様の元に送り返しましょうか?私は話し合いをすると聞いていたのですから今回の会談に応じたのですよ。


これ以上変態に付き合う趣味は私は持ち合わせていません。このまま手足を棒に括り付け、獲物を運ぶように王都まで凱旋しますか?


学園長をやっているらしいですし、生徒達は自分たちが目指す方向性が生で見れていいと思いませんか?きっと、一瞬で注目の的になること間違いなしですよ。」


クレハは足を押し付けながら学園長にそこまで言うと彼女もそれは自身の尊厳が失われると感じたのか、ようやく、”グヘッ”以外の言葉を放つのであった。


「あっ、申し訳ありません。それだけは、ご容赦お願いいたします。私にも立場がありますので。」


「えっ、グヘッ以外喋れたんですか。」


「あっ、はい。ちゃんと喋れます、これでも学園長の任を受けておりますので。あの、お約束していたお話に移りたいのでこの縄をほどいていただいてもよろしいでしょうか?もう飛び掛かりませんので。」


「ドルクスさん、誰ですかこの人。さっきと全然違うじゃないですか。」


「ですから、この人はタミトン学園長ですよ。いったじゃないですか、普段はちゃんとした人なんですよ。」


唐突に態度を変え、真人間のようになったタミトン学園長に対し、クレハは思わずドルクスに先ほどとは本当に同じ人間なのか尋ねてしまう。


「絶対嘘ですよ、この人、実は二人いて今の瞬間に信じられない速度で入れ替わったとかないですか!」


「無いですよ、むしろそっちの方が凄いですよ。」


クレハは目の前の現実が信じられないのか、タミトン二人説で押し切ろうとするが、そんなことはありえない。


「はぁ、まぁ良いです。とりあえず、手の縄くらいはほどきましょう。足はダメです、またあの変態が出てきては困りますから。」


こうして、クレハ達はようやく本題へと話を進めるのであった。

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