第268話 ウィンズス王国からの招待状

その連絡がもたらされたのは各国にエンポリー連邦からコーカリアス王国の危険性に関する書状が配布されてしばらく経ってからだった。


なんとクレハ宛にウィンズス王国から接触があったと王妃から連絡があったのだ。内容としてはエンポリー連邦の書状をこのままにしておけば体裁が悪いだろうから仲裁を行おうというものだった。


クレハは当初この提案を聞いた際にはコーカリアス王国から何か条件を引き出すつもりであると考えていた。そのため、エンポリー連邦の悪だくみくらい自分で解決策を考えられると話を断わろうとしていたのだがなんと彼らが求めてきたものはハンバーグのレシピだったのだ。


流石にこれにはクレハも何か裏があるのではないかと考えていたがどうやらウィンズス王国の国王があの日の生誕祭にハンバーグを食しており、あの味が忘れられないため何としてもレシピを教えて欲しいと嘆願してきたことが分かったのだ。


クレハもその程度のことで今回の騒ぎが収まるのであれば安いものだとウィンズス王国からやってきた使者にハンバーグのレシピを教え、ウィンズス王国が主催でコーカリアス王国の冤罪を晴らす茶番が行われることが決定したのだ。




ここはウィンズス王国の王城、本日、ここには各国からの要人たちが一同に集まっていた。もちろん、この中にはクレハやナタリー王妃、エンポリー連邦の関係者も集められていた。


なぜ、彼らがここ、ウィンズス王国に集められたのか。それはウィンズス王国の国王からぜひ、エンポリー連邦の書状の件に関して話し合いたいという親書がもたらされたのだ。


各国も内容が内容だけに、ぜひとも話し合いたいという返信が多くもたらされ、本日の催しが開催される経緯となった。


「さて、皆様、本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。本日、皆様にご集まり頂いた理由は先日、エンポリー連邦からもたらされた書状の内容に関して話し合うためです。


おっと、今回の話は長くなりそうですから皆様にはお食事を楽しみながら会議に参加いただきましょう。」


ウィンズス国王がそのように話すと次々とゲストの目の前にとある食べ物が配膳されていく。


「こ、これは。」


「なぜこれがここに。」


「いったいどういうことなんだ、これがどうしてこの国にある。」


その皿を見た各国の重鎮たちは驚きを隠せないでいた。なぜなら、彼らの目の前に出されたものは本来であればコーカリアス王国のみでしか食すことが出来ないハンバーグだったからだ。


もちろん、これはあらかじめクレハ達に知らされていたことだ。もともと、ハンバーグはクレハ商会でも販売するつもりであったため、今回のレシピを教えるというのはウィンズス国王が私的に食す場合のみ活用するという条件付きのものであった。


しかしながら、今回の茶番にハンバーグを利用したいという話を聞き、計画の詳細を聞いたクレハは面白いとぜひとも利用してほしいと今回の計画が実行されたのだった。


もちろん、ウィンズス国王の意図を理解していないプアア王妃は自身の息子の死因となった料理を目の前に出され、気が気ではないのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る