第28話 元商業組合・組合長マニラ

彼女は代官から預かった兵士を率いてクレハ商会に向かったものの、王妃の率いる兵士たちに取り押さえられた。


そのため、自分は代官の命で衛兵を率いてきたのだと騒いだものの、兵を率いてきたのは王妃その人だった。マニラはこのままではまずいとすべてを代官のせいにし、自分は脅されていたのだと供述し罰金のみで解放された。


マニラが組合長の商業組合はあくまでも商人たちの寄り合いで何の権力もなかったからだ。また、なぜか帰り際の王妃たちの機嫌がよく、実刑にはならなかった。しかしながら、いたずらに国を混乱させたとして、かなり大きな金額を支払うことを条件に解放された。


少しでも支払いが滞れば、すぐに兵士が捕らえに来るという条件付きで。マニラの商会にはマニラが逃走しないように常に兵士が常駐していた。そのため、マニラはピトリスの街で商売を行わなければならなかった。


しかしながら、先日の一軒でマニラは住人たちから噂されており、だれも彼女の商会を訪れる者はいなかった。そのうえ、なぜか兵士が常駐しているのにもかかわらず、彼女の商会に石が投げ込まれることが多々あった。決まって、その際には叫び声が聞こえてくる。


「お前のせいで俺はおしまいだ!お前の話にさえ乗らなければ俺は成功していたんだ!俺だけが地獄行きなんて許さねえ。絶対にお前も道づれだ!」


もともと商会の会員だった商人たちは今回の騒動のせいで客が寄り付かなくなってしまい、ほかの場所で商売をやり直すにしても手持ちの資金がなく詰んでいる状態だった。そのため、彼らには何も残されておらず、自らをこのような状態にしたマニラをとても恨んでいたのだ。


「こんなはずじゃなかったザマス。どうして、どうしてこうなったザマス!せめて罰金は支払い終えないと破滅ザマス。とにかく何か売るザマス」


マニラは自らの商会に残っている商品を売ろうとするが、住人たちにした仕打ちや元組合員がマニラの商会に石を投げ込み商会の見た目がひどくなったなどの原因から商品が一つも売れず返済の日がやってきた。




彼女の元には複数の兵が店の前を訪れる。


「マニラ商会の会頭マニラ。今月の罰金の返済の期日だ。支払いの準備をしろ!」


「もう少し待つザマス!あと一週間、いや五日あれば返済できるザマス。だから待つザマス」


その言葉に兵を率いてきた兵士長は声を荒らげる。


「ふざけたことを言うな!お前の商会に売り上げがないことは常駐していた兵から聞いているのだぞ!期限は絶対だ。支払えないのなら開発の進んでいない土地で朝から晩まで働き続けることが事前に決まっている。おい、こいつを連れていけ!」


兵士長の話を聞き、マニラは顔を青くする。


「待ってほしいザマス!あ、明日には必ず支払うザマス。だからそんなところで働きたく無いザマス。私には無理ザマス!」


マニラは兵士長に嘆願するが現実は非情だった。


「言ったはずだ、期限は絶対。お前たち連れていけ!」


マニラは騒ぎ続けるが兵士たちに抑えられ、連行されていく。その後、マニラは未開の地で朝から晩まで働き、商会長の時に蓄えた脂肪を減らしたとか減らさなかったとか。

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