第211話 動き出す商会長
常務が目を覚ましたのはクレハ達が立ち去ってから翌日のことだった。起きてしばらくの間は記憶が曖昧でいったい何があったのかと考えていると信じられないくらいの痛みを覚え、その場でもだえ苦しんでしまう。
そんな様子を朝の散歩に来ていた住人たちに発見され、彼は病院で治療を受けることになるのだった。もちろん、病院では一体何があったのかと尋ねられるも彼は何も答えなかった。正確には答えたくなかったというのが正しいだろう。
もしも、ここでクレハ達にこの傷を負わされたと言ってしまえば自分たちの商会がクレハ達をつぶすためにチンピラたちに襲わせたことも明るみになってしまう。なにしろ、あの場での目撃者などクレハに商品を売っていたものが何人もいるのだから。
だからこそ、常務はこの傷がどうしてできてしまったのかなど絶対に口を開くわけにはいかなかったのだ。唯一の懸念材料は常務が目を覚ました時には自分が用意したチンピラたちがすでにいなくなっており、彼らが逆恨みをして詰所に駆け寄らないかということだった。
しかしながら、既に彼らの姿はなかったためにそこはどうすることもできなかった。病院を出ていき、常務が商会に戻るとすぐに商会長に呼び出されることになる。
「それで、例の件はどうなったのだ!いつまで経っても商品が入ってきていないではないか、これでどうやって商売をしろって言うんだ!貴様は常務の癖にそんなことも分からんのか!」
「ほうしわけほざいません。」
「あ”!何言っとるか分からんわ!まともに話すこともできないのか!」
顎が砕けてしまい、まともにしゃべれない為、常務は商会長に筆談で事の経緯を説明する。
「あ”、何だこれは!チンピラを使ったのに失敗しただと、それにこいつらの行方も分からなくなった?貴様は何をやっているんだ。あれほど言っただろうが、この手のことを行うのであれば絶対に失敗は犯すなと。これで足が付いたらどうするんだ、もういい!この件は私が対処する、全く、使えないやつめ!」
「は、はってくたしゃい!」
「うるさい!貴様が無能だからだろうが、これが終わったらクビにしてやる!」
商会長は腰かけていた椅子からその重い腰を上げると怒りの表情で常務を睨みつけながら部屋を出て行ってしまう。しかし、残された常務は気が気ではなかった。
なぜなら、今回のミスが決定的になり商会長にクビを言い渡されてしまったからだ。このままでは今まで自分が積み重ねてきたものがすべて水の泡になってしまうと常務は焦りに焦っていた。
そのために、商会長に許可は取らずにすぐさま自分のコネを使い、事態を収拾するべく動き出したのだ。自分が事態を収拾すれば商会長も温情を施してくれると考え。
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