第346話 下がり続ける信頼
「まさか、学園長がそんな方だったなんて・・・。」
リゼランに自身の本性がばれてしまったことで放心状態であった学園長に変わり、クレハは学園長の残念さを説明する。
「まぁ、私は元々、初対面でこの状態でしたから、いつものことかと思ったんですけど、やはり本性を知らなかった方からすればショックを受けるものなんですか?」
「はい、私は学園長にあこがれてこの学園の教師になったと言っても過言ではないですから。ここまで残念な方を信頼していたことがショックです。」
「うわ~~~ん、もう終わりです。職員にこのことがばれてしまうなんて私は生きていけないです。明日から私は学生たちにも笑いものにされて生きていかなければならないんです。」
ワンワンとなく学園長に対してあまりにも可哀想だとリゼランは彼女を慰めようとしていた。確かに先ほどの件で幻滅したとはいえ、一度は憧れた人間だ。そんな人間を助けたいと言葉をかけようとした時だった。
「もうこうなれば最後にクレハ様の匂いを堪能してやります。いや、匂いだけじゃ足りないです!クレハ様の涙も、汗も、髪の毛も全部私ものです!」
「あなたの場合は寝言は寝ても言わないほうが良いですね。寝言の範疇を超えています。」
「グヘッ!」
涙を流しながらやけになりクレハに突撃した学園長であったが虚しくもクレハに片手で頭を鷲掴みにされ、あっけなく散っていったのであった。
「が、学園長。あなたという人は・・・。はぁ、クレハ先生、もう行きましょう。もう学園長のこんな姿は見たくありません。」
リゼランの中に僅かに残っていた学園長に対する尊敬のまなざしも一切なくなり、彼女は頭を抱えながら目を背けるのであった。こうして、学園長の本心がリゼランに大々的にバレてしまったのだが、それは彼女だけではなかったのだ。
ここに、学園長の本心を新たに知ってしまった人がもう一人いたのだ。それは、ここ最近、散々クレハに対し喧嘩を売ってきたギュラーであった。
「マジかよ、学園長、貴族社会ではあれほど立派な人間はいないって言われていたのに、中身はとんだ変態だな。だが、これは利用できるかもしれない。
上手くいけば俺はこの学園のトップになれるぞ。それに、親父にも何か使えるネタがあれば、いつでも知らせろって言われたからな。
この事実は我がホルイン家にとっては大きな利益をもたらすことになるだろう。そうなれば、まずはあの成り上がりから利用するか。どうやら、学園長はあの成り上がりに頭が上がらないからな。いいものを見たぜ。」
クレハ達が知らない間に、学園長の本心を知ったギュラーは自らが学園のトップとなるため、暗躍し始めるのであった。
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