第373話 囮
学園長を見つけたギュラーが彼女を見つけるとニヤリと笑みを浮かべ、近づいてくるのだった。
「おい、学園長。この学園は今日から俺が統治する。とりあえず、毎月、運営費の1割を献上するんだな。いいな、これは命令だ!」
学園中の目が集まる中、ギュラーの声が響き渡ると、学園はし~んと静まり返っていた。そんな静寂の中、一斉に笑いが響き渡るのだった。
「「「「「あはははっ。」」」」」
「おい、おい、あいつ、マジかよ。いまどき、あんなガキ大将みたいな脅し方あるかよ。あいつ、何歳だよ。」
「だよな、流石にあれは幼稚すぎるだろ。あんなことしても、すぐに兵士に追われて捕まるのがオチだろ。」
ギュラーのあまりにも幼稚な行いに学園中の生徒が笑い転げていると学園長は頭を抱えている。彼女はこんな幼稚な少年に自分の秘密を暴露されたのかと悲しくなってしまったのだ。
「はぁ、何でこんな子のせいで私はあんな目に・・・。ギュラー君、あなたはこの学園で何を学んできたんですか?いえ、それ以前に、家でどういう教育を受けてきたんです。こんな短絡的な行動を起こしただけでなく、無計画過ぎませんか?
流石に、これはひどいですよ。周囲の生徒たちの反応を見てくださいよ。自分がどれだけ滑稽な存在か理解していないんですか?」
「ふざけんな、金だよ、お前は金を俺に渡せばいいんだよ。それで俺はあのクソ親父を伯爵の座から引きずりおろすんだ!学園長の座から卸されたくなければ、さっさと払いやがれ!」
「はぁ、何言っているんですか?伯爵を引きずりおろす?お金があれば権力が買えるわけではありませんよ、その程度のことも親から学んでいないんですか?というか、あなたは伯爵の座に上り詰めることはおろか、貴族でいられるかも怪しいと思いますよ?」
学園長が冷めた目でギュラーと話し合っていると集団が走る音が聞こえ始める。
「何言ってやがる、こいつらが見えないのか!」
ギュラーはその足音に気が付かずに、チンピラたちを学園長に見せ、彼女を威圧すると、その足音の正体がやってくるのであった。
「貴様か!通報にあった侵入者は。全員、残らず捕縛しろ!」
その正体は通報を受け、やって来た兵士たちだった。
「お、おい、どういうことだ。こんなの聞いていないぞ!」
「おい、貴様、俺を誰だと思っているんだ!」
兵士たちが現れたことがチンピラたちにとっては予想外のことだったのか、抵抗をつづけながら、ギュラーを睨みつける。
しかしながら、ギュラーはそんなチンピラたちと異なり、大した抵抗もできずに一番に捕らえられてしまうのであった。
もちろん、チンピラたちも訓練を積んだ兵士たちにかなうはずもなく、最終的には簡単に捕縛されてしまうのであった。
「だから言ったんですよ、貴族でいられるかも怪しいって。こんなことをやらかした罪人なのに、貴族でいられるわけがないですよ・・・。」
こうして、お騒がせなギュラーたちは全員、捕縛されるのであった。
「やるじゃん学園長!いい囮だったぜ!」
「最高の囮だ、時間稼ぎになってくれてありがとう!」
「「「「「囮、囮、囮!」」」」」
ギュラーたちの捕縛と共に、学園長をたたえるコールが学園の生徒達から響き渡るのであった。
「もっと褒めることがあるだろうがー!」
しかし、流石は学園長といったところだろうか、非常に悲しいことでしか褒められないのだった。
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