第343話 学園の実態
「さて、皆さん。こちらの方が本日から商業科で新たに授業をなされるクレハ先生です。先生には皆さんと共に課題を考えていただく形で授業をしていただきます。」
「皆さん、リゼラン先生からご紹介いただきましたクレハと申します。このような経験は初めてですが少しでも皆さんの経験につながればよいと考えていますのでよろしくお願いいたします。」
リゼランに紹介され、クレハが生徒たちに挨拶を終えると彼らから怒涛の質問が押し寄せるのであった。
「はい、はい、は~い、クレハ先生ってあのクレハ商会の商会長ですよね。なんでこんなところにいるんですか、夢なんですか!」
「先生みたいな商人になるコツを教えてください!」
「先生、年下は好みですか!」
「女の子は好みですか!」
「学園長に直々にスカウトを頂いたからです。信用を第一に商売を心掛けてください。私の好みは秘密です。」
こんな風に新しくやって来た先生に対して生徒たちが興味津々にはしゃいでいる中、退屈そうな表情を浮かべている生徒もいるのであった。
「けっ、たかが男爵風情が何を調子に乗っているんだ。お前らも騒いでいるんじゃねぇ。」
「「「「・・・・・。」」」」」
そんな彼の一言で先ほどまで活気に満ちていたクラスの雰囲気は一気に冷めたものになる。
「リゼラン先生、彼は一体・・・。」
クレハは早速、予想していたような人間がいたことにため息をつきながらも小声でリゼランに彼が何者なのかを尋ねるのであった。
「彼はホルイン伯爵家のご子息であるギュラー君です。家が伯爵家なので自分以外の人間に注目が集まると気に入らずにああやって自分に注目を移すんですよ。」
「えっ、さっき学園長からそんな人間はいないと自信満々に言われたんですけど。」
「何言っているんですか、そんな人間、これだけの人間が集まるこの学園でいないはずがないじゃないですか。ああいう人間は学園長みたいな立場が高い人間には猫を被っているものなんですよ。」
「ははっ、何というか、予想通りというか・・・。それで、あの子はどうするんですか。」
クレハにとっては頭が痛くなるような話であるがリゼランに取ってはこのようなことは日常茶飯事のことであるようだ。
「あぁ、それに関しては任せてください。こういうことは慣れてるんで。」
彼女はクレハにそう告げるとクラス全体に聞こえるように話を始めるのであった。
「はい、はい、皆さん。それじゃ、早速授業を始めましょうか。今日は事業の始め方に関する授業を始めましょうか。」
彼女がギュラーを無視し、授業を始めようとするため、クレハはそれでいいのかとリゼランに目を向ける。すると、彼女は何かを察したように小声でクレハに応えるのだった。
「良いんですよ、ああいう子は授業になれば気にしないですから。さっ、それよりも授業を始めましょう。この学園でそんなことを気にしていたら何もできませんから。」
どうやらこの学園はクレハが予想していた以上に貴族の社会が反映されているようである。これからの生活に憂鬱になるクレハであった。
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