第249話 タコ殴り

クレハに賠償金を青天井であげられ、途方に暮れていたマグナ大司教は気が付けばリーシア教の施設へと戻ってきていた。教皇からは和解するまでは帰ってくるなと言われているものの、彼の居場所がここ以外にあるはずもなく、体は自然とここに向かっていたのだ。


「マグナ大司教、いったいどこへ行っていたのだ!」


そんな彼を発見すると真っ先に声をかけてきたのは教皇本人だった。マグナ大司教はてっきり帰ってくるなと言われるものかと思っていたがどこへ行っていたと尋ねられた。そのため、自分が必要とされていると思い、先ほどまでとはうって変わり、うれしそうにするがそれは間違いだった。


「あなたがマグナ大司教ですね、それで、賠償金の金額はいかほどになりましたか?」


「ん?貴様、誰だ?」


マグナ大司教が教皇を確認するとその隣には見慣れない男が立っており、彼はいきなりマグナ大司教に賠償金の話を始める。


「私のことなどどうでも良いのです、いいから賠償金の話はどうなったか話してください。」


「貴様、無礼だと思わんのか!この私を誰だと心得ている。」


マグナ大司教は突然、見慣れない男に命令された気がし、不機嫌になる。しかし、そんな彼の発言を遮り、叱責したのは教皇だった。


「いいから話せ!この方は帝城からの監察官殿なのだぞ!お前がやらかしたせいで帝国にクレームが入っているから早急に対処するように皇帝陛下から勅命を下された方なのだ。」


「す、すみません。えっと・・・。」


相手が皇帝から勅命を受けた人間だと知るや否やマグナ大司教はいきなり低姿勢になるがいつまで経っても賠償金の話に関して話始めず、場は一気に緊張感を持ち始める。


「いいから話しなさい。すでにことはあなた方だけで対処可能なことではないのです。今から話すことに少しでも虚偽が発覚すればあなた方は死刑に処すと皇帝陛下からのお達しです。間違っても嘘などはつかないでくださいね。」


「は、はい、大変申し訳ございません。え、えっと、賠償金は王金貨5枚というか、10枚というか、20枚というか、えっと・・・50とか、100とか、500枚かもしれないです。」


「はぁ?あなたはこの場に及んでふざけているのですか!」


「い、いえ、そうではないのです。」


マグナ大司教は監察官にふざけていると勘違いされては困るとすぐさまクレハの元であったことを正直に話し始める。本来であれば王金貨5枚で済んだ賠償を500枚に増やした事実に教皇は我慢できずに激怒してしまう。


「何を馬鹿なことをしているのだ!その金を一体だれが払うと思っている。」


「今回のことはすべてあなた方が起こしたことですのですべてあなた方に負担していただきます。賠償金を支払わずに今後もクレハ商会と関係が悪化する場合はリーシア教の施設を帝国が差し押さえ、強制的に賠償金の支払いをいたします。


このままあなた方が何もしなければその白羽の矢はすべて帝国に向かってしまいますから。なんとしても賠償金はお支払いくださいね。


それと、マグナ大司教、あなたはここまでのことをしでかしたのです。何もおとがめなしなどとは思っていませんよね?あなたは私と共に帝城へ来ていただきますので。」


「クソが!お前、なんてことをしてくれたんだ、王金貨500枚だと、そんな金どれだけ集めるのが大変だと思っている!このクソが!」


教皇はついには怒りを抑えられずにマグナ大司教に掴みかかり、タコ殴りを始める。教皇とは思えないほどその勢いはすさまじく、瞬く間にマグナ大司教の顔ははれ上がっていく。


「すび、すびません教皇様。」


「はぁ、私も暇ではないのです。あなたには詳しいことを話していただかないといけませんのでさっさと帝城に向かいますよ。ですので、その辺にしておいてください。」


監察官の鶴の一声ともいえるのか、その言葉でマグナ大司教はようやく教皇から解放され、彼と共に帝城へと向かうのだった。彼はそこで今回の経緯などを詳しく尋ねられることになるのだが、帝城に向かう道中にて何者かに殺害され、今回の経緯を知るものはいなくなってしまうのであった、黒幕を除いては。

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