第314話 コズミィ商会

「でも、そこまで夢のような商売なら他の商会も真似することができるんじゃないですか?」


クレハから聞かされた事業の内容を聞き、ルークが誰にでも真似ができてしまうと考えるのも仕方がないことだった。しかし、この事業はそこまで簡単なものではないのである。


「そうとは限りませんよ、この事業は聞いているだけでは簡単そうに見えますけどかなり大変なんです。資金はたくさん必要になりますし、何よりも信用が非常に大切になってきます。


ここまで商会を続けてきたからこそ、この事業に取り組むことができるんですよ。それに、この事業が成功するかはこれからにかかっているんですから、簡単なことではないんですよ。」


「へぇ~、そうだったんですね。それじゃあ、これからはたくさん頑張らないといけないですね!何でも言ってくださいね、僕、頑張りますから。」


クレハの言う通り保険に関する事業は一見簡単そうに見えるがその内容は極めて複雑である。だからこそ、簡単に参入したところで痛い目を見るだけの事業なのである。




ここはコズミィ商会、コーカリアス王国で飛躍的に成長するクレハ商会に対して一歩的に憎悪を抱いている商会だ。この商会の会長であるコズミィは様々な分野の商人や商会を取り込むことで自身の商会を成長させてきた。


もちろん、多少の強引な取り込みはあったため、反発が無かったと言えばうそになるが基本的には彼女はまっとうな商売を心掛けている。


だからこそ、今までクレハが出会ってきた商人たちの様に違法な手段や暴力で物事を解決する気はないが彼女にとってクレハ商会の存在は由々しき事態であった。


「もう、マジ何なのよ!信じられないんだけど、あの商会。毎度毎度、あたしが次は行けると思って取り込んだ商会と全く同じ商売をしてくるじゃない。


しかも地味に失敗しないでいっつも成功しているから余計に腹が立つんですけど!あの商会の会長は神かっつーの!


ムキー、マジで腹が立つんですけど、おかげでこっちは毎回クレハ商会の二番煎じなんですけど!」


確かに、コズミィ商会の成長速度は著しく、彼女の手腕は大いに評価されていた。しかしながらそれ以上にクレハ商会は次元が違ったのだ。


もしもこの時代にクレハが存在していなければ間違いなく彼女の名は世に知れ渡っていただろう。だからこそ、彼女にとってクレハ商会とは目の上のこぶのような存在だった。


「はぁ、マジどうしようかな?このままだといつまで経っても2番のままだし、あたしは一番になって世界のコズミィ商会って言われたいのに。」


彼女は自身の商会の名を世界に知らしめ、どの街にも自分の商会を出店することが夢だった。しかし、一国ですら首位になれないこの現状ではそのような事は夢のまた夢であることは彼女も理解していた。


しかし、そんな時だ。この状況を打開する良いアイデアを彼女が思いついたのは。


「そうだ、簡単な事じゃん。あの商会がこっちをまねしてくるんだったら真似し返せばいいじゃん!なんだ、考えてみれば答えは目の前にあったんじゃない。よっしゃ、あの商会の次の事業を真似するしかないでしょ!」


こうして、彼女は自分の夢を実現するために少しおかしな方向に舵を切ってしまったのである。しかしながら、このことが後にどのような結果を生み出すのを彼女は現時点で考えてもみなかったのである。

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