第226話 怒りの公爵
「おい、貴様だったよな、確かカロとか言ったか?この私に大変珍しい飲み物があると言ってきたのは。なんだこれは、これがコーヒーだと、ふざけるな!
私の執事がクレハ商会で買ってきたコーヒーは普通にうまかったぞ、お前のなど飲めやしない。どうしてくれるのだ、貴様のせいで私は王城を歩けば貴族どもに後ろ指をさされる生活だ!説明しろ、さもなくば今すぐにその首をはねてやる!」
ベスト公爵が例の商人を捜せと命令してからカロが公爵の前に連れてこられるまでは驚くべきことにすぐだった。
なんと、自分の売った商品で公爵が恥をかいたというのにも関わらず、彼は未だにベスト公爵の領地で商売を続けていたのだ。
そんな彼は公爵などという位の高い人間の前に連れてこられ、怒りを向けられているにもかかわらず、すまし顔で平然としていたのだ。
「説明をと言われましても、私はただ、自分の仕入れた商品を販売したにすぎません。あれは正真正銘、コーヒーと呼ばれるものです。」
「ならば、何故、クレハ商会で販売しているものとお前が私に売ったコーヒーは味が全然違うのだ、おかしいではないか!クレハ商会のものだって別に高級品などでも何でもないらしいぞ!つまりは、お前がコーヒーと言って私に売ったこれがコーヒーではないのだ。貴様、この私に一体何を売りつけたのだ!」
公爵はいつまで経っても他人事のように話をしているカロにだんだんとイライラしていた。すでに頭の中では言い訳を聞いたらどうやって彼を処刑しようと考えていたほどだ。
「それは間違いなくコーヒーでございます。なぜなら、私だってクレハ商会からこれを買ったのですから。あの商会がコーヒーというのであればそれは間違いなくコーヒーです。
もしも、私がお出ししたものと公爵がクレハ商会からお買いになったコーヒーが全く別のものだと言うのであれば私か、公爵のどちらかがあの商会に騙されていたということになります。私は何も悪くありません!」
もちろん、カロがクレハ商会でコーヒーを買ったなどということはなく、全くの嘘だ。しかし、そう言われた公爵は既に頭に血が上ってしまっており、その情報の正しさなどどうでも良くなっていたのだ。
彼は自分の怒りをぶつけるべき人間がクレハ商会だと分かると一目散に部屋を飛び出し、クレハ商会に向かおうとする。
「クソが!この私をコケにしたのはクレハ商会か!絶対に許さん、おい、今すぐに馬車を用意しろ!男爵だろうが、なんだろうが知らん!このベスト公爵に恥をかかせた商会など今すぐに潰してくれるわ!」
「お、お待ちください、この商人の言っていることが本当とは限りません。ここはきちんと調べなければ大変なことになります!」
「知るか!私は今すぐにクレハ商会をつぶしに行くと言っているんだ、今すぐに馬車を出せ!それにそいつも連れてこい、私に直接売ったのはそいつなのだ、クレハ商会に騙されたか何だか知らんがそんなものは私に関係ない。まとめて始末してくれるわ!」
今までの肩身の狭い思いが急に爆発してしまったのか執事の言うことも聞かずに怒りの形相でベスト公爵はクレハ商会に向かっていくのであった。
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