第253話 ナツメグの危険性
「ダメ!」
「うわっ。」
クレハがルークの持っているスプーンを叩き落とすと床にナツメグの粉が散らかってしまう。いきなりスプーンを叩き落とされたルークはまさかクレハがこのようなことをすると思っておらず、放心してしまう。
「なにしているんですか、ルーク!」
「す、すみません。勝手に食べたらだめでしたか。まさかオーナーがそんなに怒るなんてごめんなさい。」
ルークは自分が勝手に商品となるものをつまみ食いしてしまったため、クレハに怒られたと思い、少しだけ泣きそうになっていた。しかしそれは違うのだ。
「違いますよ、何か勘違いしているんじゃないですか?別に商品を味見するくらいで私は怒りませんよ。私のことをそんな小さい人間だと思っていたんですか?」
「えっ、違うんですか?僕はてっきり勝手に商品を食べたから怒っているものだと思っていたのですが。」
「もう、違いますよ。ルークがナツメグをこんなにいっぱい食べようとしたから止めたんですよ。」
単にスプーン一杯のナツメグを食べようとしただけでいっぱい食べようとしたと言われルークは不思議でたまらない顔をしている。
「それって一体どういうことですか?」
「あんまり知られていませんがこれはスプーン一杯以上食べてしまうと吐き気や幻覚に襲われて最悪は死んでしまうかもしれないんですよ!」
そんなナツメグの恐ろしい症状をクレハから聞いたルークは顔を真っ青にしている。
「オ、オーナー冗談ですよね。これってそんなにヤバいものなんですか、それなのにどうしてこんなに買ったんです。」
「これはちゃんと量を守ればとても美味しい料理のスパイスになるんです。それに、普通の料理ではほとんど入れませんからね。今、ルークがとっていた量なんていったい何人分になるか分からないくらいの量なんですよ。
だから大丈夫です。それより、王妃様から依頼されている食べ物が思いついたのでそれを少し調理場に運んでもらえますか。これなら貴族も平民も食べられて安い料理が作れそうです。」
「ちょっと待ってください、王妃様から依頼された食べ物にこんなヤバい粉を入れるんですか!」
ルークはこの毒ともいえるような存在を王妃から頼まれた依頼に出すつもりかと抗議している。
「入れるのはほんの少しですし、食べていただく前にはちゃんと説明しますから大丈夫です。私が食べられないものを出すわけがないじゃないですか。」
「そう言えばそうでしたね、オーナーが出す食べ物に間違いはありませんでした。それじゃ、早く作りに行きましょう!何が食べられるか楽しみです!」
「もう、さっきまではあんなに真っ青な顔をしていたのに現金なものですね。」
こうして、二人は新たな料理を作るために厨房へと向かうのだった。
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