13節 遅すぎる自己紹介と、かっこいい二つ名と、不思議な国の情報

 はい、私です。エルシアです。


 私たちは今、焚火の前で野営の準備を済ませて座っていました。林の近くなんで草木の揺れる音や虫の鳴き声が良く聞こえます。


 私たちがシャディさんを見つけてから数日が経ったんですが、やっとノヴァさんが私たちに追いついて、今は夕飯の支度をしながら改めて自己紹介をする感じになっています。


「えー、それじゃあ言い出しっぺの私から自己紹介をしますね。私はエルシアです。本当の親は知りませんが、フィーランジェと言う人が私の育ての親になります。この人は騎士の……まぁ凄い人でして、彼女から受けた訓練を生かして旅をしています。旅の目的は、大きく変えられた世界を見る事と、もう一つは世界を変えた理由を知る事でした。今は王都に住んでいます、あと14歳です」


 私は水筒の水を少し飲むと、次にエレナさんの方を見ました。


「それじゃあ……私はエレネスティナ・フリクセンです。フリクセン修道院で孤児として育てられました。昔の私は、停滞していた世界と自分の運命の歯車を動かす存在を探して旅をしていました。今は当時と大きく変わったこの世界を見て回る為の旅をしています。二つ名は「流星の魔女」です。歳は……多分18歳です」


 ほぅ、エレナさんって孤児だったんですね。というか二つ名かっこいい。


「次に私だね。私はシャティルディア・スカーレット、旧世界で活躍した吸血鬼の末柄らしいよ。旅の目的は特に無いけど、私はエレナと一緒に居たくて旅してまーす。二つ名は「朱嵐しゅらんの魔女」でーす。歳は知らん」


 へぇ、シャディさんって苗字があったんですね。もしかして空白の50年前は全員が苗字持ちだったんですかね?。というかシャディさんも二つ名かっこいい。


「……」


「……ノヴァさん?貴方の番ですよ?」


「あ?俺もかよ」


「当然です。むしろ私の事より気になります」


「……ノヴァだ。分かってると思うが本名じゃ無い。だが名乗る気も無い。旧世界では「英雄」だの「死神」だのと、好き放題に呼ばれていた。歳は……死んでるから言わなくて良いだろ」


「……」


「……」


「……え?終わりですか?」


「他に何を期待したんだ?特に面白い話や有用な話は無いんだが……」


「……じゃあいいです」


 そんな感じでゆるっと自己紹介を終えた私たちは、とりあえず出来上がった夕飯を食べてから、近場の川で水浴びをして寝る支度を始めました。勿論水浴び中にノヴァさんは居ませんよ。


 今日はテントで寝るのは暑いだろうと思ったんで、私はハンモックに背中を預けると、星空を眺めていました。


「星って綺麗ですよねぇ」


「そうだねぇ。でもアレって爆散した星なんでしょ?そう思うと怖くね?」


「……聞きたく無かったですねぇ」


「ノヴァ?エルシアがシャディから間違った知識を吹き込まれてますが、放って置いて良いのですか?」


「良いんじゃね?どうせ天体観測とかしないだろうし」


 そんな感じで楽しい会話をしばらく続けた私たちは、いつの間にか夢の世界に迷い込んでいるのでした……。





 次の日の朝、私たちはバタートッピングのインスタントラーメンを食べ終わると、最寄りの街を目指して飛んでいました。


 地図によると、この先には小さい街があるみたいですね。寄っていきましょう。


「あのさ、エルシア……」


 しばらく飛んでいると、シャディさんが私に小さな声で話しかけてきました。


「何です?」


「昨日の水浴び中に思ったんだけどさ、エレナ……少し太った様に見えたんだけど私の気のせいかな?」


「……私もそう思った事はあります。初めてあった時より少しお腹が目立ってる気がするんですよね」


「二人共、そんなに接近してると危ないですよ」


「はーい、離れまーす」


「ごめんごめん、ちょっとエルシアをナンパしてた」


「エルシア……嫌だったら雷をぶつけても構いませんよ」


「は、はい……」


 おう……シャディさん相手には手加減が無いですね、エレナさん。


 まぁそんな感じで話をしながらも村に無事着いた私たちは、早速情報収集を始めました。今回集める情報は、いつもの様に周囲の魔物の事と古い建築物、後はフェンズの目撃情報です。


 一旦皆と解散した私は、早速酒場に向かいました。やっぱどこにでも酒場はあるもんなんですね。まぁ情報源がある事は助かるんですが、お酒って偉大です。


 さて、酒場に足を踏み入れた私は、誰にも気付かれない様にカウンターに座ると、マスターにオレンジジュースを頼んで、ついでに情報を買いました。


 マスターの話によると、少し前まで強い魔物が居たそうなんですが、槍を使うお嬢様タイプの口調で話す女性が倒してしまった為、今現在は特に危険な魔物は居ないらしいです。


 そして古い建築物なんですが、ここから南西の方に昔から無人の国が在ると言っていました。詳しく聞いてみましょう。


「その無人の国の事、詳しく聞いても良いですか?」


「かしこまりました。私の聞いた話によりますと、無人の国とは鏡で出来た大迷宮の国だそうです」


「鏡ですか?」


「はい。しかもこの鏡、映しだした相手の過去や未来を映し出す事があるそうなんです。ですがその過去や未来の出来事は、その場に居る全員が見えてしまうらしく、中には知られたくない事を見られる……なんて事もあったんだとか」


「ふむふむ……なかなか変わった場所だという事は分かりました。ですが何でそんなに不思議な国が在るんでしょう?」


「言い伝えによりますと、その国の王は変わり者でして、使い道の分からない物から、いわくつきの物も、色々と集めていたそうです。そしてとある商人から、真実を写す鏡を大量購入、国全体にその鏡を配置して、嘘偽り無い民になって欲しいと願ったそうなんです。ですが民が見たのは、お互いの抱える不信感や裏切りの光景……最終的には見た物に耐え切れなかった民達は、自ら命を絶ったり、愛する人を殺してしまったそうです。そして責任を感じた王は、民の前で謝罪をして自らの喉を刃物で斬り裂いた。それから直ぐに、その国は無人になってしまった……。そう言われていますね」


「うーん……行ってみたかったけど、ちょっと怖いですね……」


「まぁ私が実際に行ってみた感想なんですが、この話は迷信ですよ。ただの合わせ鏡の国でした。迷路みたいで面白かったですよ」


「行ったんですか?」


「はい、なので迷信だと言い切れるんです」


「そうですか……皆が良ければ行ってみたいですね」


 こうして興味深い話を聞いた私は、最後にフェンズの事を聞いてみましたが、どうも奴や泥人形に一致する人は見ていないそうです。安心ですね。


 こうして大体の情報を聞けた私は、皆との合流時間まで村の露店を見て回り、食べ歩きをするのでした。



 皆との合流後、私は例の国の事を皆に話しました。


「――という訳なんですが……行ってみても良いですか?」


「えぇ、これはエルシアの旅ですから。私は着いて行くだけです」


「私も興味あるなー。長い事寝てて忘れちゃった事もあるだろうし」


「過去を見るってのに気乗りはしないが……エルが行きたいなら行けば良い」


 とまぁそんな感じで、次の行き先は鏡合わせの国……でしたっけ?そこに行く事にしました。


 地図で確認してみると、国のある場所はここから遠くは無さそうですし、宿は取らずに行ってしまいましょう。


 こうして私たちは、鏡合わせの国を目指すのでした……。

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