4節 殺意と、腹痛と、嘲笑う死霊
私たちは今、とある屋敷に来ていました。しかし、どうしてこんな事になってしまったんでしょうか……?。
「ユズ……そこをどいて下さい」
「……それは出来ないよ、エルシアちゃん」
「私は、貴女を大切な友人とも仲間だとも思っています。ですが、私の行く先に邪魔をする者が現れたなら、私はそれを排除しながら進むでしょう」
「ふーん、私はエルシアちゃんの敵なんだ?」
木製の屋敷の中には明かりは無く、窓から差し込んで来る日の光だけが私たちを照らしてくれていましたが、その太陽も雲に覆われて、私たちは暗闇に飲み込まれてしまいました。
「……今一度言わせてもらいます。ユズ、そこをどいて下さい」
「なら私も、もう一度言うね。それは出来ないよ、エルシアちゃん」
不吉なまでに冷たい隙間風の空気が、私の頬を吹き抜けていきます。額から冷や汗が零れ落ちて、徐々に心臓の鼓動が速くなってきているのが自分でもわかります。
ですがその、衝動に似た何かを抑制しながら、ユズに先制布告を告げようと、ゆっくりと口を開きました。
「なら、仕方ないですね。ユズ、私は今でも貴女を仲間だと思っています。ですが、今は……」
不吉な冷たい風は、更にその勢いを強くし、私のローブが後ろに引っ張られ、ワンピースの裾が太ももにへばり付き、雨に濡れてじんわりとした気持ち悪さが生足に伝わってきます。
風が強く吹いてくれたおかげで、雲に隠れていた太陽が再び、ゆっくりと顔を見せ始め、日の光がユズを照らし出し、次に私を少しづつ、ゆっくりと照らし始めました。
きっと、この時の私の表情は怖かったと思います。ですがユズも、今まで彼女から感じた事の無いような殺気を放っていました。
そして私は、先ほど途切れた言葉の続きを、極限に研ぎ澄ませた殺意と共に、呟きました。
「今は……私の敵です」
言い終わるやいなや、私はワンピースのポケットからバタフライナイフを取り出し展開、一気に距離を詰めます。それとほぼ同じタイミングで、ユズもボウガンをホルスターから抜き、弓を展開し弦を引き、急接近する私に矢を突きつけ、発射してきました。
普段であれば、発射された矢を見切るのは難しいかもしれませんが、精神状態を極限まで高めた今の私になら安易に見切れました。
私は腰に付けていたフルタングのナイフを投げて矢を相殺し、その矢をユズに投げ返しました。
ユズはいとも容易く矢をキャッチ、更に私めがけて連射で矢を撃ち込んできました。
私はユズの矢が届くより先に宙に舞ったナイフを拾い、二刀流の状態で矢を斬り払いながらユズに接近し、斬りかかりました。
しかし、ユズは私の斬撃を飛んで躱し、先ほどキャッチした矢で接近戦を仕掛けてきました。
私は矢を躱しながら、2本のナイフで連撃を仕掛けました。多分20回位は斬りかかったと思うんですけど、不思議な事に全部躱されました、ちょっと心が折れそうです。
私の攻撃を全て躱しきったユズは一歩後ろにステップを踏みながら3発の矢を放ってきましたが、最初の1発をナイフで弾き、後の2発は躱し、ユズに距離を離させないように再び近接戦を仕掛けました。
ユズは私の5連撃を躱し、手に持った矢で攻撃してきました。これは確実に躱せないタイミングです。
ユズは戦闘の上達が早くて、見てる私も嬉しいです。まさか旅の道中に気まぐれで教えたばかりの、相手の隙の付き方をもうマスターしてるとは……。
ですが、私の狙いはソレです。私は両手のナイフを宙に投げ、ユズの腕をつかんでそのまま真下に叩き落しました。
「ぐぁ!」とユズが苦しみの声を上げます、しかし手は抜きません。
左手はユズの胸ぐらを掴み、右手は宙から落ちてきたバタフライナイフをキャッチし、刺しかかりますが、ユズに下腹部を蹴られ、吹き飛ばされました。……またお腹ですか。
「ゲホッ!……随分と粘りますね」
「エルシアちゃんこそ、まだ蜂の巣にできないなんて……随分と反応速度が良いんだね」
再び私たちの間に束の間の静寂が訪れ、太陽が雲に隠れました、真っ暗です。
ですが私の目は、この暗闇になれました、ユズの位置がハッキリと見えます、何なら今どんな構えをしてるかさえ分かります。
殺気を抑え、足音を立てないように、ユズの背後に回り込んだ私は、勢い良く斬り掛かります。1対1でも条件次第では反則気味な闇討ちが出来るものなんです。
ユズにナイフが当たる直前、彼女は私を探知し躱しながらボウガンを連射、距離を取ってきました。
「「次で……!」」
雷の光がユズを照らし出します、随分と赤く鋭い眼光を飛ばすようになったものです。そして同じく、青く鋭い眼光を飛ばす私が雷の光に照らされます、顔の半分は暗闇に隠れていますが、意外と視界は良好です。
「狩りますっ!」
「射止めるっ!」
互いが互いに接近し、私がユズの喉元にナイフの切先を突きつけ、同時にユズが私の頭に矢を突きつけた瞬間、グリュリュリュリュと互いのお腹が悲鳴を上げました。
「はぅ!?」
「おぅふ!?」
私たちはその場にお腹を抱えてうずくまり、悶絶し始めました。
あぁ、戦闘に夢中になっていましたけど、私たちはトイレの取り合いをしていたんでしたね……。というかこんな広い屋敷にトイレが1つしか見つからないのが1番悪いです。
「あぁ、そういえば2階にもトイレあるみたいだよ……?」
「え……なんで知ってるんですか?」
さっきまでの威勢はどこへやら、私たちは死にそうな声で話し始めました。
「さっき……エントランスに地図が……あったの……おぅふ!」
「そう……なんですね……」
「だから、エルシアちゃんは……2階のトイレじゃダメかな……」
「2階は……場所を知ってるユズが行くべきじゃないんですか……?。と言うか私、お腹蹴られて色々とヤバいんですけど……」
「私だって……叩き落されて、もう限界だよ……ここは公平にジャンケンでどう……?」
何にも公平じゃないです、私が一方的に不利です。ですがここは揉めてるより遥かに良いと判断したので、大変不本意ですけどユズの提案に乗りました。
そして、私はジャンケンに負けました。くそぅ。
やれやれ、仕方ないんで急いで2階のトイレを探しに行きましょうか。
エントランスに戻ると、確かに屋敷内の地図がでかでかと置いてありますね……何で気付かなかったんでしょうか?。
この地図によれば、少し入り組んだ所にトイレが置いてあるようですね……いい加減お腹が限界なんで、頑張って迅速に探し出しましょう。
しかし意外とすぐに2階のトイレが見つかりました、いうほど入り組んで無くて良かったです。
私は急いでトイレに駆け込み、先にパンツを下ろして、ワンピースを盛大にたくし上げます。ドアは……誰も居ないし怖いし閉めなくて良いでしょう。恥じらいは無いのかって?恥じらってたら手遅れになります、それに誰も見て無いじゃないですか。
「便座はクリーン!ペーパー良し!水の貯蔵十分!よし行けます!」
一体どこに行こうとしてるんでしょうね?というか今冷静に考えてみると水が流れるって結構異常じゃ無いですか?ここ無人ですよね?まぁ幽霊屋敷ですけど……。
あ、はい、私は洋式派です、和式は無理です許して下さいなんでもしますから。
さて、無事に用も足せたし「腹いせにユズを脅かしてやろうかな」なんて思いながらトボトボ歩いていると、背後から何かの気配を感じ、立ち止まりました。
いや……背後というよりは本当に真後ろ、肩に手が届くほどの至近距離です。
「あぁ……」
思わず小さな声が漏れました、その声に反応したであろうソレは、私の肩から徐々に手を回してきました。……きっと悪気は無いんでしょうけど、胸に手を滑り込ませるのはやめていただきたいです……あんまり自信のあるスタイルじゃないんで……。
「ひぁっ……あっ!……あんっ!……」
ってそうじゃなくて!えっちぃ声を出してる場合じゃ無くて!!頬を赤らめている場合でも無くて!!!。
我に返った私は腰に付けてるフルタングナイフで前を向いたまま後ろにいるであろうソレを斬りつけました。手応えが無い、完全に空振りした時と同じ反動が手首に来ました。しかし、私の胸に滑り込んでいた手は消えて無くなっています。
はぁ、こんな小さい胸の何が良くて触るんですかね?……ってか最後の方揉んできましたよね?揉むなら発育の良いユズのにして欲しいものです。
さてと、冗談はこの位にしておいて、間違いなく私の近くに居るであろうソレに警戒しつつ一歩一歩慎重に進んでいきましょう。
もうユズを怖がらせるとか、ふざけた事言ってられる状況じゃ無くなりました。早く合流しましょう。
しかし、今のがアレだとすると、少し違和感がありますね……なんと言うか、殺気とか悪意とか憎悪とかでは無く、気配だったというか……この違和感はなんでしょうか?。
先ほど感じた気配にもっと早く気付けるように、感覚を研ぎ澄ませながら再び歩み出したその瞬間、私の視界は90度回転して、母なる大地にヘッドバットをお見舞いしました……まぁ2階なんですけどね。というか今、足を掴まれました!いったい何事ですかね!?気配なんて全くなかったですよ!?。
私は掴まれたであろう右足を確認すると、そこには透けた、青白い手がありました、文字どおりに透けた肘までの腕が……。体はありません。
「――ッ!?」
その光景に声が出なくなってしまった私は、足に蜘蛛の糸が絡まって、それを蹴り飛ばそうとする虫の様に、必死に足をバタつかせました。頭の中は超パニック状態です。
我武者羅なまでに必死にもがいていると、いつの間にか腕は離れていました。助かりました、もう凄い怖いです、早くユズと合流しましょう。
涙目の私は立ち上がり、1階への階段を目指して歩き始めると「ひぃぃやぁぁ!」とユズの悲鳴が響き渡りました。あれは間違えなくユズの声です、3日も一緒なんですから間違える訳ありません。
どうやらユズは2階に来ているようですね、しかも割と近くに居るようです。もしかしたらアレに襲われているのかもしれないです、急ぎましょう。
ユズの声を追って、屋敷の2階を走り回っている間、かなりの頻度でアレにちょっかいを出されましたが、私には何となく正体が分かった気がしたので無視して走りました。無害ならばいちいち相手にしなくても平気な筈です。
近くでユズがボウガンを撃つ音が聞こえます、1階にあった地図によれば、この先の部屋は物置と書かれた場所だったと思いますが、ユズはどうしてこんな所に居るんでしょうか?。
さて、ドアの前に着いたは良いんですが、今うかつにドアを開けると錯乱したユズに撃ち抜かれそうなんで、とりあえずドア越しに呼んでみる事にします。
「ユズ!そこに居るんですか!?」
「エ、エルシアちゃん!今大変な事になってるから来ないで!」
まぁ、ある意味大変な事にはなってるとは思いますが、ここで錯乱したらきっと相手の狙い通りになります。それは嫌なんで、是が非でもユズを落ち着けます。
私は勢い良くドアを開けると、端っこでボウガンを構えながらうずくまっていたユズの手を引いて、とりあえず階段を下り1階の玄関へと来ました。
「うそ……なんで開かないの!?」
「まぁ、そう簡単には逃がしてくれないですよね。面倒なんで、出来れば事を構えたくは無かったんですが……」
「エルシアちゃんアレと戦う気!?」
「えぇ、作戦はあります。しっかりとした勝機もあります」
「でも、相手は幽霊だよ!?攻撃当たらないんだよ!?」
あぁ、今まで幽霊って言わないようにしてたのに、言っちゃいましたよ。アレを幽霊と思ってパニックを起こしたら、その時点で負けなんで、とりあえずユズを落ち着かせます。
「ユズ……聞いて下さい」
私はユズの耳元で囁くように話しかけました。
「アレは幽霊ではありません。以前ネクロマンサーの事を本で読んだことがあります。死霊を操る魔法だそうです」
「――!?。という事はアレは、ネクロマンサーの使い魔的な?」
呑み込みが早くて助かります。つまり本当の相手は人間であり、幽霊ではないという事です。
更に幽霊はセクハラ紛いの事しかやってきていません、完全に不意打ちを食らった私が五体満足で生きてるのが、何よりの証拠です。
「しかも、あのネクロマンサーは相当技量が低いみたいですね」
「そうなの?」
「えぇ、以前読んだ本の内容通りなら、最高レベルが地獄から悪魔だって呼べるらしいです。真ん中のレベルはそこまで強く無いにしろ、殺傷力のある死霊を呼び出せて、最低レベルは相手にイタズラ程度の事しかできないらしいですよ」
話を聞くやいなや、ユズはニヤッと不敵な笑みを浮かべました、相当溜まってたんでしょうね。怒りのボルテージ的な方が。
「エルシアちゃん、作戦を教えて」
「え、えぇ。何だか楽しそうですね」
「もちろん!怖がらせてくれたお礼に、ネクロマンサーに召還される方にしてあげようよ」
「お、おぅ……えっと、作戦なんですけど……」
〇
さて、ユズに作戦も伝え終わったところで、行動開始です。
私たちは、色々な部屋を入っては出るという、何をやってるのか分からない行動を何度も何度も繰り返しました。
そして、最後にキッチンへ足を踏み入れました。
そこで私たちはある事を待っていました。すると、急にドアがバンッっと大きい音を立てながら閉まりました。ユズが反対側のドアを押してみましたが、空間に固定された様に開きません。さて、この時点で3ステップの内の2つが完了しました。後は殺意のある攻撃だけです……。
暫く待つと、シャキンと刃物の擦れる音がして、宙に浮遊した包丁がユズ目掛けて飛んできました。しかし、それは予想通りの攻撃、当たるわけ無いです。
「そろそろ、姿を見せても良いんじゃないの?。……ネクロマンサー」
「……ふぅん、気付いてたんだ」
包丁の飛んできた何もない場所から、薄紫色の結晶を散らしながら20代後半の
おば……お姉さんが現れました。これは魔法の残滓でしょうね、そうやって自分の身を隠して、屋敷に迷い込んだ人がパニックを起こしてから殺して、自分の従者を増やしていたんでしょう……下らないです。
「そういえば、もう一人の女の子はどこ?今までずっと一緒にいたわよね?」
「うん、居るよ……貴女の真後ろにね」
「――ッ!?」
「動かないで下さい、少しでも動くと喉を切り裂きます」
「どう、して……」
「ん?何がですか?」
「どうして私が居るって気付いたのよ!?」
なかなかヒステリックに叫ぶオバ姉さんですね、耳がキーンてします。
「それはまぁ、貴女が最初に舐めプしてくれたお陰です」
「はぁ!?なにそれ!?」
「あぁ、すいません、舐めプっていうのは舐めたプレイの略で、調子に乗って相手に――」
「そんな事聞いてんじゃ無いわよ!私がいつそんな事したっての!?」
「だから最初ですよ。貴女、私の胸触って来たじゃないですか」
「え!?」
「あの時に気配を感じたんですよ。でも他の死霊からは殺意しか感じなかった」
「……」
「まぁ、過程はどうであれ、貴女は私たちの作戦に見事に掛かってくれたんですよ」
ん?作戦の内容ですか?……そうですね、一応語っておきましょう。
〇
遡る事数十分前、屋敷のドアの前に私とユズが居るところから始まります。
「で……どんな作戦?」
「えぇ、相手が人間であるならイライラさせれば必ず尻尾を見せます」
「具体的にはどうするの?」
「まず、相手は魔法か何かで姿を消しています。屋敷が消える理由もおそらくコレです」
「視覚で探知は無理って事?」
「そうです、だから精神的に攻撃を仕掛ける必要がある訳です」
「……煽るの?」
「はい、しかも意味不明な行動で」
「なら、片っ端から部屋に入るなり踊りだすなりすればいいかな?」
「前者でいきます。後、相手も人間である以上壁をすり抜ける事はしない筈です、でも私たちが変に動き回るなら1つの部屋に閉じ込めるしかない、そうなれば部屋の中にネクロマンサーも居るって事になります。後はユズが話し掛けて、相手の位置が分かったら私がナイフで背後から仕掛けます」
「そっか、死霊に殺傷力はないんだっけ……というかさ、エルシアちゃん」
「はい?」
「この会話……聞かれてたら意味無いよね」
「それなら平気です、奴はまだ2階です。こちらの様子を見てるみたいですね」
二階の階段前の踊り場では、時々差し込んで来る雷の光に影が映り込んでいるのが確認できます。視覚を誤魔化すだけで、質量は誤魔化せないみたいですね。
「そっか、所でどうやってネクロマンサーの背後に回るの?」
「最後にキッチンに入ります。あそこにはドア付近に冷蔵庫やシンクがある筈です、中に入って直ぐにどちらかに隠れれば、焦ってる人じゃ気付けないと思うんで簡単に背後へ回れるって訳です」
私は一通り話し終わると、ネクロマンサーには見えないようにバタフライナイフを展開しました。
「何してるの?」
「首に突きつけるので、予め展開しておこうかなと」
「なるほど。それじゃ始めよう、エルシアちゃん」
「度肝を抜いてやりましょう。行動開始です」
と、こういう経緯があったんですね。いやぁ、上手くいって良かったです。
〇
「さてと、ネクロマンサー、私たちを屋敷から出して下さい。抵抗するなら殺します」
「そっちこそ、大人しくした方が良いんじゃないかしら?今、この部屋に私の僕を全部集めたわ」
「あくまで抵抗しますか……仕方ないですね、さようなら」
「じゃあねネクロマンサー、貴女の僕と同じ場所に逝ってあげてね」
私は勢い良くナイフを引きました。するとネクロマンサーの首からは大量の鮮血が飛び散り、辺りを真っ赤に染めていきました。……もちろん私たちも真っ赤です、どうしましょう。
「はぁ……お疲れ様ですユズ」
「お疲れさまエルシアちゃん、しかしコイツの血は赤いねぇ」
「……?」ユズは何を言ってるのでしょうか。ネクロマンサーに呪われました?それとも間接的に人を殺して気が動転してるんでしょうか?。
「それは赤いでしょう、人間なんですし」
「人間か……やっぱりこんな殺人鬼でも人間なんだよね」
「ユズ……」
きっとお兄さんの事を考えているのでしょう……私には踏み込めない領域の出来事なんで口は挟みません。
ユズの肩に手を掛けようとしたその時、周りのドアや窓を突き破って沢山の人がなだれ込んで来る音が聞こえました。捜索隊の人でしょうか?。
「おい!こっちに血塗れの子供が2人いるぞ!」
一人の男性が私たちを見つけて、他の仲間の人を呼びに行きました。
「ごめんねエルシアちゃん、大丈夫だよ」
先ほどまでの暗い表情のユズとは打って変わって、いつも通りのユズに戻っていました。
「そう……ですか」
しばらくすると、捜索隊の人がぞろぞろと集まって来て、私たちを保護してくれました。
屋敷の中で起きた事を聞かれたので、キノコの件から話してあげました。そういえば野営の道具が置きっぱなしだったので、取りに行きましょう。
〇
辺りはもう雨雲もすっかり消えて、虹を輝かせながら太陽が落ち始めていました、綺麗な景色ですし、服を着替えて絶景を満喫してから片づけを始めました。
さて、殆どの物が片づけ終わって、一応火の後始末をしていると、屋敷の方から何かが崩れるような大きい音がしました。
「何事でしょうか?」
「わかんない、早く行ってみよう」
私たちは急いで屋敷の方へ向かいましたが、その道中、驚きの光景を目の当たりにしました。……屋敷が無くなっていたんです。
「何か嫌な予感がします、急ぎましょう」
屋敷の近くに着くと、捜索隊の人達が、ポカーンと屋敷の方を眺めていました、しかし、そこにはもう屋敷はありませんでした。
「どうしたんですか?」
「屋敷が……勝手に崩れた」
「そんな馬鹿な!」古い建物でしたが、随分と丈夫だったはずです……。しかしよく見ると、崩れた屋敷の残骸から大量の薄紫の残滓が飛び散っていました。
もしかしたら、あの建物は既に限界を迎えていて、ネクロマンサーが魔法で繋ぎ止めていたのかもしれないですね……。
私たちも暫く屋敷の残骸を眺めていましたが、そこで捜索隊の人にある提案をされました。
それは捜索隊の人がずっと解決できなかった問題を解決してくれたご褒美と、称賛を送りたいから、一緒にユミリアに来てくれないかと言う申し出でした。
断る理由も思いつかなかった私たちは、その申し出を受け、彼らの馬車に乗り込みました。ふぅ、やっと一息つけます。
「フフ……フフフフ」
……背後から笑い声が聞こえた気がして、私とユズは後ろを振り返りましたが、そこには屋敷だった残骸があるだけで、他には何もありませんでした。
私とユズは青ざめた顔を見合わせて、捜索隊の人に早く出発してほしいと急かし、急ぎ足でユミリアに向かうのでした。
……そう言えば、私の足に掴まって来た腕なんですが、アレには気配も何も感じなかったのに、普通に掴んできましたよね……まさか本当に幽霊だったんでしょうか?まぁ考えると怖くなるんで直ぐに忘れようと思います。
さて、気持ちを入れ替えて。もう少しで目的地点ですね。
この先、またしても強敵と遭遇するのですが、それはまた別のお話で……。というか、そろそろ過労死しそうなんですが……。
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