17節 決戦と、死闘と、究極の魔法
はい、私です。分裂したアホ毛が殴り合いの喧嘩を始めて頭の上がグワングワン揺れて気持ち悪いエルシアです。
遠くで聞こえる爆発音で意識が覚醒した私は、薄暗い洞窟の中で目が覚めました。
「……此処は?シラユキとユナさんは何処に?」
私が洞窟の中を見渡していると、小さい足音が小走りで向かってくる音が聞こえてきました。
「お姉ちゃん!気が付いたんだ」
「はいお姉ちゃんはリザちゃんの声が聞こえれば例え死んでいたとしても起き上がって火の中水の中をも超えて今すぐ抱きしめに行きま――」
「とりあえず落ち着いて!お姉ちゃんに今の状況を説明したいから!」
「あ、はい。というかリザちゃん、無事だったんですね。良かった……」
落ち着いた私は、気を失ってからの10分間の間に起きた事を教えてもらいました。随分寝てたんですね、私。
まず此処は、集落を村として発展させる為に土地を広げようとした時、たまたま発見した天然の洞窟らしいです。此処から出口に真っ直ぐ向かえば、集落に繋がるとの事です。……なるほど、集落内しか見て無かった私は彼女たちが避難してた此処を見落としてたみたいですね。
そして現在、集落内ではシラユキとユナさんが、甲冑を脱いだ状態のジンと対峙しているらしく、爆発音が鳴り止まないんだとか。
そして私の背中の傷ですが、かなり深く斬られていたらしく、応急処置程度しか出来ない現状だと再び傷が開く可能性が高いとの事でした。
因みに首元の骨にも斬撃が当たってたらしく、それで脳震盪を起こした私は気絶してしまったんだろうと言われました。確かに斬られる事に慣れてる私が、1撃で気絶するのはおかしいと思いましたが、なるほど納得です。
さて、大体の状況も分かった事ですし、私も参戦しましょう。そう思って走り出そうとする私に、リザちゃんの両親が声を掛けてきました。何でも私たちがジンに奇襲を掛けた直後から、集落の外に居た大量の魔物がこっちに向かって来てるのを別の抜け道から見たとの事らしいです……余り戦闘を長引かせるのは良くなさそうですね。
私は集落内の避難していた人たちにお礼を言うと、二人が戦っている戦場に舞い戻っていくのでした……。
〇
集落に着いた私は、爆発音のする場所を眺めながら気付かれない様に、背の高い草に紛れて座っていました。
どうやら誰も私が居る事に気付いて無いみたいです。なので闇討ちをする為に場所を少しずつ移動させながら隙を伺ってる訳です。
そして、闇討ちを仕掛けるには絶好の瞬間がやってきました。ジンは甲冑を纏っていないので、綺麗に決まれば1撃で決着が着きます……行きます!。
私は生い茂る草木から勢い良く飛び出すと、ショーテルでジンの背中から胸にかけて串刺しにしました。
「ぐぅ!?」
急な攻撃に対応出来なかったジンは、苦痛の声を漏らしながら、私の手を掴んでショーテルごと壁に投げ飛ばしてきました。
「がはっ!」
背中から激突した私は一瞬息が止まりました、早速背中の傷が開いたらしく、足元まで血が滴り落ちて来るのが分かります。
「エルシア、もう平気なの?」「目が覚めて良かったですわ、戦えるんですの?」
ユナさんとシラユキが心配そうな顔をしながら問い掛けてきます。私はちょっと引きつった笑顔で答えると、ショーテルを魔道昆と連結して鎌に変形させると、ジンに向かって構え直しました。
「二人共、作戦があります」
「どんな作戦?」
「私が奴にどうにかして取り付きます。そうしたら私ごと全力で魔法をぶつけて下さい」
「そ、そんな事をしたらエルシアは……」
「時間が無いんです。外から魔物の大群が迫って来てると聞きました……危険でも確実に仕留められる方法で戦うしか無い」
「……やるよ、シラユキ」
「でも!」
「エルシアの事はそれなりに知ってるつもりだけど、言い出したら聞かない奴だよ。それはシラユキも知ってるんじゃない?」
「……えぇ、そうですわね。ただし約束して下さい、絶対に死なないって……約束して下さい」
「知らないんですか?私の生命力はクマムシ並ですよ?」
「……そもそもクマムシの生命力を知らないですわ」
そんな話をしながら、私たちは行動を開始しました。
二人は魔法を放つ体制に入り、私は鎌に魔力を込めてリーチを伸ばしながら斬り掛かりました。
しかし甲冑を脱いだジンの動きは素早く、大振りな鎌では捕える事が出来ません。
私は鎌をジンに投げ飛ばしながらバタフライナイフとフルタングナイフを手に持って突撃しました。
いとも容易く鎌を弾いたジンの視界に、私が急接近してるのが見えたのでしょう。防げないと悟ったジンは後方に大きく飛んで逃げました……逃がさない!。
足に魔力を溜めた私は、3倍以上の突進速度で近付きます。それを予測してたであろうジンは、背中に背負ってた散弾銃で迎撃しようとしてきます。しかしそんな事はさせません。フルタングナイフを銃口に投げて弾が出ない様にした私は、最短距離を詰めながら斬り掛かろうとします。
しかしジンが無理矢理発砲した散弾銃が、弾けながら放った最初で最後の弾を飛ばしてきます。空中で避けきれなかった私は、それに命中してナイフを落としてしまいました。でも弾と共にナイフが飛んで来て、それをキャッチした私はそのまま斬り掛かります。
散弾銃を持っていた方の腕を深々と斬り裂いた私は、続けて反対の剣を持つ腕にナイフを突き刺しました。
「クソッ!」
「逃がしません!」
逃げようとするジンにナイフを投げながら、爆魔拳で攻撃しようとした私は、全身に感じた痛みで動きが少し遅れてしまいました。体を見ると全身に小さい穴が開いていて、そこから血が噴き出しています……さっきの散弾銃ですね。
私の投げたナイフを器用に足でキャッチし、蹴りながらナイフで反撃してくるジンは、私の左肩を突き刺してきました。左腕の感覚がありません、でも此処まで来たら引く訳にいかないんです。
私は体を使ってジンの体制を崩させると、爆魔拳で腹部を爆発させながら貫きました。
「グハッ!」
唐突な激痛に動きを鈍くするジンでしたが、直ぐに魔法で反撃してきました。
背中から風の刃が私を斬り刻んできます。私は痛みに顔を歪めながらも、突き刺した腕を引き抜いてジンにしがみ付くと、二人に合図を出しました。
「二人共!お願いします!」
「なっ!?」
私との戦闘に夢中だったジンは、二人が尋常じゃ無い程の魔力を溜めていた事に気付いていなかったらしく、凄い驚いています。
「くそっ!離せ!これ程の攻撃をされたら貴様だって!」
「忘れたんですか?……私たちを舐めないで下さいって言ったはずですよ?」
特大魔法が飛んで来る中、私は抵抗を止めないジンに対して、ダメ押しで
そして私たちの周りに血溜りが出来上がった頃、二人の魔法が私とジンを飲み込んでいきました。
……ドォォォォオオオオオオン。
破壊力が高すぎたのか、音を一瞬消滅させた爆発音が後から大きく響いてきました。
直撃で吹き飛んだ私とジンは、体から焦げた様な煙を上げて立ち上がりました。
「ま……だだ!」
「えぇ……まだです。これからが仕上げなんですから」
私の右手には、絶が発動していました。最初は片手で出せるか不安でしたけど、特訓の甲斐あって何とか発動できたようです。
「貴様っ!最初からそれが狙いだったのかっ!?」
「えぇ……無限の弾丸と二人の超々高威力魔法……これだけ合わさった攻撃魔法は、恐らく旧世界の英雄だって消し去る威力を誇っている筈です。……覚悟は良いですか?」
「く、クソッ!俺を殺しても他の兄弟達が貴様を殺しに来るぞ!」
「なら、貴方とライオットの後を追わせるだけです……それでは、さようなら」
私は絶に溜めた攻撃を、滅に派生させてジンにぶつけました。
一瞬、ほんの一瞬だけ時空という概念が崩壊したのか、空間に亀裂が入ったように見えました。そして、大爆発を起こしながら消滅するジンは、体を粒子状に変化させながら消えていきました……。
ドオオオオオオオオン。
大爆発に巻き込まれて吹き飛ぶ私たち三人は、至る所に深い傷を負いながら地面に叩き付けられました。
後は集落内に入って来る魔物を倒さなくちゃいけないんで、頑張って立ち上がろうとする私ですが、ピクリとも体が動きません。
そんな時でした、大型の魔物が集落内に入って来たのです。
「早く……立ち上がらないと……!」
無理矢理体を動かそうとして全身に魔力を込めた私に、暖かくて優しい手が私の右手を包み込んできました。
何事かと思い視線を向けると、そこには武装したリザちゃんや集落の人たちが立っていました。
「安心して、今までお姉ちゃん達に任せきりだったんだから、私たちも戦わないと」
ニコリと笑って立ち上がったリザちゃんは、私のショーテルを持つと、仲間たちと共に大型の魔物に斬り掛かっていくのでした……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます