12節 滅んだ村と、酔っ払いと、廃教会の吸血鬼

 はいどうも、私です。


 私たちは今まで、色々な街や村を回ってシャディさんの情報を集めていました。そしてやっと、彼女の有益な情報を得る事が出来たのです。


 酒場のマスターが言うには、滅んだ村にひっそりと佇んでる廃教会にドラキュラが住み着いてると言う噂があると教えてくれました。


 幸いにも距離はそこまで離れていなかったんで、そこまで時間を掛けずに到着する事が出来ました。とは言え夜の活気も人の気配さえも無い滅んだ村、そこにそびえ立つ不気味な風の音を発する廃教会……。怖い……超怖いです。


 時折遠くから聞こえる獣の遠吠えと合わさって、怖いのが苦手な私が体を硬直させるのには十分過ぎる環境が揃ってしまっていました。


「さ、さぁ……さっさとシャディさんを見つけて帰りましょう」


 あぅ、緊張し過ぎて声が裏返っちゃいました。


「えぇ、あまり此処に居ても気分は良くないですしね……。早急にシャディをひっ捕まえて連行しましょう。……もし怖かったら此処で待ってても良いのですよ?」


「だ、大丈夫でし!!むしろ一緒に居ないと背後から襲われ――」


 ――バサバサッ。


「ぴやぁぁあ!?!?」


「エルシア、今のはただのコウモリですよ」


「ぐすっ……怖い……」


「……」


 そんな感じで廃教会に入る前から苦戦を強いられていた私ですが、こんな時の為に少量のお酒を持って来ていたんで、早速飲み干しました……体がポカポカしましゅ。


 私は少量のお酒でほろ酔いになるんで、この状態だと意識ははっきりしたまま感覚がおかしくなって恐怖心が無くなってくれるんれすよ……ヒック。


「さぁ~シャディさん!!エレナしゃんをひっ捕まえに行きましゅよ!!」


「エレナは私ですよ、エルシア」


 そんな感じで、わらひたちは、廃教会に突撃してくのれした……。



「たぁ~のも~!!エルシアしゃんの登場らぁ~!!」


「えっと……本当に大丈夫ですか?今のシャディは危険な状況かもしれないのですが」


「任しぇてくらさぁい!!今なら何でも出来ましゅよ!!」


 ――ガタガタッ。


「うぴゃあ!?何奴れすか!!成敗しちゃいまひゅ!!」


 酔ったわらひは、勢いだけで魔法をドォン!!。


 ――チュドォォン。


「にゃぁぁあ!?」


「エレナしゃん!!成敗っ!!」


「エレナは私です。それに成敗されたのは野良猫ですよ……本当に大丈夫ですか?」


 そんな会話をしていると……いや、多分会話は成り立ってないんですが、そんな話をしていると、2階からゆっくりと誰かが降りてきました。……ふぅ、水を飲んだら少し落ち着きました。


「エレナさん……彼女がシャディさんですか?」


「えぇ、やはり暴走してるみたいです……注意を!!」


「うぇ……気持ち悪い……」


「……」


 そんな事を言ってる間にも、シャディさんは少しずつ近付いて来ます。まぁ危険とは言っても、エレナさんの仲間な訳ですし普通に接してれば平気ですよね。


 そう思った私は挨拶をしようと近付きました……その時です。


 ――ブシャァァ。


 私の右首から、大量の鮮血が噴き出してきました。速くて見えなかったんですが、恐らくシャディさんに斬られたんだと思います。


「エルシア!!」


「大丈夫です!!攻撃しちゃって平気なんですか!?」


「えぇ!!そうしないと今のシャディは止まりません。ですが気を付けて下さい!!彼女はもっと速く動けます!!」


「了解です!!」


 アドレナリンが最大値まで分泌された私は、恐怖心も痛みも感じる事は無く、シャディさんの動きに集中して戦闘態勢を取りました。


 うん、速い……速過ぎます。ですがノヴァさん程の速度は出て無いです。私は彼女の攻撃を寸での所で回避、そのまま魔道昆で殴り倒します。しかし腕をへし折る位に本気で殴った筈なんですが、彼女は怯む事も無く距離を取って警戒してきました。


 そこにエレナさんの魔法が飛んで来て、シャディさんの体を宙に浮かせました。それにしてもエレナさん凄いですね……火、水、雷、風、土の5属性を纏めて放ってましたよ。


 私は宙に浮くシャディさんに、無限の弾丸インフィニティ・バレットで追撃を加えました。


 ――ドドドドォォン。


 全弾命中した彼女は、受け身を取る事無く目の前に落ちてきました……生きてますよね?。


 エレナさんが手足を拘束しようとして近付いた時、不意にシャディさんは起き上がって、彼女に爪で斬り掛かりました。


「ぐあぁっ!!」


「エレナさん!?」


 一体どうしたんでしょう?今のは後ろに飛べば回避できた筈なのに、何故か両手で体を守る様にして食らって吹き飛んでしまったのです。


 私は倒れたエレナさんに近付くシャディさんに急接近し、背後から足の腱をショーテルで斬り裂いて動きを止めました。そして今度こそ瀕死に追い込むつもりで雷球を最大出力で発射、彼女の体を感電させました。


 痙攣を起こしながら口から煙を上げて倒れる彼女に起き上がる気配は無く、私は直ぐに手足を拘束してエレナさんの元に駆けつけました。


「エレナさん!!」


「大丈夫……です」


「……何で回避しなかったんですか?」


「何故でしょう……私にも分かりません。ただ防がなきゃいけない気がしたのです」


「そうですか……まぁ本能的な物だったのかもしれないですね」


「ですね……所でエルシア、貴女……出血量が大変な事になってますが平気なのですか?」


 はい、全然平気じゃないです。頭がクラクラして声も反響して聞こえにくいです……あれ?視界が地面に吸い込まれていく……。


 ――バタンッ。


 私はその場で力無く倒れ込んでしまいました。



 次に目が覚めると、私はベットの上で転がされて、輸血をされていました。……どうやら助かったようですね。


 そしてそれから数日後、完全回復した私は、改めてシャディさんと挨拶をしました。何だかユズにやんちゃさを足した様な人ですね……めんどくさそう。


 まぁそんな訳で、割とあっさりシャディさんを連れ戻す事が出来た私たちなんですが……エレナさんの目的は果たした訳ですし、ここで解散ですかね。


「それじゃあ、短い間でしたが楽しかったです、私は南に行きますね」


「何言ってるのですか、エルシア。私達も付き合わせていただきますよ」


「……え?」


「シャディを探すの、手伝ってくれたじゃないですか。だから私もエルシアの役に立ちたいのです」


「……気持ちはありがたいんですが」


「諦めなって、エレナがこう言った時は誰も止められないから。と言う訳でこれからよろしくね、エルシア」


「……まぁ賑やかなのは嫌いじゃないんで構いませんけどね。それじゃあ改めてよろしくお願いします。エレナさん、シャディさん」


 こうして私は、一人旅になる事無く、二人の仲間を連れて南の最果てを目指す旅を続けていくのでした……。

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