13節 戦略と、戦術と、知的なアンドロイド

 はいはい、私です。枯れたアホ毛を復活させる事に一生懸命になってる事が馬鹿らしく思えて来たエルシアです。


 私たちは今、最後のポイントでレジスタンスたちと合流した所です。


 意外にも此処には知能派のアンドロイドが多い様で、話を聞くなり疑いもせず拠点内に入れてもらえました。


 それにしても此処の拠点……他のレジスタンスの拠点と比べると、圧倒的に守りが硬いですね。至る所に見張り役のアンドロイドを配置、リーダーの居る中心部付近には機械生命体を真似て作ったらしいロボットが置いてあります。リーダー曰く、アレはアンドロイドが乗り込んで戦う物らしいです。おまけに空中戦も出来ると……凄いですね。


 そして拠点の中心部……他と同様に旧世界の建物がある場所に案内された私たちは、椅子に座ってモニター越しに此処のリーダーと話す事になりました。相当警戒心が強いのか、此処に来るまでの間も仲介人を通したか会話か、無線越しの会話だけでした。


「ごきげんよう、エルシア」


「……どうして私の事を?名乗ってませんよね?」


「君が北ブロックに来た時から監視させてもらってたんだよ。……君は魔女だね?」


「えぇ……ですが魔女である前に人間です」


「そうだな。所で1つ質問があるんだが、君の動きを見ていると戦略性に欠けた動きがよく分かるんだが、何を考えて戦闘しているんだ?君は」


「戦術を重要視してますが……何か変ですか?」


「別に変では無いよ……ただ、それだけだと今後の戦いで勝つ事は不可能な場面も出て来るだろうと思ってね……だから神を倒す事に協力してくれる君に戦略をレクチャーしたいんだが……どうかな?」


「ありがたい話ですが、私は貴女たちの為に協力せる訳じゃ無いですよ?それに戦略は、言ってしまえば戦いが始まる前から決められた数字しか用意出来ない……それに対して戦術はその場で作戦を変えて臨機応変に戦える、言わば乱数の様な立ち回りが出来る。……正直な話、戦略が必要だと到底思えないのですが」


「一理ある。だがその戦術をも組み込んだ戦略があるとしたら?」


「馬鹿な、乱数を組み込んだ戦略が作れる訳無いでしょう」


「普通はそうだな……しかし私には旧世界で活躍した、語られる事の無い悪党の記憶や思考ルーチンが組み込まれている。その上で言わせてもらうが、乱数を組み込んだ戦略は可能だ」


 そう言ってモニターの前で不敵な笑みを浮かべながら肘をテーブルに付いて両手を組み、その手に顔を乗せて余裕そうな態度を取るリーダーに、私は少しムカついていました。何様ですかアイツ。


「だったら私が此処で暴れて拠点内部を崩壊させたら、対応が出来るんですか?」


「それは……」


 そこまで言うと、モニターは動きを止めて「再生」の文字を出していました……まさか!。


 私の肩を誰かが叩きました。


 思わず肩を震わせた私は、目を見開いたまま恐る恐る後ろを振り返りました。


 そしてそこに居たのは……モニター越しに話してると思っていたレジスタンスリーダーでした。発言や動きを完全に読まれてた!?。


「ま、こういう事だ」


「す、すいませんエルシア様!まったく反応できませんでした……」


「……」


「さて、戦略の重要性……理解してもらえたかな?」


「認めざる負えないですね……貴女が敵なら私は死んでいます」


「その潔さ、私は大好きだぞ」


「嬉しか無いです」


 私は頬を伝う冷や汗を流しながらそう言うと、試しにリーダーに奇襲を掛けようとしてみました。しかしその企みは一瞬で潰されます。


「えっ!?」


「ま……君ならそう来ると思っていたよ」


 何と、私の手足はいつの間にか椅子に拘束されていたのです。リノリスも同様でした。


「もう良いでだろ……そろそろ君にプレゼントしたい物があるんだが、着いて来てくれるか?」


「……分かりました」


 手足の拘束を解除してもらった私たちは、リーダーに着いて行き、そこで懐かしい物を渡されるのでした。


「こ、これは……!」


「そう……A・Aだ。民間様に作られた物だが、君ならば上手く使いこなせるだろう?」


 私はティアナの記憶にある方法でA・Aをネックレスに変化させると、首に付けました。


 旧世界のノヴァさんの記憶によると、A・Aはナノマシン型の術式を元に作られた強化外装の為、アレと同様に形状を変える事が出来るんです。それでいて魔女が触っても術式による被害は受けない様になっている……つくづく旧世界の技術はヤバいと思いますね。因みに稼働エネルギーは生体電池って物らしいです。


「えぇ、ありがとうございます」


「礼には及ばないよ。さて、さっきの戦略の話だが……どうして私が君にA・Aをプレゼントしたと思う?君の能力ならそのままでも十分に神と渡り合えるというのに……」


 そこまで聞いた私は、彼女の意図を理解しました……。何処までも考える事に特化した人って怖いですね……アンドロイドだけど。


「なるほど……そろそろ来ますかね?」


 私がそう言うと、大きな爆発音と衝撃が響き、直ぐに襲撃を知らせるサイレンが鳴り響きました。


「素晴らしい、そこまで把握出来る様になってるとは。やはり人間は進化する生き物なんだな!アンドロイドが人間たり得ない部分はそこなんだ!」


「お褒めに預かり光栄ですが、今は迎撃が先です……行きましょう!」


「かしこまりました、エルシア様」


「私が指揮を執る、君達も参加してくれ」


「分かりました。リノリスもお願いします」


「エルシア様がそう言うなら……私も指示を聞きましょう」


「よろしい……さぁ!ショータイムだっ!」


 彼女がそう言って、辺りが爆発する直前に、私がA・Aを使って二人を抱えながら建物から飛び出すと、神が仕向けたであろう人形の迎撃に乗り出していくのでした……。

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