エピローグ 仲間との別れと、続く旅と、最果ての向こう

 南の最果てだった場所の前で、私とエレナさんは向かい合って立っていました。


 彼女に義手の作り方を教えてもらってる私は、かなり至近距離で会話をしています。


「なるほど、この義手ってそうやって作られてたんですね。ありがとうございます、勉強になりました」


「どういたしまして。所でエルシア、ずっと気になってる事があるのですが、聞いても良いでしょうか?」


「何です?」


「エルシアの使う「活」は、魔力向上と怪我の治癒が出来ると言っていましたが、それで手は治せなかったのですか?」


「それは出来ないですね。「活」は結局の所、ただの高速自然治癒なんで、本来自然治癒しない怪我は血を止めれても治せはしないんですよ」


「なるほど、万能では無いみたいですね」


「えぇ、そうですね。……あの、所でエレナさんが後ろに連れてる泥人形って……」


 私はエレナさんの後ろで、逆立ちしながらムーンウォークしている私の泥人形について尋ねました。……何やってんですかね、この私(泥)は。


「あぁ、この子ですか?。これはエルシアの泥人形です、何故か生き残ってたので連れてきました。敵意は無いみたいなので安心して下さい」


「いや見れば私だって分かりますよ。私はどうして彼女を連れてきたのか聞いてるんですが」


「だって一人旅はちょっと悲しいじゃないですか」


「……え?」


「エルシア、自分勝手で申し訳ないのですが、ここからは分かれて進みませんか?」


「別に構いませんけど……どうしてです?」


「私も、ここでやっておきたい事があるのです」


「そうですか……少し寂しくなりますが、まぁ仕方ないですね。それでは、お元気で」


「えぇ、また会いましょう。エルシア」


 エレナさんはそう言うと、スカートの端をつまみながら挨拶をして、私(泥)を箒の後ろに乗せながら飛んで行ってしまいました。


「……やれやれ、前に会った時も思いましたが、本当に面白い人ですね」


 私は近場の木にハンモックを掛けると、少し休憩を挟んでから先に進む準備を整えるのでした。



 南の最果て……。そう呼ばれる場所を越えて、更に先に進む小さな影が1つありました。


 この小さな影は、一気に加速して先に進むと、日の当たる場所まで駆け抜けました。


 日の光に照らされて露わになった影の正体は、少女でした。


金色の短い髪に、少し血が付いたワンピースを着た彼女は、鉄棒の様な物に横向きに座り、風になびく髪を抑えながら飛んでいます。


 彼女はエルシア。此処まで来るのに大変な思いをして来た魔女です。


 彼女は今日も、南方向ををひたすらに進み続けます。自分の所為で壊れてしまった、南の最果ての向こう側を観る為に。


「長旅になりますかね……。気合を入れて進みましょう!!」


 自分の頬をぺチンと叩いて喝を入れたエルシアは、更に高度を上げて飛び続けるのでした。


 この先でも、彼女は不思議な出会いや別れ、友と呼べる存在や敵になる存在と会う事になるのですが、それはまた次のお話で……。


 そしてこの魔女……エルシアの正体は、実は私なのでした。

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