4節 デートと、復興する街と、怒られる私たち

 はい、私です。アホ毛用育毛剤をリンネさんにコッソリ使った結果、マジでアホ毛が生えてしまって絶大な効果にドン引きしてるエルシアです……早い事リンネさんからアホ毛を抜かなければ。


 私は今、ユズとラブラブにデートをしていました。まぁ一緒に飲み食いして遊んでるだけなんですけどね、それに同性だしラブラブは無いか……。


 魔道昆とショーテルが治ったんで遠出して、現在は崩壊後に復興作業に精を出していたユミリアで昼食を取っています。しかし崩壊後もこの良い感じのレストランが残ってたなんて嬉しいですね。


「でさー、やっと出来た部下がスンゴイ強いんだよね!まだまだ子供だし成長するよ、あれは絶対にね!」


「へぇ、それは将来が楽しみですね。ユズにそこまで言わせるなんて本当に強いんでしょうね」


 海鮮丼をユズの倍の時間を掛けて食べ終わった私は、抹茶ラテを飲みながら何となくユズに出来た部下の名前を聞いてみました。


「所でその子の名前は何ていうんですか?」


「ん~?エルシアちゃん興味ある~?」


「……何かウザいですね、強いなら気になりますよ。……いつか邪魔になるかもしれないんで弱点位は知っておきたいし」


「あはは……何て言うか、エルシアちゃんはブレないね」


「で?その子の名前は?」


「うん、リザちゃんだよ!」


「ブフォッ」


 思わず盛大にユズ目掛けて抹茶ラテを噴き出した私でしたが、とっさに飲み物を持って来てくれた時に受け取ったトレーで防がれました。まぁ以前もユズに水をぶちかましてるし、それで反応が出来たんでしょうね。……と言うか、何で店員さんはトレーごと渡して来たんでしょうね?……謎です。


「リザちゃん……そりゃあ強いですよね。私も1回負けましたし。でも良く彼女の両親が騎士になる事を許してくれましたね。それと彼女は北国出身の筈ですが?」


「あぁー、それは少し揉めたらしいよ?でも「私たちを守ってくれたお姉ちゃんみたいになるまで帰らないから!」って突っ張ってたら親の方が折れたんだって。王都に来たのは例のお姉ちゃんが王都出身だかららしいよ」


「えぇ……それって私の所為じゃ無いですか。謝りに行った方が良いのかなぁ」


「……良く分からないけど、エルシアちゃんって色々と幸薄いよね」


「言わないで下さい……自覚はあるんだから」


 そういった話をしてる内に、私たちはレストランを出てユミリアを探索していました。


 とりあえずは元の状態に戻すのが最優先なのか、見慣れた建物がそこそこ並んでますね。ほら、混浴の銭湯なんて壊れて無かったんじゃないかと思う程に完璧に直されてますよ……まぁ需要は高そうでしたけど。


 そんなこんなで街をブラブラ歩きながら見て回ってた私たちでしたが、ユズが急に空を飛びたいって言い始めたんで、ユミリアを出て始まりの街方面に飛んでいく事にしました。


「いや~、それにしてもエルシアちゃんと此処を歩くのが久しぶりな気がするよ」


「そうですね……あれからまだ半年も経って無いんですけどね。後、飛んでるんで歩いてはいないです」


 ユズを私の後ろに跨らせると、地面を強く蹴って空に飛び立ちました。


 少しずつ地面が遠くなっていきます。私は最初、地面から体が離れる事が怖かったんですが、ユズは平気みたいでテンション爆上げのまま周囲を見渡して騒いでいました。


「エルシアちゃん!見て!鳥が私たちを見ながら横を飛んでるよ!」


「そうですね、もしかしたら人間が空を飛んでるのを面白がって見に来たのかもしれないですね。それじゃあ追いかけっこでもしてみますか?」


「いいねー!全力で行こー!」


「落ちないで下さいよ!」


 私はスピードを上げて飛んで行きました。


 暫くの間は鳥も私たちを追いかけて飛んで来ていたんですが、飽きたのか、それとも自分たちのテリトリーの外まで私たちが行ってしまったのか、急に追いかけて来るのを止めてしまったんで、のんびりと空の旅を楽しむ方向で始まりの街を目指して行きました。


 そんな時、私たちの足元に月光花の花畑が見えてきました。


「あ……此処って……」


「……寄ってみる?」


 私を心配する様にユズが問いかけてきました。


「いえ……寄らないです。既に家の周りの月光花が枯れ始めてますし……あの家には誰も生き物が居ない証拠ですよ……。カレンちゃんは……此処にはもう居ない……」


「うん……そうだね。カレンちゃんはきっと何処かに引っ越したんだよ」


「そうだと良いですね……。さて!このまま行けば次は幽霊屋敷ですかね?」


「あんまり思い出したくないなー……」


 気持ちを改めた私たちは、幽霊屋敷前に飛んで行きました。


「そう言えば此処で魔女さんと会ったじゃないですか?」


「うん、名前聞き忘れてたね」


「ですね。でも何ででしょう……彼女、何処か此処以外の場所でも見た記憶があるんですよねぇ」


「へぇ。北に居たのかな?」


「うーん……会わなかったと思うんですが」


 なんて話をしながらフラフラと進んでいくと、遂に始まりの街が見えてきました。此処から王都まで随分と距離があった様に感じましたけど、空を飛ぶとこんな直ぐに来れちゃうものなんですね……ひとっ跳びとは、まさにこの事です。


 そして始まりの街に着いた私たちは、懐かしい街並みを見ながら洋服やアクセサリーを試着したり買ったりを時間を忘れて楽しみ、王都の家に帰ったのが夜中になってしまい、心配性なリンネさんやリノリスから、どちゃくそ怒られてしまう私たちなのでした……。

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