2節 お金の無い私と、稼ぎ口と、悲しみを背負った九蓮宝燈
ほいほい、私でござんす。
私は今、絶賛ピンチを迎えていました。
「あぁ……マズイです、ヤバいです。早急にこの問題を解決しなければ……!」
私は手の平にちょこんと置かれた金貨1枚を見つめながら呟きました。
はい、意外かもしれませんが、これが私の全財産です。正確に言えば、リノリスが私の資金を管理すると言って全てのお金を没収してきたのです。そしてこれは1週間分のお小遣いとして渡された、金貨1枚になります。
「何とかしてお金を増やさねば……来週のユズとのお出かけに使える資金が無くなっちゃいますよ!」
色々とお金を稼ぐ手段を考えた私は、幾つかの稼ぎ方を案として出してみました。
・酒場に張り出されていた依頼をこなす。
・持ち前の手癖の悪さを使ってお金を掏る。
・賭博で一攫千金を狙う。勿論イカサマで全勝する。
・暇してるであろう駐屯騎士にお金を掛けた摸擬戦を申し込んで勝つ。
・リノリスを倒してお金を奪い取る。
こんな所でしょうかね?。でもリノリスを倒すのは駄目です、何の為に連れて帰って来たのか分からなくなる結果は避けたいです。それに彼女を相手にするならミュエールも敵になるという事ですし、勝率は低くなるでしょう。
酒場の依頼もダメです。以前大型の魔物を倒した時の報酬がしょっぱかったんで報酬の期待値が低いです。
スリも出来ればしたくないですね。バレたら私以外にも迷惑が掛かる可能性がありますし、ハイリスク・ローリターンは避けたい所……。
となると、賭博か騎士をカモにするしかないですね……。賭博の方が楽ですし、そっちにしましょう。
私は金貨を銅貨100枚に両替すると、雀荘に入っていきました。
そして数時間後、私は金貨1枚と銀貨50枚を手にルンルンと出てきました。
さぁまだまだこれからです、次はハイレートな雀荘で勝負。数時間後には金貨50枚になっていました。最期に大勝負をしましょう!。
私は超ハイレートな雀荘に行くと、金貨を使った賭け麻雀を始めました。
まず不正が無いか牌を入念に確認します。指紋や傷は癌牌…つまり暗記に使えてしまいます、例として挙げるならトランプの背面に沢山の折り線が付いている…その折れ方を覚えて勝負するのと同じです。その不正を防ぐために入念なチェックをしてるんです。
そして次は牌を混ぜる所、この時に欲しい牌の位置を覚える猛者が居るんで、覚える隙を与えない速度で混ぜて並べるのが吉です。私も牌の位置を覚える事は出来ませんが問題無いです。
そして勝負が始まる訳ですが……実は私、既にイカサマしてます。全ての牌の位置が分かってるんです。
入念に牌をチェックしていた時、あのタイミングで全ての牌の窪みに魔力を流しておいたんです!だから裏を向いていようと私には表に見える……そんな感じです。
後は摩り替えとかの小手先の技術を使いながら、相手の和了を鳴きで防ぎつつ和了して、狙えるタイミングで役満をする……それだけです。
そして東3局、私が親の時にチャンスが来ました。
このまま進めれば私の手元には連続して字牌が回って来ます、そして別の人がカンをして東がドラになっています。一気に勝ちにいきましょう!。
しかし彼等もプロの雀士、一筋縄ではいきませんでした。
「――ッ!?」
何といつの間にか牌の位置が入れ替わっていたんです。おまけにヤマも西の人の手牌とゴッソリ交換されてるし……えぇ!?。
困惑してる内に私の番が回って来ました…とりあえず平常を装いながら引いた牌は、ありえない物でした。
「(あれ?コレってさっき私が切った字牌ですのね!?他の3つは私の手元にあるし、コレを引く事なんて無い筈……)うぇえ!?」
「何て声を出すんだい、お嬢ちゃん」
「良いのを引いたのかな?」
疑問を抱きつつ河を見た私は、驚きを隠せなくなりました。
私の河……そこには私が切った覚えの無い牌がズラリと並んでいたのです。本来あった筈の牌の位置を探すと……三人の手元に何故かありました。
しまった……自分の牌に集中し過ぎてイカサマされてたんですね。やられました。
しかしまだ私の勝ち筋は見えています。本当は鳴きたくは無かったんですが仕方ない……今引いて来た字牌をカンで鳴きます。
そして引いて来た牌は字牌で嶺上開花……そうなる筈だったんですが、意外にもそれは叶いませんでした。
……あれぇ?おっかしぃぞー?。何で私の河に置かれてた牌を引いてるんだぁー?。もう色々と無茶苦茶な事になったこの局を、とりあえず終わらそうとする私は、普通に泣いて混老頭で和了しようとしていました。そして悲劇が起こります。
私がポンしていた牌の4枚目が来たんで、カンした時、唐突にロンの声が聞こえて来たんです……マジか!槍槓ですか!?。
しかし点数は高く無く、何とかなった私でしたが……ヒヤッとさせられましたね。
……もう許しませんからね。
東4局、東風戦なんでオーラスの時、私は魔法で牌の位置をズラして、いきなり良い牌を手元に並べて勝負が始まりました。
そして私の番……いきなり仕掛けます。
「リーチ」
そう、ダブルリーチです。そして何が和了になるか分からない彼等は慎重に牌を切っています……実は三人共ロンの対象だったんですが、ツモりたかったんで流しました……そして。
「ツモ!」
「「ッ!?」」
「純正九蓮宝燈!私の勝ちですっ!」
そんな感じで此処まで殆ど勝っていた私は、三人の点数を大きくマイナスにして決着しました。
そして沢山の金貨を手にした私は、ルンルンしながら家に帰りました。因みにリノリスたちに気付かれない様にお金は隠してあります。
「ただいまー」
「お帰りなさいませ、エルシア様。今日は何処で何をされていたんですか?」
「え?どうしてそんな事を聞くんですか?」
「いえ……エルシア様が博打してると風の噂を耳にしたもので」
「へ、へぇー……」
そう言えばユミリアでも私がポーカーをしてたら直ぐに噂が立ちましたね……盲点でした。
「で?何をされていたんですか?」
「……」
私が答えを渋っていると、何処からかミュエールが帰って来ました。
「ただいま!エルシア様の足跡をトラッキングしていったら、大金が隠してあったよ!」
「……」
「……」
「エルシア様?」
「……はぃ」
「これは……どういう事でしょうか?」
「……」
ヤバい……冷や汗が止まらない……。
その後、リノリスにこれでもかって程に説教された私は、罰として全額没収されてしまうのでした……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます