3節 リノリスの戦闘力と、現れる神と、全ての記憶
はい、私です。アホ毛……じゃ無くてエルシアです。
私たちは今、ブレイクマシーンと呼ばれるロボットと戦闘していました。
この先で私の魔力は大量に消費してしまうので、極力魔力を使わない立ち回りをしています。
しかしまぁ、分かってはいましたが硬いですね……コイツ。
ロボットのハンマーやノコギリを回避しつつ、足の比較的装甲が薄い場所を狙って鎌で斬りつけますが、効果は微妙。
攻撃に手間取っている間にも、私のメイド服はボロボロになっていきます。
「エルシア様!御下がり下さい」
リノリスはそう言うと、超大型の銃から大きな弾を撃ち出しました。
飛んで来る弾を認識したロボットは、左腕で身を守る様に構えます、が。
ボカァァン。
大きな爆発音と共に腕が吹き飛びました……わぁ凄い、私要らないんじゃ……。
とは言え、そんな悲観的でもいられないんで、しっかりと私も攻撃します。
体制を崩したロボットに、私はドロップキックをお見舞しました。
そのまま体制を戻す事が出来なかったロボットは、窓ガラスを突き破って私諸共落っこちてしまいました。
私は魔道昆に座って空を飛んで、リノリスが心配そうに見つめている場所まで戻りながら、落ちて行ったロボットを見ました。
大きな音と砂埃を立てながら地面に衝突した巨体は、その場でバラバラになるかと思われましたが、意外にもピンピンしていて、立ち上がると下の階から追いかけて来ようとしていました。
「あぁ……アレ放置で平気ですかね?」
「はい、エルシア様。放置しても問題無いかと」
「それじゃあ早い事最上階まで行っちゃいましょうか」
こうして私たちは、ロボットを撃退して先を目指すのでした。
〇
移動しながら、リノリスが使ってる超大型の銃について聞いてみました。
何でもあの銃、元はアンドロイドらしいです。仲の良かった彼女が破壊された際に、そのパーツを回収してきて、武器として作り変えたそうです。……IAチップが破損していて仕方なく武器にしたそうですが……これまた辛い話ですね。
そして、その友人のアンドロイドの名前を、武器の名前にしているそうです。「ミュエール」と言うそうですよ。
そんな話をしていると、遂に私たちは最上階に辿り着く事が出来ました。
ちょっと肌寒い空間ですね……機械ってオーバーヒートとか言うのを起こすから冷まさないといけないんでしたっけ?面倒ですね。
どうやら部屋の中心にあるコンピューターが、私たちの目的としていたやつみたいですね。リノリスが早速何かの作業を始めました。
彼女が頑張ってくれている間、特にやる事が無かった私は、周囲の警戒をしつつ色々な機会が置かれてる部屋を楽しく見渡していました。
……そう言えば誰も居ないですね。メイドは疎か、彼女たちの主さえ居ない……ふむ。
「罠……ですね。メイドたちの主は相当頭が良いと思います」
「何を言っているのですか?エルシア様」
「敵さんは私たちが此処に来るって分かってたんですよ。メイドの配置が軍師レベルだったんで、何か策があるのかと思っていましたが……まさか私たちの目的地、しかも敵さんの防衛目標そのものを囮にするなんて……」
私がそう言いながら鎌を構えると、リノリスもミュエールを構えました。
「さぁて、何処から来ますかね」
周囲を警戒していた私でしたが、いつの間にか後ろに回り込んで来ていた何者かに攻撃されてしまいました。
辛うじて間に合った魔法の防壁でダメージはありませんが……全く気付けなかったです。
「流石だね……あの死神を追い詰めるだけの事はある」
そう言って私の前に現れた敵は……恐らくリノリスが言っていた神でした。なるほど、確かに神様っぽいです。
「死神って?ノヴァさんの事ですか?」
「そう……かつて何度も我の企みを打ち破ってくれた男、それは間違い無く――」
「スキありぃ!」
謎のポーズを取りながら懐かしむように話す神が、余りにも隙だらけだったんで思わず攻撃しちゃいました。ごめんなさい。
しかし私の攻撃は届かず、そのまま武器ごと投げ飛ばされてしまいました。
仕方ないんで当初の予定通り、コンピューターでの作業を終えたリノリスと交代して、私は近くに設置された巨大なカプセルに電気を注ぎ込んでいきました。
「ミュエール!」
彼女がそう叫ぶと、なんと銃が沢山分離して13丁になりました。
手に持った銃以外を自身の周囲に展開させたリノリスは、巧みに遠隔操作で操りながら神に銃弾の雨をぶつけていきました。随分本気みたいです、早く私の作業を完了させないと、彼女が持たないかもしれないです。
最大の魔力を込めながら一気に電撃を発生させた私は、周囲から出てきたメイドたちを鎌で薙ぎ払いながら急いでカプセルに電気を溜めていきます。
「電圧、80%。隔壁ノ解放ヲ開始シマス」
そうアナウンスが流れました、リノリスの状況も余り良く無さそうですし、少し不安は残りますが撤収しましょう。
「リノリス!引きますよ!」
「かしこまりました、エルシア様!」
そう言って窓ガラスを突き破り、脱出しようとする私たちを……いえ、私を神は逃がしてくれませんでした。
先に外に出て私を待っていたリノリスは、さっき倒し損ねたブレイクマシーンが壁を登って来て、戦闘に発展しています。……早い事私もこの神様モドキを適当な怯ませて逃げないと!。
そう思っていた私に、神は声を掛けてきました。
「エルシア……貴女はどうして此処に来た?」
「別に好きで来た訳じゃ無いですよ。北の最果てとの入り口が閉まっちゃって困ってるだけです。でも、この世界に隠された真実を見たいと思って旅をしてるんですけどね」
「……そう、そんなに隠された真実を知りたい?」
「教えてくれるんですか?そう言う思わせぶりなセリフは止めた方が良いですよ」
「……良いよ、見せてあげる」
そう言って指を鳴らした神の周りに、謎の画面が出てきました。……これは何処でしょう?。
「今から貴女の脳内に直接、我々が集めてきた記憶のコピーを流し込む……覚悟は良い?」
鎌を構えたまま1歩後ろに下がった私は、周囲を警戒しました。流石にこの距離なら何かが飛んで来ても分かるでしょう。
「いつでもどうぞ……大した事じゃ無ければ貴女を斬りますけどね。――っ!?」
何処からでも攻撃を防げるように、私は防御態勢を取りました。しかし突然、私の頭の中に誰かの記憶が流れ込んで来ました。何で?私はまだ何にも触れて無い筈ですよ!。
そしてこの記憶……一人や二人の記憶じゃないです……何千何万の人の記憶が一瞬にして私の中に入って来たんです。頭が割れそうな程に痛い、何も考えられなくなります。
「あぁっ!…ああぁぁあぁぁあっ!!」
その場で転げ回る私を見下ろしながら、神は呟きました。
「……そんな防ごうとしたって、脳内に物理的に記憶をめり込ませる訳無いでしょ。人の記憶を保存したデータを貴女に送り込んだ、目に見える訳無い」
「あぁ……あ、あぁぁ……ああぁ」
既に意識が殆ど消えていた私は、泡を吹きながら力なく仰向けに倒れていました。
「さぁ、貴方の欲しい情報は上げたんだから、早く出て行ってね」
そう言って私のボヤける視界から居なくなった神は、メイドに声を掛けて部屋から出て行ってしまいました。
暫くして、全身をボロボロにしたリノリスが、私に心配そうな声を掛けると、抱き上げて何処かに連れて行ってくれました。
しかし、意識はあっても抜け殻の様になっていた私には、今にも泣きそうな声で心配する彼女に返事する事は出来ませんでした。
そして、私の意識は徐々に暗闇に呑まれていってしまうのでした……。
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