2節 旧世界の言葉と、メイド服と、脱出への糸口

 はい、私です。アホ毛の夢ばかりを見る様になったエルシアです。


 リノリスの知ってる安全地帯に逃げ込んだ私たちは、とりあえず私の知ってる世界には無い言葉の意味と物の説明を細かくしてもらった所です。大体は旧世界由来の物や言葉らしく、興味津々だった私は直ぐに覚える事が出来ました。


「なるほど、アンドロイドは機械生命体で、ヘッドユニットに組み込まれてる高性能IAチップで知能を確保している。

 だけどボディーユニットにも命令を記憶して実行するサブIAチップによって、頭が無くなっても襲ってくる。

 五感は全て存在するけど、必要に応じてON/OFFが切り替えられる。

 血が内蔵されている従者タイプと、自爆機能が搭載されてる戦闘タイプ、両方を合わせ持つ万能タイプのアンドロイドが存在する。

 武器は、脳のチップに組み込まれた種類の武器しか使えない。

 アンドロイド単体では通信能力が低い為、基本的に1グループ五人で編成した部隊での行動が多い……大体こんな所ですかね?」


「お見事です、主様。まさか物の30分程度で覚える事が出来るとは……従者として嬉しく思います」


 そう言いながら、おろろろ~と泣いた真似をしたリノリスは、何処から取り出したのか分からないハンカチで目元を覆っていました。


「あの……泣いてないで服を作ってもらえますか?後、私を主様と呼ぶのは止めて下さい……私はエルシアです」


「かしこまりました、エルシア様。お洋服ですが、丁度出来上がった所でございます」


 そう言って手渡されたのは、私の要望をある程度受け付けて作り直したメイド服でした。


 私の要望は、フリルは要らない、スカートは短く、袖も要らない、そんな所です。


 早速メイド服を着た私は、驚いて思わず声を上げてしまいました。


「うわっ!軽いですね!着てる感覚があまり無いですよ!」


「エルシア様、お静かにお願いします。エルシア様は近接戦闘がお得意の様ですので、防弾防刃を残しつつ軽量化してみました」


「うん、軽いです!ありがとうございます」


「お喜び頂けて何よりです」


 さて、何か良い感じの雰囲気になってますが、状況は依然として悪いままです。そろそろ本格的に出口を探さないとマズイですよね。


 そんな事を考えていると、急に周囲が明るくなりました……そろそろ夜中の筈なのに何故か青空で、遠くまで見渡せる程です。


「あぁ、どうやら電力が復旧したみたいですね」


「えっと……何で空が青いんですか?夜ですよね?」


「それは空が人工物で覆われてるからですよ、エルシア様」


「覆われてる?此処は外なんですよね?世界を覆てるって事ですか?」


「仰る通りです」


 言ってる事の規模があまりにも大きすぎて、若干困惑したままの私に、リノリスは新しい提案をしてきました。


 何でも此処の出口は、コンピューターと大量の電力で開くらしいんで、とりあえずコンピューターが置かれてる場所に行こう……と、そんな感じの提案でした。


 そもそもコンピューター自体どんな物か想像つかないんで、仮に襲われた時の対処方法がほぼ無いんですが……まぁ何もしないよりは動きたいですし、提案を呑みましょうかね。


 そんな感じで、私たちはコンピューターが置かれているらしい場所に向かう事になりました。しかし私たちは追われる身、なるべく目立たないルートでの案内をリノリスに頼みました。



 コンピューターを目指して歩く事数時間、私たちはエリア86と呼ばれる街を歩いていました。因みに本当の街の名前は「渋沢エリア」と呼ばれる場所なんだとか……知らないですね。


 このエリア86は、通称「無能の鉄くず置き場」と言われてるらしく、何らかの原因で活躍出来なくなってしまったアンドロイドが暮らす街らしいです。……何か世知辛いですね。まぁそのおかげで私たちは通報される事も無く歩いていられるんですけどね。


 さて、少し遠くに目的地が見えてきました。


「アレですか……いっぱいメイドさんが居そうですね」


「そうですね、あそこは現在も使われてる施設なので、戦闘型アンドロイドは居ると予測できます。電力が復旧した所を見ると、彼女達の主様も御出でになってるかもしれませんね」


「……因みにリノリスたちの主ってどんな人なんですか?」


「そうですね……見た目は普通ですけど、神です」


「……は?嘘ですよね?」


「いや、神です。神様です。ゴットです」


 あぁ、コレはアレですか?さっき教えてもらった「思考がバグった」ってやつでしょうか?。だったら無視で良いでしょう。


 さて、目的地は見えていますが、内部の情報も欲しい所ではありますし、何処かの建物の隙間にでも隠れて作戦を練る事にしますかね……。



 はい、どうにか作戦を練り終わった私たちは、遂にエリア86を飛び出してコンピューターがある場所……マザーステーションを目指して突っ込んで行きました。


 正面のメイドは三人、私の雷を纏わせた魔道昆で相手が反応するより先に殴り倒し、速攻でビルと呼ばれる建物に入っていきました。


 次にリノリスが電子妨害を起こし、メイドたちの間での通信を遮断させ、階段を駆け上がっていきました。


 道中出会うメイドは、とりあえず殴り倒しながらひたすら最上階を目指します。


 順調に作戦が進んでいます。ですが私の場合、絶対に上手くいかずに何かトラブルが発生します。


 ドカァン。


 突然壁が粉々に破壊されて、メイドでは無い大型のロボットが姿を現しました……ほらね、やっぱり上手くいかない。


 とは言え無視して進むわけにはいかない程に物騒な物を振り回しています。この先の事を考えると、余り魔力は避けませんが……仕方ないんで倒してから進みます。


「リノリス、私は魔力消費を抑えながら戦います。援護をお願いします」


 鎌を構えた私は、目だけをリノリスに逸らして話し掛けます。


「かしこまりました。エルシア様、アレはブレイクマシーンと呼ばれる厄介な敵です、お気を付けて」


 そう言ってリノリスは、背中に背負ってた超大型の銃を構えました。


 さて、随分と硬そうな見た目をした鉄の塊ですね、今後出て来た時の事を考えながら戦ってみましょう。


 ブレイクマシーンが右手のハンマーを振り下ろしてきました。


 私たちはそれを華麗に躱しながら、奴の懐に飛び込んでいくのでした……。

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