5節 かつて日本だった場所と、黒雪姫と、エレナさんの優しさ

 はいはい、私でござんす。アホ毛が反抗期なのか、意味も無く罵倒して来て心が折れそうなエルシアです。


 私たちは今、とても貴重な街に足を運んでいました。なんと今いる街……空白の50年前までは新大日本帝国があった場所らしいんですよ、これはきっと骸骨の心スケルトンハートの事も何かしら新情報が手に入るんじゃないでしょうか?今からワクワクが止まりません。


 早速私たちが訪れたのは、図書館でした。この街は大々的に新大日本帝国の事を語ってる訳ですから、何かしらの文献が残ってると踏んで、此処に来たのです。エレナさんも興味があるらしく、かなり真剣に資料を探し回っています。


 そして私の目論見ですが……大当たりでした。至る所に新大日本帝国の事が書かれた本が置かれていたんです。と言う訳で私は真剣に本を読むんで、今回のお話は此処まで……。



 まぁそう言う訳にもいかないんで、数時間後の粗方の本を読み終わった所からお話を再開します。


 今回、此処で本を読んで分かった事は、新世界で初の大事が、この第二次世界大戦だったそうです。


 そしてこの新大日本帝国は、率先して死刑囚を戦場に送り出し、5年間の懲役として最前線で戦わされていたそうです。その間、本名も人権も無く、まるで奴隷の様な扱いを受けていたんだとか……残酷な事しますね。


 そして今回判明したのは、この骸骨の心スケルトンハートの最終メンバーの情報でした。


 指揮官コマンダー……三川 直人


 現場リーダー……黒雪姫スノーブラック


 現場副リーダー……白雪姫スノーホワイト


 資材管理責任者……疾風の妖精シルフィードフェアリー


 この三人は、既に5年の懲役を終えて、兵士では無くなった少女だったそうですが、残された仲間や指揮官を助ける為、私兵部隊として最後の戦いに参加していたそうです。


 他のメンバーは三人居るんですが、彼女たちは特に現場責任者では無かったのか、ただの兵士としてしか記述が乗っていない少女たちでした。


 緋色の魔女スカーレットウィッチ


 蒼穹の魔女スカイウィッチ


 稲妻の精霊ライトニングスピリット


 以上が新大日本帝国が世界を滅ぼそうとした際に、それを阻止する為に立ち上がった、英雄としてこの街で崇められてる人たちのコードネームでした。


 他にも数人の仲間が居たとか、黒雪姫はこの時点で娘が出来ていたとか、彼女の兄妹も共に戦ったとか、色々と書かれた物も出てきましたが……いまいち信憑性が無いんで、多分ガセなんだと思います。


「いやぁ……今の世界の方が平和な気がしますね」


「そうですね……」


 粗方の資料を見終えて一息吐く私たちは、外に出てカフェでのんびりしていました。……しかし何でしょうね?エレナさん……妙に黒雪姫に対して執着が強く見えます。彼女の全身像を描いた紙の複製を貰って、ずっと眺めていますよ……。


「黒雪姫……ですよね、それ。何か気になるんですか?」


「いえ……何となく懐かしいだけです」


「懐かしい、ですか。……そういえば彼女とエレナさん、顔立ちとか髪の色とか背丈とか、色々と似てますよね……まさか姉妹なのでは!?」


「まさか……。50年以上前に亡くなった人と姉妹だったら、私は今頃おばあちゃんですよ」


「ふふっ、そうですね。エレナさん肌綺麗だし、まだ10代に見えますよ」


「精神年齢はもっと高いですけどね。見た目は18歳位じゃないですか?」


「ですね、可愛いお姉ちゃんって感じです。所でお姉ちゃんは、黒雪姫の何が気になるんですか?」


「お姉ちゃんと言わないで下さい、次言ったらお姉ちゃん怒りますよ?」


「自分で言ってるじゃないですか……」


「あはは……気になるって言っても、別に大した事じゃ無いのです。ただ……彼女には娘が居たって書かれてたじゃないですか」


「えぇ、信憑性は低いですけどね。それが何か?」


「……本当に娘が居たとして、子供を死なせない様にするには他国に逃がすしかないと思うのですよ」


「それが確実に生き延びられる道でしょうね」


「でも、それって一生の別れにならないですか?仮にお互い生き残っても、会う事が出来なくないですか?」


「まぁそれでも親としては、娘が生きてる事が何よりの幸せなんじゃないですか?」


「でも……我が子に会えないなんて……寂しすぎません?」


「……優しいですね。赤の他人の事なのに、そんなに悲しそうな顔をして」


「やっぱり……変ですかね?」


「いえ、素晴らしい事だと思いますよ。私は他人には相当冷たいんで、普通に見殺しにもできますし」


「……それは私には出来ない事ですね。無茶でも助けに行っちゃいます」


「それこそ私には出来ない事ですけどね。……やっぱりエレナさんは聖女な気がします」


「ただの魔女ですよ。聖女なんてガラじゃ無いです」


 とまぁ、そんな感じで全ての本を読み終えて、思い思いの事を口にした私たちは、カフェを出て歩き始めました。


 いやぁ、これで骸骨の心の事は大体分かりましたかね?なかなか興味深い時代のお話でした。


 さて!そろそろ本格的にシャディさんを探しに行ってあげなくちゃいけないですね、先を急ぎましょう。


 こうして街を出た私たちは、シャディさんを探しながら、南に向かって飛んで行くのでした……。

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