3節 修行と、雷球と、デッカイ魔物

 はい、私です。


 私は今、ピラミットの中でユナさんの指導の下、魔法の使い方を特訓中です。


 因みにこのピラミットですが、やはり最近出来た物で間違いなかったです。


 と言うのも、ここに本来は何も無くて、ユナさんが超大型の魔物を封印する為に魔法で作った建物だったのです。本当に魔法って万能ですね。


 さて、そんな事はどうでも良くて、私の魔法が弱い理由は大きく分けて2つの原因があるそうです。


 1つは密度、放つ魔法の大きさと魔力が釣り合って無い所為で、中身がスカスカの骨みたいになってるらしいです。


 2つ目は属性付与、私の魔法は単純に魔力をぶつけてるだけで、属性が乗ってないそうです……そう言えばノヴァさんも私の属性は雷って言ってましたね。


 一応私が出来る範囲で属性付きの魔力の塊を見せたのですが、持続力が無いから飛ばせないと言われてしまいました。


 しかし魔力のコントロールって慣れると結構楽ですね……説明を聞きながら魔力の放出量と大きさを調整した所、案外あっさりと出来てしまいました。


 ユナさんは驚いていましたが、ちょっと前にノヴァさんからも訓練をしてもらってたから出来たんだと思います。


 そして次は属性の付与ですが……これが中々に難しいんですよね。


 魔力に集中すると属性は乗らないし、属性に集中すると撃ち出せる程の持続力を持った魔法が作れないしで……困りました。


 そんなこんなで私の魔力がすっからかんの為、1日目の修業は半日で終わってしまいました。


 後はユナさんとお話したり、ご飯を食べたりして時間を潰し、2日目の修業に備えて眠りにつきました。



 次の日の朝、今日はユナさんの魔法と私の魔法をぶつけ合う特訓をしました。


 うーん、威力は同じ筈なのに打ち負けてしまいます……というかその度に吹っ飛ばされるの怖いから何とかしてほしいんですが、まぁ相殺できるようになれば吹っ飛ばされずに済むんですけどね。


 さて、あの火球を相殺するにはどうするべきか……単純に魔力を大きくして撃ち出すか属性を乗せるかの2択ですかね。


 属性が上手く乗せられない私は、魔力を大きくして撃ち出す方法にシフトしたんですが、そこで意外な結果を生み出せてしまいました。


 私の魔法がバチバチと音を立てながら飛んで行ったのです……そして。


 バァァァァン!。


 ハンパじゃ無い轟音と共に、ユナさんの魔法を打ち消した私の魔法……雷球は、彼女に直撃すると、その場で痺れてしまったかの様に倒れて痙攣し始めました……大丈夫なんでしょうか?。


 火球と雷球がぶつかった衝撃でヒビの入った柱が、硬直中のユナさんに落ちてきました……これはヤバいです!。


 反射的に飛び出した私は、魔道昆に雷属性の魔力を流して柱をぶっ叩いて破壊しました……腕がじんじんします。


 所で、属性を乗せるコツなんですが、必要な魔力の1.5倍程度を魔法に込めると発動するみたいです……ただまぁ、何て言うか……魔力の少ない私には、雷球は向いて無い気がしますね。


 魔力切れを起こした私は、痙攣するユナさんのお腹目掛けて倒れ込みました。


「グェ!?」って鳴いた気がしますが多分気のせいです。


 ……ふぅ、それにしても何だかここまで一気に駆け抜けて来た様な気がしますね。



 はい、何だかんだで3日目の朝です、私は半日以上ダウンしてたみたいですね……気を取り直して今日も頑張りましょう。


 とは言ったものの、大体をマスターした私に教える事は無いとユナさんに言われてしまった為、今日は何もせずに休む日にしたいと思います。


 特にする事が無くて暇だった私は、ユナさんと他愛無い話をして盛り上がっていました。


「へぇ、ユナさんはノヴァさんに会った事があるんですね」


「一応ね、あたしは不愛想な男に興味は無いけど……結構男前だよね、彼」


「そうですね。私は……ノヴァさんの事好きだったり……」


「マジで?アレが初恋なら止めた方が良いと思うよ?」


「そうですかね?彼って表情筋は死んでる気がしますが、内面の感情は結構豊かで可愛い所もありますよ?」


「あー、恋は盲目って言うしね……あれの不気味さに気付かないなんて……」


「いやまぁ、不気味だとは思いましたよ?でも一緒に居ると、何て言うか……彼の本心から来る優しさの様な何かが見えて来るんですよ」


「……そのまま恋煩いを起こさないようにね」


 はぁ……楽しいです。特にこれといって身になる会話では無いですが、ユズと話す様になってからは意味の無い会話も楽しく感じる様になりました。


 ……こんな楽しい時間が、ずっと続けば良いのになぁ。そうは思っても問屋が許さないのが私です。


 ドォォォォォォン。


 ……まぁ因果の狂った私に休息は与えてくれないみたいで、ピラミットが崩れそうな程の大地震が起きました。


「うぇい!何ですか!?」


「あぁ……封印が弱まってたのかもね。この調子じゃ直ぐに魔物が出て来るよ」


「魔物って、初日に話してた超大型の魔物の事ですか?いつ頃出て来るんでしょう……?」


「んー……今かな」


「えぇぇぇぇぇぇ!?」


 標的が出て来る前に対策を取っておきたかった私ですが、そんな余裕も無く地面が崩れ落ちて、デッカイ魔物が姿を見せ始めたのです。……いや本当にデッカイ!山よりデッカイ!。


 デッカイ頭にぶつかって吹き飛ばされた私は、魔道昆に乗って上空から魔物を見ました……漫画に出て来るラスボス臭をビンビン感じますね。


「あれ?ユナさん!?何処ですか!?」


 一緒に吹き飛ばされたユナさんの姿が見当たりません、まぁ彼女は強いんで簡単に死にはしないと思いますが、流石に10メートル以上も飛んでしまうと、落ちた衝撃で大怪我しちゃうんじゃないかと心配になったんです。


「ユナさーん!」


「エルシア……上だ、上」


 ユナさんの声が聞こえた先、私が見上げると、そこには魔力を翼にして浮いているユナさんが居ました。とてもカッコいいです。


 さて、いつまでも見惚れてる場合じゃ無いですよね。彼女が無事と分かった今、私たちがする事はデッカイ魔物を封印するか倒す事です。


「ユナさん、アレの弱点は何処ですか?」


「眉間の筈だけど、肉が分厚過ぎて致命傷を与える事が出来ない。もう一度封印するしかないか……」


 考え込むユナさん、しかし私は魔物を倒す方法を思いついていたので提案してみたいと思います。


「多分、仕留めきれますよ」


「……どうやって?」


「私が近付くまでの間、援護をお願いします。眉間に痛いのをお見舞してきます」


 腰に着けたショーテルを抜いて見せた私、その際に魔力を帯びさせてみました。


 私の考えに気付いたユナさんは小さく笑い、空中に無数の火球を浮かべて待機しました。


 さて、お小遣い稼ぎの時間です。大きな声で威嚇するように鳴いた魔物の上空に陣取ってた私たちは、魔物の降り落として来た手を回避してから動き始めるのでした……。

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