エピローグ 私のメイドと、思い返す旅と、今後の方針
「え!?あの北ブロックを崩壊させたウイルスって、最悪世界中のブロックを消滅させるかもしれない物だったんですか!?」
王都の自宅に戻って来ていた私は、ティータイム中にとんでもないネタバレをされて、驚きの声を上げながら立ち上がり、袖にティーカップを引っかけて盛大に零してしまっていました。スカートに掛かった生温かい紅茶が下着にまで染み渡って気持ち悪いですが、しかし私の心境はそれどころではありません。
「あーあ……少し落ち着いてよ、エルシアさまー」
「そうですね。既に過ぎた事ですし慌てる必要はございませんよ、エルシア様」
「……」
私の足元では割ってしまったカップの破片を回収するメイド、そして正面には新しい紅茶を淹れてくれるメイド、この二人が私たちの家に居ました。
そして正面で淡々と語るメイドは私にカップを差し出すと、再び話の続きを始めました。
「しかしあのウイルス……本当は神様がエルシア様を無視してウイルスを破壊しに来ることを想定した作りになっていたので、あの程度で済んで良かったですよ」
「……一応聞きますが、何処まで壊れたんですか?」
「南ブロックまで崩壊してるみたいですが、西と東、空と地下は無事みたいですね」
「つまり縦一直線にグルーっと破壊したって事だねー。でも他のブロックがウイルスの対応出来たのは正直驚いたなー」
「そうですね、私もそこは驚いています」
「私……改めてとんでもない事してたって思い始めてきましたよ……」
私は大きくタメ息を吐くと、窓から見える青空を眺めました。
そしてタメ息を吐く私を眺める二人のメイド……彼女たちの正体はリノリスとミュエールだったのでした。
〇
彼女たちを連れて王都に帰って来た私だったんですが、その時たまたま王都に帰って来ていたノヴァさんとリンネさんに出会い、事情を説明したら二人で彼女たちを直してくれたのでした。本当に運が良かったですね、ノヴァさんが居なかったら修理出来なかったんですから。
そんな訳で、彼女たちには家の清掃や、身の回りのお世話、その他諸々をやってもらう事になったのです。
しかし彼女たちはアンドロイド。お給料にお金は要らないと言われてしまったので、週2日で休みを与える事にしました。リノリスは世界が見たいって事でしたし、ミュエールもリノリスと共に居られれば他は要らないと言ってましたし、きっとこれで丁度良いでしょう。もしも、いつかもっと先の世界を見てみたいと言うなら……少し悲しいですが、しっかりと送り出すつもりでもいます。
まぁそんな感じで、ゆるっと主従関係を結んだ私たちでしたが、今までと特に変わり無くのんびりと暮らしているのでした。
頭の片隅で、こんなナレーションチックな事を考えていると、リノリスから質問がとんできました。
「それで、エルシア様は今後どうなさるんですか?」
「どう、とは?」
「また世界の最果てを、そしてその先を目指すのですか?」
「そうですね……いずれは東西南北、全ての最果てを目指しますよ。でも、暫くはのんびりしますかね。……色々と有益な情報も手に入ってますし、それを手帳に纏めておきたいんで」
「そうですか、かしこまりました」「かしこまー」
私の言葉に返事をした二人は、次の仕事をしに部屋を出て行ってしまいました。
「ふぅ……それにしても、二人が元通りになって良かったです」
椅子から立ち上がった私は、窓を開けて縁に肘をついて空を眺めました。
心地良い風が私の髪を撫でていきます。……ここ最近は空をゆっくり眺める余裕が私にありませんでしたからね、仕方無いんですけど……何て言うか、こうやって何も考えずにボケーッとしてる時が1番安らいでる気がするんですよ。
私はほぼ無心の状態で、北ブロックでの出来事を振り返ってみました。
最初は不思議な音声に導かれる様に入っていったんですが、未だにどうやって音声認証をクリアしたのか分かって無いんですよね……。
そしてアンドロイドと戦闘して逃げ込んだ先に居たリノリスと出会ったんですよね……あの時は何も言いませんでしたが、心細くて切れそうだった私の精神状態を繋ぎ止めてくれていたのは、間違いなくリノリスでした。本人には絶対に言いませんが。
そして神との対峙、マザーステーションで記憶を無理矢理埋め込まれた私は、長い間昏睡状態だったらしいです。
その後、色々あって各所のレジスタンスに協力を仰いで回ったんですよね。その時に、リノリスから私の事を指摘されて、ほぼ逆ギレした私は彼女を置いて先に進んだんでした。
それから無線越しにノヴァさんと話して、ミュエールと戦って、再びリノリスと合流。一応納得出来るであろう形で私の意思を示すと、渋い顔をされたものの納得してもらう事が出来ました。
そして神との戦闘中……私はウイルス兵器のボタンを押してしまったのです。
ウイルスにより全てのアンドロイドは爆発して北ブロックも崩壊、神の使ってた術式も壊す事に成功したのです。
そして、何だかんだあって、今に至る……と。
はぁ、よくよく考えると結局巻き込まれてるだけですね……私。
そんな事を思いながら気合を入れると、私は手帳に北の最果てから北ブロック崩壊までの出来事を手帳に纏める作業に入るのでした……。
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