10節 義手と、魚の蒸し焼きと、酒場での情報収集
夏のとても暑い日差しが照り付ける中、私は水辺に糸を垂らして昼食の確保をしようとしていました。
もうじき街には着きそうなんですが、エレナさんが熱中症気味だったんで急きょ休みを取ってる訳です。
何故わざわざ魚など釣ろうとしてるのかと言いますと、洞窟を出発して直ぐに、エレナさんが土とか水とか魔力とかを必死にこねくり合わせて、義手を作ってくれたんですよ。そしてこの義手は魔力を込めれば自在に動かせるんですが、どうにも力加減が出来なくて、危うくエレナさんの手を握り潰す所だったんです。なので腕の扱いの練習も兼ねて、こうして左手だけで釣りをしてるんです。
「お!!掛かった!!」
私は浮が沈んだのを確認すると、勢い良く腕を振り上げて魚を引き上げました。
――スポーン。
何だか気持ちの良い音が聞こえそうな程に高速で釣り上げられて宙を舞った魚は、背後にそびえ立つ木の木陰で休んでるエレナさん目掛けてすっ飛んで行きました。
うーむ……やっぱり力加減が難しいですね……。いやそんな事より早くエレナさんに魚が飛んでった事を教えないと!!。
「エレナさん!!そっちに魚が……あ」
私が声を掛けた時、辛そうにうなだれていたエレナさんが私の方を見ました。そしてその瞬間、エレナさんの顔面に魚がぶつかり、ピチンッと良い音を立てながら、暑くて開けていたブラウスの隙間に入っていってしまいました。
「うひゃあ!?なになに!?何なのです!?胸に纏わりついて気持ち悪いのですが!?」
「エレナさん落ち着いて下さい!!それ魚です!!」
「ひゃんっ!!鱗みたいなのが刺さった気がします!!」
「それ鱗じゃ無くて多分背びれです!!」
「冷静な解説は要らないので早く取って下さい~!!」
「――っ!」
エレナさんはブラウスのボタンを全て開けて、その白くて華奢で、薄紫の下着が更に肌の色を美しく見せ、まるで絵に描いた様に美しい肌を晒すと、半泣きになりながら私に助けを求めてきたのです。
「あ、危なかったです……何かに目覚めそうになりました……」
「エルシア~!!早く取って下さいよ~!!」
体をくねらせながら魚と戦う可愛らしいエレナさんを観察したい所ではありますが、後で怒って魔法でもぶっ放されると危険なんで、そろそろ助けておきましょう。
私はエレナさんの元まで近付いてしゃがみ込むと、まずは魚の状態を確認しました。ふむ、糸ごと吹っ飛んだんで下着と変な絡まり方してますね……何だか犯罪臭がしますが、私はエレナさんのブラウスを脱がせると、何も言わずに下着を取っ払いました。
「ちょっ!!エルシア!?」
「私はやましくない、私はやましくない。ただ魚が糸ごと下着に絡まってたから脱がせただけで、何もやましい事は考えていない……」
私は自分に言い聞かせる様にしながら下着だけを見つめて、彼女を見ない様にしながら絡まった糸を解いていきました。
それから数分後、やっと糸を取り終えた私は、エレナさんに下着を返しました。勿論彼女の事は見て無いですよ。
「ありがとうございました。しかし脱がすなら事前に言って下さい……」
「すいません……私も色々な意味で焦ってたもんで……」
何かラッキースケベ的な事は起こったものの、何とか魚を確保できた私たちは、焚火で魚を焼いている間に今着てる汗をかいてしまった服を水辺で洗い、誰も見ていないのを良い事に、下着のまま水の中に入って遊び始めました。
「……エレナさん、綺麗ですね」
「そうですか?エルシアだって可愛らしいし綺麗ですよ」
「私の可愛さって、要は少女らしさでしょう?。でもエレナさんは大人の色気と美しさを感じるんです」
「色気って……」
そんな話をしながら水をかけ合いっこしていた私たちでしたが、そろそろ良い匂いが漂ってきたんで、下着も脱いで服と一緒に乾かすと、替えの下着と服を着て再び木陰に入って焼き上がりを待ちました。
今回は魚の丸焼きでは無く、少し前に城下街で買った塩や胡椒、出会った商人を助けた時に貰ったバターを使って、ちょっとした料理をしています。少しくらい料理は出来ないと女子力が低いと本で読んだんで、それからちょっとずつ料理を練習しているんです。
大きな葉に切り身にした魚を置いて、そこに塩胡椒とバターを適量、残った葉の部分で魚を包む様にしてその上からツルや柔軟で強度のある茎で縛って、それを熱は通るけど燃えない位置に吊し上げて良い匂いがするまで放置する。……長ったらしい説明ですが、簡単な話が蒸し焼きです。外だとこの位の料理が限界なんですよ。
「エレナさん、具合はどうです?」
「もう平気そうです。ありがとう、エルシア」
「義手を作ってもらったんですし、恩人に気を使うのは当然ですよ。それに今は旅の仲間なんですし、尚更です」
「そうですか……。あ、義手で思い出したのですが、お風呂に入る時は取って下さいね。一応元になってるのが土なので、お湯には溶けちゃうのです」
「分かりました……これって取り外し出来たんですね」
「まぁエルシアの魔力で繋がってるだけですから」
「へぇ。……ん?って事は魔力を繋いだままならロケットパンチとか出来るんじゃないですか?」
「出来なくは無いのでしょうけど……随分と突拍子も無い事考えますね」
「昔からそうなんで慣れてください」
そうこうしてる内に魚が焼けたんで、私たちは木を削って作った即席の箸で食べ始めました。
うん。塩加減はまぁまぁ良い感じですね、バターも風味が美味しく感じる程度ですし、何より魚が持つ旨味を殺していないのはポイントが高いんじゃないでしょうか。
こうして魚を楽しんだ私たちは、改めて近くの街に向かって行きました。
〇
街に着いた私たちは、各々で聞き込みを開始。エレナさんは旅に慣れてるんで聞き込みも重要な事を聞いて来てくれますし、ユズと違って安心できます。ですが安定して高水準な旅能力を持つエレナさんだと、街中でのハプニングが無いんで刺激的な体験は出来ないんですよね。……あぁ、ユズとの旅も楽しかったなぁ。
少し過去の出来事に感傷的になっていた私でしたが、そろそろ何か情報を集めないとですね。とりあえず酒場に向かいましょう。
そして酒場に着いた私は、マスターにオレンジジュースを頼むと、いつもの様に情報を聞きました。
どうやら魔物は街を守ってる人たちだけで狩れる程度のヤツしか出ないらしいです。そして古い建築物は、在るには在るんですが……何やら訳ありみたいですね。
「訳ありなのは分かりました。ですがその辺も教えてもらえないですか?」
「あぁ……古い建物ってのは廃教会なんだが、そこには……出るらしいんだ」
「…………へ?」
「何かはしっかりと分かって無いんだが……生き残った奴が言うには、宙を舞って噛み付き、闇に消えていく……そんな奴なんだと」
「……物理攻撃して来るんですか?幽霊なのに?」
「いや……確かに生き残りは幽霊と言っていたが、俺が思うに……ありゃ吸血鬼だ」
「……ほぅ。確かに吸血鬼の特徴に合ってる気はしますね」
「だろ?だがスマンな、俺が知ってるのはここまでなんだ。もし興味があるなら、この街から真っ直ぐ南に行くと辿り着く村で酒場に寄ると良い。あそこのマスターは俺なんかよりも精力的に吸血鬼の情報を集めてるからな。……まぁ情報を買うとなると多少高く付くかもしれんが……」
「その辺は大丈夫です、賞金が沢山余ってるんで。それじゃあ、情報ありがとうございます。ごちそうさまでした」
「賞金……?。あ、あぁ。また寄ってくれよ」
私はマスターに挨拶をすると、そのままエレナさんと合流、今日は宿に泊まって明日の日の出で吸血鬼の情報がある村を目指す事になりました。
私たちは、例の吸血鬼がシャディさんなのではないかと考えています。もしそうなら早い事合流したいんで、急いでる訳です。
そしてエレナさんの持って来た情報なんですが……どうやら泥人形使い、フェンズ・ベルギウスを数日前に見かけてた人が居たんだと。先回りされてるんでしょうか?。
まぁ考えても分からないんで、今日はゆっくり休んでおこうと思います。おやすみなさい。
こうして私は、布団にダイブして眠りにつくのでした……。
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