17節 始まる作戦と、神の降臨と、消えて逝く機械の魂
はい、私です。いい加減家に帰りたいエルシアです。
とうとう北ブロックを破壊して神をシバく日がやってきた事に、少なからず緊張しているのが自分でも分かります。少し怖いのか、小さく手が震えていますね。
私は手の震えを誤魔化す様に両手を握りしめて、私たちの出番を待っていました。
大丈夫……作戦はしっかりある。神の弱点もノヴァさんの記憶で理解している。圧倒的に有利な状況である事は間違い無い。最終手段に謎のスイッチという切り札もある……心配するな、私。
念じる様に唱える私の手を、リノリスの手がそっと優しく包んで微笑みかけてくれました。……此処に来てリノリス出会えて、本当に良かったです。どれだけ彼女に救われた事か……。
「大丈夫ですよ、エルシア様。絶対に勝てますから、そんなに不安そうな表情をしないで下さい」
「分かってますよ、大丈夫です。……ありがとう、リノリス」
私は彼女に微笑み返しました。そんな時です、マザーステーションが崩壊するのと同時に無線から私たちに指示が飛んできました。
「エルシア、リノリス、出番だぞ。神の出現も確認できた……上空に出現するぞ!」
彼女がそう言うと、急に空中が歪んで神が現れました。これが最終決戦ですね……行きます!。
私はリノリスを魔道昆の後ろに乗せると、勢い良く飛び出していきました。
「私は飛ぶことに集中します、回避は任せて下さい!」
「かしこまりました、私はターゲットを撃破する事を最優先で動きます!」
そう言いながら上空で神と対峙した私たちは、早速攻撃を仕掛けるのでした。
最初にリノリスの先制攻撃、ミュエールを全て展開して遠隔操作の全方位攻撃を仕掛けました。私もまだ回避に余裕があるので
状況の整理が追いついていない神は、私たちの攻撃が全弾命中、体中から黒い煙を上げながら地面に落ちて行きました。
地上では人形の残党をレジスタンスが破壊していましたが、既に残党が居なくなったのか神の落下地点付近に活動中のアンドロイドは確認できません。これなら心置き無く魔法をぶっ放せますね。
リノリスはミュエールを元の超巨大銃に戻すと、神目掛けて追撃を放ちました。私も雷球を飛ばして追撃火力を底上げします。
ドォォォォン。
集中砲火で大きな爆発音を起こした地上を眺めながら、私たちは神を倒せたのかどうか様子を窺っていました。
そんな時です、急に爆発の際に生じた砂煙の中から真空派的な何かが飛んできました。
かなりのスピードでしたが、ギリギリ回避は間に合いました。さぁもう一度追撃です。
そう思った私でしたが、何処からか血が舞い散ってる事に気付いた私は、攻撃を中止して血の出所を探しました。切断された事にも気付かずに戦闘を重ねるのはとても危険だと知っているからです。
そして血の出所……それはリノリスの足でした。回避がギリギリになってしまった所為で体を曲げて躱しきれなかったリノリスは、右足の膝から下を斬り落とされてしまったみたいです。
「リノリス!」
「大丈夫です!怪我でアンドロイドは死にません……追撃を!」
彼女の声に応える様に追撃を掛け続ける私たちですが、なかなか反撃が止みません……本当に攻撃は当たっているのでしょうか?。
そんな事を思ってると、他のアンドロイドたちが加勢に来てくれました。
私たちは変わらずに空中から射撃、アンドロイドも得意距離からひたすら攻撃を繰り返しました。
〇
神と戦闘を始めてどの位の時間が経ったでしょうか……依然として神はピンピンしています。それに対して私たちは疲弊気味、既に何体ものアンドロイドが死んでしまっています……いくら機械と言えども、見知った顔がボロボロになっていって動かなくなってしまうのは……精神的にくる物がありますね。正直……辛いです。
でも此処まで被害を出してしまった以上、引く事は出来ません。勝ちか死か……私たちの選択肢は初めからこの2つしか無いんです。やるしか無い……。
「リノリス……私は地上に降りて直接戦います。援護をお願いします」
「分かりました……お気を付けて」
私は建物の上にリノリスを降ろすと、魔道昆とショーテルを連結させて、魔法の羽を使いながら神の元まで降りて行きました。
ほぼ不意打ち気味に神を攻撃した私でしたが、彼女も術式を持っているらしく、見事に防がれてしまいました……。なるほど、どれだけ攻撃してもピンピンしてる訳です。
「やっと降りて来た……ずっと空中に居る気なのかと思ってた。どうしてまだ此処に居るの?君が欲しかった記憶は上げたでしょう?それとも……やっぱりブロックという存在が気に食わないから破壊しに来た……そんな所かな?」
「そうですね、ついでに人間を過小評価してる子離れ出来ない馬鹿親をシバきに来た感じです。まぁそれも少し前までの考え方でしたが。所でソレ……術式ですよね?どうして貴女が使えるんですか?」
「これは電力をレーザー通信で送って稼働するタイプの術式発生装置でね……昔コレを作ろうとした人が廃棄したデータを復元してね、使ってみたんだよ……消費電力的にコスパは悪いけど使い勝手は良いね」
「なるほど……外部電力ですか。つまりソレが通信を送ってる間は貴女は無敵だと、そういう事ですか」
話しながらも戦闘を続ける私でしたが、術式が相手だと無理に攻める事が出来ずに防戦一方になってしまいますね……思ってたより状況はよろしく無いです。
そんな時、私の会話を聞いていたと思われるレジスタンスリーダーから無線で通信が入って来ました。
「エルシア!今こそ例のスイッチを押せ!」
「今ですか!?絶賛戦闘中ですけど!」
「私が代わりに戦う!いいからスイッチを押すんだ!」
会話に夢中になっていた私に、神が術式攻撃を仕掛けてきました。しかし直撃寸前の所でリノリスの狙撃が入って胸元を霞めるだけで済みましたが、やっぱり悶絶レベルで痛いですね……術式の攻撃は。息が止まる程に痛いです。
「ぐぁ……!しまった……」
「ふーん、魔女って本当に術式に弱いんだね」
その場に膝を着いて倒れる私を見て、神が興味無さそうに呟きました。
その時、何処からともなく攻撃が飛んできたのです。まるで私と神を引き裂くかのように。
そして銃撃による砂煙が上がった瞬間、行動不能になった私を、アンドロイドが担いで戦線を離脱してくれました。
そして私と代わる様に、見た事無いロボットが神に攻撃をし始めたのです。
「良いかエルシア、流石に私でも長くは持たない……皆死力を尽くして君を守るから動けるようになったらスイッチを押すんだぞ!ここから先は私の指示は気にしなくて良い!」
そこまで聞いた私は、意識はある物の脱力して動けなくなってしまうのでした……。
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