4章 王都で暮らす少女の日常

プロローグ

 王都の端の端、誰も寄り付かない様な寂れた場所を、少女が歩いていました。


 周りの建物は風化してボロボロで、畑だと思われる場所も少女の胸の高さまで伸びた雑草まみれ、井戸も枯れてて何も無し……。そんな場所に現れた少女は、場違いにも美しく整った金色の髪に、最近王都の若い女の子の間で流行りのロングTシャツに短パンの格好にロングブーツを履いたスタイルで、良い感じの高さの岩を見つけると座り込んで、水筒の水をゴクゴクと飲み始めたのです。状況的にも絵面的にも砂漠に現れたオアシス状態ですね。


 さて、この少女は何者なのか……。


 えぇ!いつも通りに私です。ちょっとナウい格好をしてみました……。パッと見ズボン穿いてない様に見える服装だったんで、折角だしパンツみたいな見た目の短パンを穿いてきました。


 白いロンTに淡い水色の短パン、薄茶色のロンブーに靴下は珍しくブーツソックス、ちょっとオシャレに縁が水色のサングラスと黒い帽子を被って、イヤリングもつけてみちゃったり。


 さてさて、もはや原型を留めて無い程にイメチェンした私ですが、どうしてこの格好をしてるのかと言いますと、単純にリンネさんとミュエールの趣味です。私の体は彼女たちに弄ばれました。もうお嫁に行けないです。うわぁぁん。


 とまぁ冗談はこの辺で……。こんな辺境の地に、私が何しに来たのか気になった頃だと思います。それはですね……大型の魔物の討伐です。そして魔物は目と鼻の先に居るようですね。


「ギャオオォォォォオ!」


 崩れた民家の向こうから遠吠えが聞こえますね。きっとこれ以上来たら殺すって警告なんでしょうね……無視しますけど。それ入っちゃえ、えぇい!。


 チュドォォン。


「ぴゃぁあ!?」


 急に地面が爆発して吹っ飛ぶ私。超痛い。


「いてて……トラップ型の攻撃ですか、随分と芸が凝ってますね」


 私は立ち上がってお尻の砂を払うと、この大型の魔物に接近する方法を考え始めました。……いや最初からそうしろよって思うかもしれませんが「まぁ何とかなるでしょ?」位の軽い気持ちでいたんで許して下さい、既に痛い目に遭ってるんで今度は慎重に……。


「ギャオオォォォォオ!」


 ドカァン。


 うっわ火球吐いてきましたよアイツ、前言撤回です慎重に立ち回ってたらエルシアの丸焼きが出来ちゃいます……脂身無くて不味そうですね。


 と言う訳で、今度は高い木の上から魔法の羽を使って接近します。……ん?魔道昆はどうしたって?壊れちゃったんで修理中です、ついでにショーテルも修理中なんで武器はその辺の騎士から借りたショボい剣だけです。


 そんなこんなで、いざ突撃!。


 私は魔法の羽を展開し、滑空しながら大型の魔物に近付いて行きました。


 ふむ、あの火球で予想は出来ていましたが、ドラゴンタイプですね……これは滑空中だと火球よりも毒の尻尾や雷を引き起こす足の爪の方が厄介そうですね。


 しかし魔物も私の事をナメてるのか、火球しか吐いてきません……まぁ躱せないんで遠距離攻撃の火球を飛ばすのは正解なんですが、魔女の私には効きません。特に「絶」を使える私には……ね。


 と言う訳で早速無限のインフィニティ・弾丸バレットで迎撃しながら「絶」を展開した私でしたが、そこでアクシデントが起こったのです。


 何と魔力切れで魔法の羽が消えてしまったのです。これじゃ「絶」どころじゃ無いですヤバイヤバイ!。


 そのまま真っ逆さまで落ちて行く私。


「あ……私、終わった」


ヒュゥゥウ……ドスン。


「がはっ……!」


 地面に背中を叩きつけられた私は、一瞬息が止まる程の衝撃を受けて身動ぎしていました。


 そこに飛んで来る魔物の火球。私はギリギリの所で避けると、全魔力を手に集中させて「絶」を展開して第2波を吸収しました。


 続けて第3波が飛んで来る事を確認した私は、「活」を使って魔力と傷の回復をすると、続けて「絶」を発動。第3波を防いだ瞬間に「滅」で反撃をしました。


 首に「滅」が当たった事でグロテスクな音を立てながら千切れ跳ぶ魔物の首から、血が雨の様に降り注ぎ、私を紫色に染めていきました。


「ふぅ……白いシャツ着て来るんじゃ無かった……。このままは嫌だし、近くの川で軽く洗ってから帰りましょう。……あ、そう言えば剣使わなかったですね」


 私は魔物を討伐した証としての目玉を回収、それ以外の売れそうな所を本業のハンターとして売り捌く為に回収し、帰路に就くのでした……。


 いくら旅を休憩してるとは言えども、何もしないのは性に合わないんで、手帳に旅の出来事を埋める息抜きとして酒場で掲示されてる依頼をこなしているんですが、なかなか稼げない物ですね……まぁ動ければ何でも良いんですけど。


そんな理由で依頼を受けていた私ですが、徐々に稼ぐ事に集中していく私は、変な方向で有名人になってしまうのでした……。

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