3章 本当の世界を見る少女

プロローグ

 透き通った綺麗な空、心地良い日差し、適度に吹き抜ける優しい風が、眠気を誘う気持ち良さを生き物に与えてくれてる中、13歳位の一人の少女が、何もな場所で尻餅をついていました。


 彼女は金色の髪を綺麗に伸ばし、蒼い瞳に涙を浮かべ濃い赤色のドレスとチュールスカートを土で汚しても尚、それさえ絵になる程に可愛らしくて綺麗な少女でした。


 そんな彼女の名前はエルシア。世界に隠された真実を追い求めて旅する魔女です。


 彼女は、北の最果てを目指して旅をしている所でした。


 いつも通りに心地良い空を飛んでいた時、何かにぶつかったエルシアは、対応が遅れて地面に落っこちてしまったのです。


 さて、おでこにタンコブを作って尻餅をつきながら、お尻を擦って涙目になってる少女、エルシアとは……私の事なのでした。なにこれ凄い痛い。



 ……はい、改めまして私です。エルシアです。


 私は今、何も見えない壁に激突して鼻血ブーな状況です。


 とりあえず立ち上がって周囲を見渡してみますが、建物どころか草木の1本すらありません……私は何にぶつかったんでしょう?。


 進行方向に手を突き出すと、確かに壁があります……でも上空では壁の向こう側まで雲が通過してるんですよね……雲と同じ高度なら進めるんでしょうか?。


 私は早速雲と同じ高度まで上がって、壁に突っ込んでみました。


 ビターン。


「うぶぁ!」


 見事に壁にぶつかった私は元居た場所まで落っこちて行きました。痛い。


 何とか地面まで落ちても無事だった私は、もうヤケクソで手当たり次第にナイフやら鎌やらシバキ棒やら魔法やらをぶつけてみました。



 ……1時間程経った頃でしょうか、今までの行動が意味を成さないと悟って諦めかけた私はテントを張って、明日には引き返そうと思いながらラーメンを啜っていました。


「うーん……”此処で終わり”なんですかね?ノヴァさんなら何か知ってますかね?」


 ズズー。


「ラーメン……飽きましたね。パスタが食べたいです」


 ズズズー。


「……はぁ、此処まで来たのに何も無いとか……辛すぎます」


 ピピピピッ。


 そんな独り言を呟きながら、具無しのインスタントラーメン(普段は醤油だけど今日は味噌味です)を食べる私の目の前で、見えない壁があった場所に、いきなり変な音が聞こえると、謎の文字が浮かび上がって変な声が聞こえてきたのです……え?何事ですか?。


「音声パスワード……確認シマシタ……隔壁ヲ解放シマス……1時間後ニ……隔壁ハ再ビ閉マリマスノデ……オ気ヲ付ケ下サイ」


「……?」


 何が起きてるのか分からない私を無視して、見えない壁は同じ言葉を繰り返しながら、徐々に紫色の光を放ち始めたのです。


「え?私……何かやらかしました?」


 まるで死んだ魚のような眼をした私は、やがて紫色の光に包まれました。



 次に目を開けた時、私の眼前には理解不能な光景が映っていました。……まぁさっきから意味分かんない事の連続なんですけどね。


 私の眼前に広がる光景……それは、見えない壁が裂けて、全く別の薄暗い空間が広がっていたのです。……まるで別の世界を見させられてるかの様な景色でした。


 でも不思議な事に、私はこの景色を懐かしく感じていました……。


 長い事この謎現象にボケーとしていた私に、再び変な声が催促をしてきました。


「10分後ニ……隔壁を閉鎖シマス」


「え?あ、あぁ……ちょっと待って下さい!今行きます!」


 私は大急ぎで荷物を纏めると、薄暗くて気味の悪い謎の空間に飛び込んでいきました。


 私が謎の空間に飛び込むのを確認したであろう何かは、再び変な声で喋ると、見えない壁に入った亀裂を修復する様に、ぴったりと閉じて行きました。


「……あれ?もしかして私……閉じ込められました?」


 ハハハッと乾いた声で笑った私は、仕方ないんで道なりに進み始めました。


 見た事も無い鉄の様な何かを避けながら進むと、またしても変な声がずっと先まで聞こえる位に話し始めました。


「北ブロック……侵入者ヲ確認……戦闘型アンドロイド……迎撃ニ向カッテ下サイ」


「あのー?さっきから何言ってるのか分からないんですけど?此処はどこですか?……聞いてます?」


 私が謎の声に問いかけると、正面から足音が聞こえてきました。良かった、まともな人だと助かるんですが……。


「侵入者発見!直ちに排除を開始する!」


 正面から走って来た団体の、先頭に居たメイドさんが何やら物騒な事を口走り始めました。……え?排除って……私?。


 剣や鎌、ハンマーや拳銃等を持ったメイドさんたちが、一斉に私目掛けて襲い掛かって来ました。


「ちょ!?何なんですか!私は戦う気なんて無いですよ!」


「貴女がどうだろうと、我々は貴女を排除する命令を受けている……だから殺す!」


「あーもう!私も死にたくないんで反撃しますよ!」


 メイドさんを躱しながら、私は仕方無くメイドさんの足をショーテルで斬り裂きました。


 しかし意外な事に、彼女たちはどれだけ斬られても怯む事無く……それ以前に血が出る事さえありませんでした。この人たち何なんですか!?。


 絶体絶命まで追い詰められた私は、既に全身傷だらけになっていて、手加減出来る状態では無くなっていました。


 やむを得ずにメイドさんの首を鎌で刎ねた私は、思わず絶句してしまいました。


 このメイドさん……頭を落としたのに動いてるんです!ちょっとしたホラーですよ!。


 本当に後が無くなった私は、魔法に雷を纏わせて、全てのメイドさんを巻き込むように電撃を周囲に放ちました。


「……ごめんなさい!」


 バチチチチッ。


 高威力の電撃を浴びたメイドさんたちは、黒い煙を体中から上げて一斉に動かなくなりました。


「はぁ……はぁ……他に追って来る気配も無いですね……今の内に離れましょう」


 私は足を引きずりながら、先の一切見えない道を、ひたすら突き進んできのでした……。

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