15節 貴重なデータと、夢の私と、壮大な記録

 はいはい、私です。


 ……ん?アホ毛の件は無いのかって?毎回ある訳無いじゃないですか。


 私たちは今、レジスタンスリーダーに教えてもらった場所に来ていました。何か情報のご褒美をくれるとの事でしたが、どんな情報なんでしょう……?。


 アンドロイドの残骸をかき分けつつ、此処にも建っていた旧世界の建物の中に入った私たちは、早速情報端末を起動させてみました。まぁ情報って言ったら此処しか考えられないですよね。


 起動を待つ事数分、流石に疲れの溜まっていてウトウトし始めていた私は、リノリスに後を任せて少し眠る事にしました。と言う訳で、いきなりですが、おやすみなさい。



 私は、夢を見ていました。寝ていても夢と分かる程に現実離れした夢……酷い夢ですが、不思議と私は嫌な夢では無いと思って見ていました。


 その夢では、寝ている私は、第3者視点とでも言うんですかね、少し離れた位置から大人になった私を見ていたんです……年齢は20歳位ですかね。


 結論から言うと、夢の中で大人になった私は死にます。通り魔に胸を刺されて、あっさりと殺されてしまいます。悔いは残らないと言えば嘘になりますが、それでも出来る限りの事をしてきて、娘にも一人で生きていく術を伝え、それでも生きていくのが困難だと思ったらユズを頼る事も教えてありました。……この大人になった私は、此処で死ぬことが分かっていたんじゃないかと思うくらいに用意周到ですね。


 と言うか、私の娘が居る事が現実離れの良い証拠ですね……名前はアヤカと言うそうです……旧世界に在った「漢字」を使って着けた名前…「秋夜華」だったと思います。


 恐らく旅を終わらせていたであろう大人の私は、アヤカと二人で王都から少し外れた街に住んでいました。裕福では無い物の、それなりに満喫してましたし……何より幸せでした。


 日に日に大きくなる娘に、大人の私は嬉しさと悲しさを感じながら、出来る限りたっぷりと愛情を注ぎ込みました。本当の親の愛情を知らないで育つ事の悲しさを知っていた私だからこそ、鬱陶しいまでに娘を愛していたんだと思います。


 悪さをする子では無かったんですが……尖った正義感を持つ子だったので、弱い者イジメをする年上を殴り倒して、度々大人の私は怒っていましたね……。


 何はともあれアヤカは私の娘……出来る事なら、この子が大人になるまで傍に居てあげたいとそう思ったのが、夢で感じた最後の感情でした……。



「エルシア様……そろそろ起きて下さい」


「ん……」


 私はリノリスに揺さぶられて目が覚めました、しかし夢の内容は鮮明に覚えています……こんな事は初めてですね。


「おはようございます、リノリス……起動は出来ましたか?」


「おはようございます、エルシア様。起動どころかデータの吸い出しまで終わりました」


「……データって吸えるんですか?」


「えーっと……エルシア様にも分かり易く言うならば、データの内容を私の完全に覚えてコピーした感じ……と言えば分かるでしょうか」


「まぁ何となくは……」


「それにしても複雑な表情の寝顔をされていましたが、どんな夢を見ていたのですか?」


「そんな微妙な顔してたんですね。……恐らく7年後の自分を第三者視点で見ていたんですよ。娘と過ごす幸せな日々……成長していく事に喜びを感じていましたね。そして、私が死んだ後の……彼女の案じ……それが夢で見た内容でした」


「という事は……エルシア様は20歳で亡くなられたんですか?」


「夢の中では……ですけどね。所で、早速ですがデータの内容を教えてもらっても良いですか?」


「かしこまりました。モニター機能は壊れていたんで、私が口頭でデータの内容をお話させてもらいます」


「お願いします」


 こうして、私はリノリスからデータの内容を教えてもらうのでした。


 しかしこのデータ……確かに私が欲しかった情報の1つですね。しかも詳細に書かれた記録のみたいです。



 新西暦1939年……人類は愚かにも再び戦争を始めた。彼等は旧世界で何も学ばなかったのだろうか?。


 今度の戦争は、新大日本帝国と世界中の国の戦いになった。一応第二次世界大戦という事になるだろう。


 新日本は唯一この世界で核の使い方を理解している科学者の揃った国……それを切り札に世界中の国に向けて宣戦布告をした。


 新日本の脅威を感じた各国は一時共闘をする事になり、連合国家アメリカを名乗って新日本へ進軍した。


 しかしそれでも新日本の脅威を拭いきれなかったアメリカは、拠点を増やしながら新日本を攻める隙を伺っていた。それを察知した新日本は、死刑囚などの極悪人から名前と国籍を取り上げて最前線に放り込み始めた。5年戦い抜けば国籍を返して罪を帳消しにする……と言い残して。


 人並みの生活を再び手に入れられるチャンスと思った名無し達……通称「家畜」……正規軍人達からそう呼ばれていた彼等は、必死に戦った。しかし与えられる武器は殆ど戦えない物で、食料もまともに届かない……そんな中で5年も生き残るものは居なかった。


 しかし、その環境が大きく動く出来事が起こる。結果として彼等の所為で新世界は荒廃してしまったが、誰も彼等の勇士を恨む事は出来ないだろう。


 戦争が始まって5年経った頃、1つの家畜達の部隊に戦歴5年目の少女が三人も居た。現在の環境的に、最前線で戦えば1週間で死に、戦わなくても3週間で餓死する……そんな最前線の最も戦闘回数の多い部隊に……だ。


 何としても罪人達に名前と国籍を戻したく無かった軍上層部は、新人の軍人で戦争も体験した事が無い少年に、猛者が集まる部隊の指揮を任せて崩壊を待った。


 しかしこの少年……名をナオトと言う弱冠15歳の新人エリートは、誰もが予想しなかった行動で前線部隊を助けた。


 何と自身も前線基地に移動して、直接指揮を取り始めたのだ。


 そしてこの基地での内容は、何処にも記載や音声等が残っていない為不明のままだが、何処から持って来たのか分からない、もしかしたらナオトの私物かも知れないカメラで撮られた和気あいあいとした姿の少年少女が映った写真だけが、唯一の痕跡だった。


 そして、ナオトが前線基地で戦い始めてから約2年後……アメリカが本格的に攻め始めて来た。何処から手に入れたのか、術式を使う兵士まで出始めていた……。


 しかしナオトの指揮の下、アメリカの部隊を一掃する事に成功した彼女達は、本格的に核ミサイルを使う準備を進める新日本を止める為に離反、ナオトが指揮を取る骸骨の心スケルトンハートと呼ばれた部隊の攻撃目標は、意外にも新日本……母国に向けられたのだった。


 結果として、核を止める事が出来ないと判断した部隊一同は、被害を最小限に食い止める為に国内で核を爆発させる事を決意し実行……こうして他国は無事ながら、新大日本帝国は地図から消える事になったのだった。



「以上になります」


「……骸骨の心、か。何だか思ってたよりも壮絶な話でしたね……」


「そうですね……どうして人類は戦いたくないと言いながら戦争をするのでしょうね……」


 うーん、何だか暗い雰囲気になっちゃいましたね……。


 まぁ何はともあれ、情報を手に入れた私たちは、神を倒して北ブロックを破壊する為に戦略的なアンドロイドが居るレジスタンスの拠点へ戻って行くのでした……。

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