5節 北ブロックを旅する私と、テロリストと、神の行方

 はい、私です。エルシアです。


 私たちは、神にお仕置きをする為に安全地帯を飛び出したんですが……そう言えば普段は何処に居るのかが分かっていませんでした。なんてこったい。


 ……え?お前は全ての記憶を見たんだから居場所位は分かるだろうって?私が見た記憶に神は含まれて無いですよ。それに見た記憶だって必要そうな事だけを掻い摘んで見ただけですし。


 まぁそんな訳で、まずは神を探す事から始めないといけなくなった私は、この北ブロックを見回って、それから考える事にしました。


 そして私たちが居た安全な場所は、どうやらエリア86の近くだったみたいですね。


 さて、これから向かう先なんですが、思った以上に北ブロックは広そうなんで、目に留まった施設などを片っ端から見ていく事にしました。


 リノリスの話では、此処から少し東方向に、エリア86と似た街があると教えてもらったんで、まずはそこに向かいましょうかね。


 こうして私たちは、北ブロックを回る旅を始めるのでした……。



 旅を始めて数日経った頃、私たちはエリア86に似た街とリノリスが言っていた所に到着しました。どうやら此処もアンドロイドが生活をしてる場所みたいですね。……ただリノリスの話では、此処のアンドロイドは危険個体として神にも認識された方たちが暮らす場所らしく、警戒は解かない様に言われました。


 何でも此処のアンドロイドは、知能の他に感情を持ったプロトタイプと言われる種類らしく、時折指示に疑問を抱いたり自身の正義感に反する命令を受け付けなかったりと人間くさく、改良型の今使われてるアンドロイドが出来上がった際に一斉廃棄しようとしたんだと。ですが、それを拒否して非人道的な行為を繰り返す神やその傀儡にされているアンドロイドを破壊する事を目的にした彼女たちは、武力を行使してその場を脱出、以降は隙を伺って神を抹殺しようとテロリスト紛いな行動を繰り返す集団らしいです……おっかないですね。


 因みにリノリスを含むプロトタイプのアンドロイドは、例え命令に逆らった事は無くても廃棄される予定だったらしいです。彼女の友人であったミュエールもそういった理由で破壊されてしまったらしいですよ。……あれ?ミュエールって武器の名前じゃなかったんですかね?。


 話を聞いてみると、リノリスの銃はミュエールの破壊された部品を使った武器らしいです。IAチップも搭載している為、知性や記憶を失ってしまっているけど、攻撃のサポートはしてくれるんだとか。あの分離した銃の姿勢制御はミュエールが行ってるみたいですね。


 さて、街に入った瞬間、早速アンドロイドたちに拘束されてしまった私たちでしたが、事情を話したらすんなりと受け入れて解放してくれました……チョロいですね。


 此処は神と対立するアンドロイドが住んでる場所という事なので、街のリーダーの様なアンドロイドに神の居場所を聞いてみました。


 神は普段、上の次元に住んでいるらしく、何かしらの理由が無いと降りて来ないらしいです。


 ふむ……困りましたね。それなら神をおびき寄せる秘策が無いと相手にもされないって事ですよね……うーん。


 リーダーの家の中で椅子に座りながら、アレでも無いコレでも無いと作戦を練る私の耳に、何やら警報の様な音が聞こえてきました……何事でしょう?。


 辺りを見回す私に、アンドロイドリーダーが話しかけてきました。


「貴女はエルシア……だったよね」


「えぇ、どうしました?この音は何ですか?」


「お人形さんが攻めて来たんだよ。定期的に攻める様に神に命令されてるみたいでさ、ちょくちょく私達にちょっかい掛けて来るんだよ」


「……手を貸しましょうか?」


「うん、そうしてほしいって頼もうと思ってた所。部外者なのに申し訳ないけどね……」


 困った様な顔のまま笑って見せたリーダーは、確かに人間の様でした。



 戦闘する為の支度を整えて家の外に出た私は、予想外の光景に開いた口が塞がらなくなっていました。


「アレって……A・Aですか!?」


「そう……旧世界にあった対人対魔物用強化兵装、通称A・A。……かつての英雄が作り上げた装備だってナンバー0のアンドロイドのメモリには記憶されてたね」


「ナンバー0って何です?」


「旧世界で最初に作られた戦闘型アンドロイドの事だよ。そこのリノリスも含めて、私達はナンバー0の後継機なの」


「へぇ……」


 さてさて、戦闘に参加した私たちですが、飛んでる相手となると戦う術が殆どありません……仕方ないですね、燃費は悪いですが雷球で戦いましょう。


 とは言え相手はA・Aです、もしかしたら術式を使った攻撃をして来ないとも限らない。落ち着いて早急に倒しましょう……地上に居れば纏めて感電させられたのに……あ、それじゃテロリストの皆も巻き込んじゃいますね。


 まぁそんな感じで、私はチマチマと雷球で撃ち落としながら、攻撃をひたすら避けて戦うのでした……。



 はい、戦闘から数十分後、思ってた以上に楽勝でした。いえい。この程度の相手なら何体来ても負ける気がしないですね。まぁ私は貢献度ワースト1位だったんですけど……。


 だって仕方無いじゃないですか、術式が掠ったら瀕死レベルの重症っていうオマケがもれなく付いて来るんですよ。結局術式は使って来なかったんですけどね……。


 それにしてもミュエールって便利そうですね……ビュンビュン飛んでってバシバシ撃ち落とす姿は爽快感すら覚えました。ってかリノリス一人で良かったんじゃないのと思う位に無双してましたね。


 そんな訳で襲撃を凌いだ私たちは、改めて神をおびき寄せる作戦を考え始めました。


 そして色々と考えた結果、現在神に仕えているアンドロイドを殲滅して、急に連絡が取れなくなった事に危機感を覚えた神が、この次元に現れるのを待って、それから全員で纏めでフルボッコにする感じで纏まりました。何とも物騒なやり方ですが、1番手っ取り早そうでもありますね。


 そうと決まれば神側のアンドロイド……呼び方が面倒なんで今後は人形と呼びましょうかね。彼女たちを殲滅する為に、他の場所に居るテロリストたちに応援を頼みに行く事になりました。


 此処を離れられないリーダーたちに代わって応援を頼みに行く役を引き受けた私は、彼女から地図を受け取りました。どうやらこの辺り一帯の地図らしいですね、幾つか赤丸で囲ってありますが、此処に他のメンバーが居るって事なんでしょうね。


 こうして私とリノリスは、他のテロリストと会う為に、この場所を後にするのでした……。

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