「ゴジラの逆襲」(1955)……これが史上初の着ぐるみ怪獣バトルだ

製作国:日本

監督:小田基義

特技監督:円谷英二

脚本:村田武雄、日高繁明

原作:香山滋

製作:田中友幸

出演者:小泉博、若山セツ子、笠間雪雄他


 「ゴジラ」公開後、東宝は早速続編の制作に着手。前作からわずか半年後に公開されたのが、第二作「ゴジラの逆襲」である。

 本作で登場するゴジラは、前作とは別個体。山根博士の言葉通り、二体目が存在したということだ。このゴジラは、怪獣図鑑等では「二代目ゴジラ」と呼称され、以降の昭和シリーズのゴジラはすべて同一個体として扱われている(設定上の矛盾やデザインの差異はあるが……)。


 そして今回はゴジラに加えもう一体の怪獣が登場する。それがアンギラスだ。ゴジラと同じく太古の巨大生物で、正式な学名はアンキロサウルス(ただし実際のアンキロサウルスとは似ても似つかない)。四足歩行で、背中に無数のトゲが生えた甲羅を背負っている。非情に凶暴な正確であり、他の生き物をすべて敵とみなして襲いかかっていく。また脳が体のあちこちに分散しており、巨体に似合わぬ敏捷さを持つという。

 映画冒頭、無人島に不時着したパイロットとそれを救助しに向かった主人公が、ゴジラとアンギラスの戦いを目撃するところから物語が始まる。これが映画史上初の、怪獣同士の戦いを描いたシーンでもある。

 やがて二体は戦いの舞台を大阪へと移し、凄絶なバトルを展開する。さてこの戦闘シーンだが、前作のような重量感あふれる描写とは打って変わって、やたらとチャカチャカした早回しのような映像になってしまっている。これは当時の撮影助手が撮影速度を間違えてしまったせい。本来なら撮り直しとなるところを、円谷英二が「野獣の格闘らしくて面白い。この動きでいこう」と判断したため、最後までこのスピードで撮影されることになった。またこの二体の戦闘スタイルも、お互いに相手の喉笛を執拗に狙うという野性味溢れるもので、以降の怪獣映画ではなかなかお目にかかれないものだ。怪獣対決の様式が確立される前ならではの見どころである。ちなみにゴジラは口から吐き出す白熱光という飛び道具を持ってはいるが、後年の強力な光線技とは違って、アンギラスを怯ませる程度の効果しかない。そのためゴジラも噛みつきでトドメをさしている。


 ゴジラ対アンギラスの戦いは中盤で決着が着く。それ以降は防衛軍によるゴジラ撃退作戦が繰り広げられる。最終兵器オキシジェン・デストロイヤーを失った人類はいかにしてゴジラに立ち向かうのか、が後半の肝だ。本作は人類が現実的な兵器だけでゴジラに勝利した、稀有な作品でもある。


 見るべきところの多い作品ではあるが、なんだか地味な印象を持たれているようで、あまり顧みられることがないのがもったいないところだ。まあシリーズとしては初代「ゴジラ」と人気作「キングコング対ゴジラ」に挟まれているし、アンギラスの途中退場も物足りなくはあるが、それでも怪獣映画の歴史を語る上で欠かせない一本であることには間違いない。

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