「ガメラ対大悪獣ギロン」(1969)……惑星テラで待ち受ける宇宙ギャオスと凶器怪獣

製作国:日本

監督:湯浅憲明

製作:永田雅一

企画:仲野和正

脚本:高橋二三

撮影:喜多崎晃

美術:井上章

編集:宮崎善行

音響効果:小島明

音楽:菊池俊輔

特技・合成:金子友三

特技・操演:金子芳夫

特技・美術:矢野友久

特殊撮影:藤井和文

出演:加島信博、秋山みゆき、クリストファー・マーフィ他


 明夫少年は友人のトムとともに、裏山へ着陸した宇宙船を発見する。好奇心のままに船内へ足を踏み入れると、宇宙船は二人を載せたまま飛び立ってしまった。二人を助けに来たガメラをも振り切って、宇宙船は第10惑星テラに降り立った。そこは高度な文明を持ちながらも荒廃し、宇宙ギャオスが跋扈する死の星であった――。


 ガメラ映画第5作。前作「対バイラス」のヒットにより制作が決定した。今回は地球ではなく太陽系第10惑星テラが舞台。ゴジラとは違い、ガメラは宇宙空間で活動可能なことがすでに描写されているので、別の惑星に進出するのもそこまで突飛には感じない。公開当時は米ソの宇宙開発競争が加熱していた時代であり、アメリカでは「2001年宇宙の旅」(1968)「猿の惑星」(1968)といったSF映画がヒットしていた。本作もまたアメリカ側の興行主の要望によって、宇宙を舞台とした作品になったのである。


 惑星テラでまず現れるのは、宇宙ギャオスである。これは「対ギャオス」時の着ぐるみを銀色に塗り直したもので、能力などは地球産ギャオスと変わりがない。宇宙ギャオスは複数存在している。平成以降の作品では群れで登場するのが恒例となっているが、初めて複数のギャオスを登場させたのは本作である。


 宇宙ギャオスと対決するのはガメラ……ではなく、新怪獣のギロン。体の半分が包丁というかなり思い切ったデザインで、そのインパクトは怪獣映画史上屈指。見るからに悪くて危なそうな、大悪獣の名に恥じない見た目である。

 ギロンはその頭部の刃で宇宙ギャオスの超音波メスを反射し、さらには大ジャンプからの一刀両断でギャオスを葬ってしまう。「対ギャオス」でガメラを散々苦しめたギャオスが一瞬で敗れてしまうのはなかなかショッキング。しかしそれだけギロンの強さが強烈に印象づけられる。こうした過去の強敵を噛ませ犬にする手法を怪獣映画に持ち込んだのはこれが初めてであり、実は敵怪獣vs敵怪獣の戦い自体も初。ゴジラシリーズでも前例のない戦闘であった。


 ガメラとの対決でも、頭部の刃を武器にして戦い、分厚い甲羅に傷をつけるなど、その切れ味の凄まじさを窺える。さらには頭部から手裏剣を射出、ガメラの皮膚を切り裂いたり、また手足に突き刺すことで手足を引っ込められなくする=飛行能力を封じると言った悪賢さも発揮している。しかし飛行能力を取り戻したガメラには敵わず、最後には自身の刃と手裏剣発射孔がアダになって倒されてしまう。全身武器の体は、まさしく諸刃の剣であった。


 さて今回のガメラだが、もはや完全に子供を助けるためだけのキャラクターと課している。エネルギー源を求めて行動するという設定は消滅し、子供を助けるため宇宙に飛び出し、子供の祈りに応えて惑星テラまで飛んでいく。「対ギャオス」時にはガメラを呼ぶために山をまるごと焼いていたが、もうそんなことをする必要もない。呼べば来るのだ。さらに鉄棒で大車輪を披露したり、細長い岩石を逆手に持ってギロンの手裏剣を弾き返したりといった擬人化めいた描写も増え、しまいには壊れた宇宙船を溶接して修理するという器用な芸当も披露。もうなんでもありである。しかし大事なのは理屈ではないのだ。この奔放さがガメラシリーズの武器である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る