「ガメラ対大魔獣ジャイガー」(1970)……シリーズ最強の怪獣が大阪万博を襲う

製作国:日本

監督:湯浅憲明

製作:永田秀雅

企画:仲野和正

脚本:高橋二三

撮影:喜多崎晃

美術:井上章

編集:宮崎善行

音響効果:小島明

音楽:菊池俊輔

特技・合成:藤井和文

特技・撮影:金子友三

特技・助監督:阿部志馬

特技・操演:田中実

特技・美術:矢野友久

出演:高桑勉、ケリー・バラス、キャサリン・マーフィ他


 1970年の最大のトピックといえば日本万国博覧会、通称大阪万博である。日本の経済成長を世界にアピールする一大国家プロジェクトであり、77カ国が参加、半年間の開催期間中に6000万人以上が訪れたという。日本人の半分以上が来場した計算だ。当時の日本はまさしく万博一色だったのである。

 本作はそんな万博とタイアップ。万博に湧く大阪が舞台となり、建設中の会場でロケが行われたり、パビリオンのミニチュアが制作されたりした。本編中でも万博のロゴがそこかしこに登場し、万博に関する解説が挟まれる。ただ、最初からタイアップが予定されていたわけではない。当時の少年雑誌ではムー大陸やインカ帝国を取り上げた特集が盛んに組まれており、本作もそのブームに乗じて古代文明をモチーフにすることになっていたのだ。結果的に、人類の進歩と調和をテーマにした大阪万博と、古代文明の遺産という両極端な要素が融合した作品となった。


 物語の鍵となるのは、ウェスター島に存在する巨大な石像「悪魔の笛」。この石像を万博で展示するために日本へ輸送しようとしたところ、それを妨害するかのようにガメラが出現。ガメラの妨害をかいくぐり、石像は無事に搬出されるが、石像のあった場所から怪獣ジャイガーが復活。石像はジャイガーを封印するためのものだったのである。


 ジャイガーは四つ足の怪獣。バルゴンやギロンのように膝を地面に着けたハイハイ体勢ではなく、後ろ足を真っすぐ伸ばした正しい四足歩行である(ただしスーツアクターは大変)。トリケラトプスとブルドッグを足して二で割ったような、味わい深い見た目をしているが、外見とは裏腹にかなりの芸達者。角の先から発射する「固形唾液ミサイル」、広範囲を一瞬で焼き尽くす「マグネチューム光線」、両手両足には何でも吸い寄せる「マグネチック吸盤」といった武器を持ち、さらにエラからのジェット噴射で空中浮遊も可能。初戦では固形唾液ミサイルをガメラの四肢に突き刺して飛行能力を封じ、そのままガメラをひっくり返して勝利。さらに第二戦でも、ミサイル対策をとられて若干劣勢となるが、一瞬の隙を突いてガメラに卵を産み付け、行動不能にしてしまう。ジャイガーはガメラに対して二度も勝利を収めており、まさにシリーズ最強クラスの実力者なのである。


 日本人と白人の少年コンビが主役となっているのはもはや恒例だが、SF要素の濃かった前作前々作とは異なり、今作はオカルト色が強く、また「対ギャオス」以来、久々に大規模な都市破壊シーン、自衛隊と怪獣との攻防が描かれている。ガメラの描写も、火山の噴火へと本能的に引き寄せられるなど、初期の設定が復活。また、ガメラは子供の味方だと言及される場面はあるものの、今までのように露骨に子供を助けるような行動はなく、ジャイガー討伐に終始している。他にも子供らが対策本部を仕切ったり、学者がわけのわからん理屈を開陳するなど、全体的に「対ギャオス」以前に回帰したような作風である。しかし同時に「対バイラス」以降の、少年の冒険活劇要素も取り込まれており、ガメラの肺に寄生する幼虫ジャイガーを撃退すべく、ガメラの体内に突入するといった場面も。子供を助けてきたガメラが、今度は子供に助けられるというわけだ。余談だが、ギョウ虫などの寄生虫は当時まだ身近な問題であり、これも万博と同じく世相を反映したネタだと言えなくもない。


 以上のように、本作はシリーズ初期と後期のいいとこどりをしたような内容で、前作よりも予算が大幅に増額されたおかげで特撮も見ごたえのあるものに仕上がっている。ジャイガーの強さにも圧倒される。しかしこのジャイガー、強さの割にいまいち人気がないような気が。ギロンのような、わかりやすいデザインが必要だったのだろうか。

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