「ゴジラ対メガロ」(1973)……君が主役だジェットジャガー

製作国:日本

監督:福田純

製作:田中友幸

原作:関沢新一

脚本:福田純、関沢新一

撮影:逢沢譲

美術:本多好文

編集:池田美千子

音楽:真鍋理一郎

特技・合成:三瓶一信

特技・撮影:富岡素敬

特技・操演:小川徹

特技・美術:青木利郎

特技監督:中野昭慶

出演:佐々木勝彦、川瀬裕之、林ゆたか他


 ゴジラシリーズ第13作。東宝チャンピオンまつりの一本で、前回で確立された「悪の侵略者vsゴジラ」の構図を踏襲している。登場怪獣は新怪獣メガロ、ガイガン、そして人型ロボットのジェットジャガー。前年の初お披露目からたちまち人気者となったガイガンが二作連続での登場となった。着ぐるみはゴジラともども新造されており、よく見ると顔が少し縦長になっている。


 今回の敵となる新怪獣メガロは、シートピア海底王国の守護神という設定。カブトムシをベースに様々な昆虫の特徴を取り入れたデザインで、これは当時の子供たちの間で昆虫がブームになっていたのを反映させたもの。さらに両腕はドリルになっており、これもまた男子の心をくすぐる要素である。

 シートピア海底王国は、地上人類の核実験によって崩壊の危機に瀕しており、地上への報復のためにメガロを差し向ける。すなわち海底王国及びメガロはゴジラと同じく核実験によって安息を脅かされている者であり、ゴジラは自らと同じ境遇にある者を敵として倒さなければならないのだ。児童向けとはいえ痛烈な皮肉の込められた物語である。しかし劇中では両者の関係性は一切掘り下げられることはなく、あくまで明るい娯楽作としての体裁を保っているので、初代や「対ヘドラ」のような重苦しさは皆無である。そもそもゴジラが核実験の被害者だという設定などもうなかったことになっているような気もするが。


 さて、本作のタイトルは「ゴジラ対メガロ」だが、真の主役は別にいる。それが電子ロボット・ジェットジャガーだ。ジェットジャガーはロボットではあるものの、当時大ブームとなっていた変身ヒーローを多分に意識したキャラクターである。ジェットジャガーのデザインは公募によるものだが、採用された作品からは大幅な変更が加えられている。

 ジェットジャガーの製作者は科学者の伊吹吾郎(弟の名前は六郎という。六人兄弟なのか?)。身長は180センチで、コンピュータによる遠隔操作で動き、空を飛ぶことも可能。劇中ではシートピア海底王国にコントロールを奪われ、メガロの水先案内人として利用される。しかし海底王国からの支配から逃れたあとは、正義の心に目覚め、いきなり巨大化し、メガロと交戦する。この巨大化はもともと搭載されていた機能などではなく、なぜか勝手に巨大化したもので、その理由は作中でもろくに語られない。荒唐無稽と言ってしまえばそれまでだが、この「勝手に巨大化するニヤケ面のロボット」という唯一無二の個性によって、ジェットジャガーはその名前を特撮史に刻みつけたのである。硬派なマニアからは苦言を呈されることもなくはないが、根強いファンも多数おり、良くも悪くも一度見たら忘れられないインパクトを持っているのは間違いない。ちなみに戦闘終了後はまたもとのサイズに戻る。こちらもまた仕組みは不明である。不明といえばジェットジャガーというネーミングも意味不明であり、ついでにいうとデザイナーが誰なのかも不明だという。この意味不明さもまたマニアの関心を惹きつけてやまない。


 本作は低予算&短期間も極まれりという制作体制で、実質的な撮影期間は三週間ほどしかなく、出演者も最低限の人数に抑えられている。特撮シーンもその多くが使い回しで、メガロが暴れるところはどこかで見た映像のオンパレードである。四大怪獣が入り乱れる最終決戦も、前作以上に何もない荒野での戦いで、安っぽさは否めない。しかし限られた予算を注ぎ込んだダム襲撃シーンは見事な出来で、巨大なセットが大量の水とともに崩壊するさまは一番の見せ場である(メガロが水圧に負けて流されていくのはご愛嬌)。しかしこうした特撮スタッフの意地も、なりふり構わないテコ入れも、残念ながら結果には結びつかず、観客動員数がシリーズで初めて100万人を下回り、昭和ゴジラの末期的状況を象徴する一本となってしまった。

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