「猿人ジョー・ヤング」(1949)……さらに進化したコング映画第3弾

原題「Mighty Joe Young」

製作国:アメリカ

監督:アーネスト・B・シェードザック

脚本:ルース・ローズ

製作:ジョン・フォード、メリアン・C・クーパー

撮影:J・ロイ・ハント

音楽:C・バカライニコフ

出演:テリー・ムーア、ベン・ジョンソン、ロバート・アームストロング他



 RKOが「コングの復讐」以来16年ぶりに公開した、巨大ゴリラ映画の第三弾であり、初代「キング・コング」のセルフリメイク的作品。スタッフも初代を手がけた面々が再結集しており、特撮もウィリス・オブライエンが担当している。


 ただしオブライエンは様々な事情からスーパーバイザーとしての地位に収まることを余儀なくされ、アニメーション制作にはほとんど関わっていない。そんな彼の代わりにアニメーションの多くを担当したのが、レイ・ハリーハウゼンであった。初代「キング・コング」に強い影響を受けた彼は、十代の頃からストップモーション作品の自主制作を始め、高校時代にはオブライエンとの面会を果たしている。そんな彼が本作において、オブライエンの下でチーフアニメーターとして働くこととなったのである。彼は後に「原子怪獣現わる」や「シンドバッド」シリーズでヒットを飛ばし、オブライエンの後を継ぐストップモーションアニメの名手として名を馳せることとなる。


 本作のコングは三作の中ではもっとも小柄で、身長は三メートルほど。しかしそのアニメーションは今まで以上に細やかで、喜怒哀楽の表情が豊かに表現されている。また実写映像と合成した際に表面がチラつく、といった問題を回避するため、透明のラテックスを利用するなどといった新たな工夫も凝らされて、合成の自然さ、そして生物としてのリアルさも格段に進歩している。


 また人間とコングの絡みが多いのも本作の特徴だ。投げ縄でコングを捉えようとするシーン、レスラーたちと力比べをするシーンなど、ごく自然に人間と人形の演技が融合している。よっぽど緻密な計算をしなければ成り立たないだろう、というのは素人目に見ても明らかだ。

 特にコングがクラブ内で暴れまわるシーンは、ライオン、ミニチュア、実物大のセットを組み合わせたたいへん複雑なもの。終盤の孤児院のシーンなども今見ても色あせないクオリティだ。しかし映像が素晴らしい分、制作期間と予算はかなりかかってしまったようで、映画はヒットしたものの赤字に終わってしまった。ただ特撮は高く評価され、アカデミー最優秀特殊効果賞が与えられている。


 ストーリーは「キングコング」のプロットをベースにしているが、コングが生息しているのは南の島ではなく、アフリカであり、コングの友達(飼い主)である金髪白人の美女も登場する。今回のコングはこの女性に頭が上がらず、またラストでは子供を助けるために活躍するなど、親しみやすくヒロイックなキャラクター性となっている。そして初代「キングコング」のコングは悲劇的な末路を迎えたが、今回はカラッと気持ちのいいハッピーエンド。明るい作風に仕上がっている。


 1998年には、本作のリメイクである「マイティ・ジョー」が公開された。テリー・ムーアとハリーハウゼンがカメオ出演している。

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