「シン・ゴジラ」(2016)……会議は踊る!リアル怪獣災害シミュレーション

製作国:日本

総監督:庵野秀明

監督:樋口真嗣

製作:市川南

エグゼクティブプロデューサー:山内章弘

プロデューサー:佐藤善宏、澁澤匡哉、和田倉和利

ラインプロデューサー:森徹、森賢正

脚本:庵野秀明

撮影:山田康介

美術:林田裕至、佐久嶋依里

編集:庵野秀明、佐藤敦紀

音響効果:野口透

音楽:鷺巣詩郎

音楽プロデューサー:北原京子

美術デザイン:稲付正人

特技監督:樋口真嗣

照明:川邉隆之

VFXスーパーバイザー:佐藤敦紀

装飾:坂本朗、高橋俊秋

録音:中村淳

整音:山田陽

VFXプロデューサー:大屋哲男

特殊造形プロデューサー:西村喜廣

スクリプター:田口良子、河島順子

准監督:尾上克郎

特技総括:尾上克郎

プロダクション統括:佐藤毅

アニメーションスーパーバイザー:佐藤篤司

カラーグレーダー:齋藤精二

総監督助手:轟木一騎

出演:長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ他


 2014年の「GODZILLA ゴジラ」の公開を受け、東宝は本家ゴジラの復活を決定。「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズの庵野秀明が総監督と脚本に、平成ガメラ三部作や実写版「進撃の巨人」等で日本特撮界の最前線に立つ樋口真嗣が特技監督に起用された。庵野は国産ゴジラを復活させるにあたり、各方面への綿密な取材を敢行。怪獣ファンなら一度は考えたことがある「現代日本に巨大生物が現れたら、実際どうなるのか?」を徹底的にシミュレートし、怪獣災害という空想の産物を、最大限のリアリズムをもって描き出すことに挑んだ。その結果として、物語がほぼ首相官邸内で進行するという、怪獣映画としては異例の作品となり、怪獣出現という前例のない自体に対処するための役人たちの政治ドラマの様相を呈している。

 政治ドラマなどというと小難しく思われるだろう。しかし非常事態にもかかわらず、会議や総理レクチャーといった「民主主義的な手続き」を経なければ何も出来ない政府の様子をシニカルに描き出し、本来退屈なはずの会議シーンをシリアスギャグに仕上げているのだから見事である。思わず笑いが溢れるが、しかしこれが現実的な対応なのだ。いつものゴジラ映画ならいつのまにか住民の避難も完了していて自衛隊もほいほい出動しているが、本作ではそこに至るすべての過程を現実の法律や制度の通りに描いている。あらゆるディテールにこだわった作劇は、まさに我々怪獣ファンが待ち望んでいたリアル怪獣災害シュミレーションである。 


 ドラマパートの話ばかりしてしまったが、特撮パートがないがしろにされているわけではない。ゴジラは物語冒頭から登場し、東京を混乱の渦に叩き込む。本作のゴジラのデザインは「完全生物」というコンセプトのもと、初代ゴジラをイメージしつつ、全身各部の赤い発光や、乱杭歯や不揃いな爪などの生物としての歪さを盛り込んだ、どこかグロテスクささえ感じさせる外見で、一切の感情移入を拒ませる。また本作では、国産ゴジラとしては初めてフルCGで演出され、着ぐるみが存在しない(そもそも人が入ることを想定しない体型である)。モーションキャプチャーを担当したのは狂言役者の野村萬斎で、ゴジラの手が上を向いているのも野村のアイデアだという。

 本作のゴジラはまさしく破壊神と呼ぶべき存在。初上陸時からその恐怖は凄まじく、物語が進行していくにつれて絶望感も増していく。政府の対応がどうしようもないので、その脅威もより生々しく伝わってくるのである。自衛隊との戦闘シーンは主に昼間で、ほぼ夜間の登場だったギャレゴジとは異なり、明るい場面でゴジラの姿をじっくり拝むことができる。明るいシーンではCGの粗が目立ちやすいと言われるが、特にそうは感じられず、ハリウッド版と見比べても見劣りはしない。そして初めて放射火炎(本作では「放射線流」と呼称)を吐くシーンのインパクトたるや凄まじい。ゴジラというキャラクターに現代的な新解釈を加え、初代ゴジラを観た人が味わったであろう驚きと興奮を今この時代に具現化してみせたこの映画は、まさに真ゴジラであり、新ゴジラでもある。


 本作は大ヒットを記録、ギャレゴジの国内興行成績を上回り、さらに「ゴジラvsモスラ」の観客動員数を抜いて平成のゴジラ映画では最大級のヒットとなった。最終的には550万人以上の観客動員数を記録。「ゴジラファイナルウォーズ」が目標にしていた「シリーズ累計観客動員1億人」を12年越しに達成した。

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