死ぬまでに見たい怪獣映画

「GODZILLA ゴジラ」（2014）……新たなる怪獣王サーガの始動

原題「GODZILLA」

製作国：アメリカ

監督：ギャレス・エドワーズ

製作：トーマス・タル、ジョン・ジャシュニ、メアリー・ペアレント、ブライアン・ロジャーズ

製作総指揮：パトリシア・ウィッチャー、アレックス・ガルシア、坂野義光、奥平謙二

原案：デヴィッド・キャラハム

脚本：マックス・ボレンスタイン

撮影：シーマス・マッガーヴェイ

視覚効果監修：ジム・ライジール

プロダクションデザイン：オーウェン・パターソン

衣装デザイン：シャレン・デイヴィス

編集：ボブ・ダクセイ

音楽：アレクサンドル・デスプラ

出演：アーロン・テイラー＝ジョンソン、渡辺謙、エリザベス・オルセン他

　2004年の「ゴジラファイナルウォーズ」を最後に、ゴジラシリーズは終了の運びとなったが、それ以降もゴジラ新作に向けての動きは絶えず続いていた。それを主導したのが「ゴジラ対ヘドラ」の監督、坂野義光である。坂野は2003年、トライスターから海外でのゴジラ映画の権利が戻ってきたことを知り、かねてからの悲願だった「ゴジラ対ヘドラ」の海外リメイク企画を立ち上げる。その後、アトラクション向けの大型映像から３D映画への方針転換など紆余曲折を経て、最終的にはレジェンダリー・ピクチャーズが制作を請け負うことになった。監督に抜擢されたのは、「モンスターズ/地球外生命体」（2010）という低予算のモンスター映画で高い評価を得たギャレス・エドワーズ。ギャレスにとっては初の大作映画の監督であった。ちなみに本作はギャレスの名をとって「ギャレゴジ」もしくはレジェンダリーから「レジェゴジ」などと呼称される。また脚本には、ノンクレジットだがフランク・ダラボンも参加している。

　ハリウッドでの再リブートにあたり、ゴジラの設定は一新。今までのゴジラは核実験の影響によって出現したことになっており、エメゴジでさえもそこは変えなかった。しかし今回のゴジラは古代の巨大生物であり、当時の生態系の頂点に君臨していた最強の怪獣王という設定。地球の奥深くに潜んでいたが、核実験の影響によって地上の放射能濃度が高まると、再び地表へと上がってくる。20世紀半ばからその存在を確認されていたが、秘密結社「モナーク」によって一般には秘匿され続け、政府は核実験の体を装って、核兵器によるゴジラ抹殺を謀っていた――という、今までのゴジラではなしえなかった大胆な設定変更が行われている。デザインは日本版をベースに、クマみたいなずんぐりむっくり体型。エメゴジとは異なり、放射熱線も標準装備している。

　さらに今回はゴジラだけでなく対戦相手の新怪獣、ムートーも登場。ゴジラと同じく古代に生息していた怪獣で、劇中ではオスメスのつがいで登場する。オスは羽を持ち飛行が可能、メスはオスよりも巨大で、ゴジラと同等の体格。もともとゴジラと敵対していたという設定で、ハワイ、サンフランシスコで戦闘を繰り広げる。

　ゴジラのリブートといえば誰しもが初代ゴジラ路線でいくものだと思いこんでいたが、その裏をかいた怪獣バトルエンタメ映画である。ゴジラの設定を変えたおかげでゴジラの出自に暗さがなく、平成VSシリーズやチャンピオンまつり時代のような怪獣王としてのゴジラが全面に押し出され、また「大自然の調停者」などとも呼ばれるように、今までのゴジラと比べて壮大な存在となっている。ハリウッドから世界へと再発信されるにあたり、よりワールドワイドなキャラクターになったといえる。一方でゴジラシリーズの持つ「文明への警鐘」というテーマもないがしろにはされていない。初代ゴジラのような直截的な反核メッセージこそないものの、自らが生み出した核兵器に翻弄される人類の愚かさ、そして人智を超越した大自然に対する無力さが、人類文明の思い上がりを描き出している。

　映像面に関しては「人間の目線」が重視され、怪獣の巨大感、その圧倒的な存在感に息を呑む。ハワイのシークエンスにおけるムートー襲来からゴジラ上陸、ムートーと対峙、までの演出は白眉だ。平和な日常が一瞬にして崩壊、戦場へと様変わりする一連の流れは流石のもの。怪獣登場時のテンポ感、そして迫力は本家ゴジラ以上に凄まじい。ただ人間目線にこだわるあまり怪獣バトルがブツ切りになってしまっているのは唯一の難点といえば難点で、最終決戦まではかなり焦らされることになる。そのぶん最後は怪獣三体のバトルがしっかりと描かれ、ここでも人間目線の演出が意識されており迫力が素晴らしい。

　本作は成功を収め、日本でも新作「シン・ゴジラ」が制作される運びとなった。また2017年の「キングコング：髑髏島の巨神」は本作と設定を共有しており、レジェンダリーの怪獣映画シリーズ「モンスターバース」シリーズが始動することとなった。また2019年には本作の直接の続編である「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」が公開された。