「パシフィック・リム」(2013)……巨大ロボットと怪獣軍団の環太平洋攻防戦

原題「PACIFIC RIM」

製作国:アメリカ

監督:ギレルモ・デル・トロ

製作:トーマス・タル、ジョン・ジャシュニ、ギレルモ・デル・トロ、メアリー・ペアレント

製作総指揮:カラム・グリーン

原案:トラヴィス・ビーチャム

脚本:トラヴィス・ビーチャム、ギレルモ・デル・トロ

撮影:ギレルモ・ナヴァロ

プロダクションデザイン:アンドリュー・ネスコロムニー、キャロル・スピア

衣装デザイン:ケイト・ホーリー

編集:ピーター・アムンドソン、ジョン・ギルロイ

音楽:ラミン・ジャヴァディ

出演:ローリー・ベケット、イドリス・エルバ、菊地凛子他


 西暦2013年、グアム沖の深海に生じた割れ目から、巨大な怪獣が出現。人類は辛くもこれを撃滅するが、怪獣はその後も次々と現れた。人類は一致団結し、環太平洋防衛軍を創設、巨大ロボット兵器・イェーガーを開発する。イェーガーとそのパイロットの活躍により、怪獣被害は一時的に抑えられたものの、怪獣は強さを増し、出現ペースも早まってくる。やがて人類は劣勢に立たされ、イェーガー計画の中止が決定。代わりに太平洋沿岸に巨大な防護壁が建設されることになった。イェーガー部隊の最後の任務は、壁の建設完了まで香港を防衛すること。しかし防衛軍司令官は、「割れ目」を塞ぐための計画を密かに遂行しようとしていた――。


 2013年に公開された完全新作の怪獣映画。制作は2000年に設立され、「バットマン・ビギンズ」(2005)「マン・オブ・スティール」(2013)等を世に送り出したレジェンダリー・ピクチャーズ。そして監督を努めたのがギレルモ・デル・トロである。「パンズ・ラビリンス」(2006)など、独特な雰囲気を持つダーク・ファンタジー系の作品で有名になっていたが、実は日本のロボットアニメや怪獣映画に強い影響を受けていたという。そんな彼の趣味嗜好が全面に反映されたのがこの映画。巨大ロボットに巨大怪獣、数々のアニメや特撮作品で描かれてきた要素を寄せ集め、誰もが知っているネタの数々を、誰も見たことのないような最高のクオリティで映像化してみせたのである。イェーガーの発進シークエンス、怪獣の重量感、そしてケレン味に溢れた大迫力のバトルシーンなどなど、ツボを抑えた演出は見事という他なく、怪獣映画に飢えていた国内外のファンを陶酔させた。怪獣映画にありがちな「怪獣とのファーストコンタクト」「怪獣にやられるだけの軍隊」「怪獣攻略法の研究」などといったお馴染みの展開はプロローグで全部終わらせ、最初から怪獣とロボットの殴り合いを存分に魅せる構成も潔い。一方で怪獣の死体処理問題など、「怪獣オタクが気になっていたけど今までの怪獣映画では描かれなかったディテール」をも物語の中に取り込み、怪獣がいる世界のリアルさに説得力を持たせている点は画期的であろう。また日本の作品へのオマージュとして、怪獣がそのまま「KAIJU」と呼ばれていたり、怪獣のサイズを表すカテゴリー分けの名前が「セリザワ・スケール」だったり、怪獣名にも日本語由来のものが多い。こういったところにも監督のオタクぶりが如実に現れている。


 作中に登場する怪獣は10体以上。ナイフヘッドなどの基本的なスタイルの怪獣は、よく見れば腕が四本あり、ゴジラのような小さい腕と、キングコングのようなナックルウォーキング用の巨大な腕を持つ。日本怪獣とアメリカ怪獣、両方の伝統を受け継いだデザインである。他にもゴリラ型や甲殻類タイプなどそのバリエーションは豊かで、たった一作で「パシフィック・リム怪獣」のジャンルを成立させてしまっている。怪獣は市街地で暴れるのはもちろん、クライマックスでは海中戦闘を展開。従来の怪獣映画では実現できなかった、海中を縦横無尽に泳ぎ回る巨大怪獣の姿を堪能できる。なお、このへんのシーンは劇場公開時やソフト発売時には「暗すぎてよく見えない」などと言われていたが、4K版なら何もかもくっきり見える上、怪獣の皮膚のディテールまで確認できる。4K環境があるなら、UHDBDでの鑑賞を強くお勧めする。


 本作の興行収入は、本国アメリカではそれほどではなかったものの、中国で大ヒットし、日本でも熱狂的なファンを生んだ。5年後の2018年には、続編となる「パシフィック・リム:アップライジング」が公開された。

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