「ガメラ2 レギオン襲来」(1996)……平成怪獣映画の金字塔
製作国:日本
監督:金子修介
製作総指揮:徳間康快
プロデューサー:土川勉、佐藤直樹、南里幸
脚本:伊藤和典
撮影:戸澤潤一
特撮監督:樋口真嗣
怪獣デザイン:前田真宏、樋口真嗣
視覚効果:松本肇
美術:及川一
編集:荒川鎮雄
音楽:大谷幸
音楽プロデューサー:木村敏彦
造形:原口智生、品田冬樹、若狭新一
特技・撮影:木所寛
特技・美術:三池敏夫
特技・編集:普嶋信一
助監督:片島章三
出演:永島敏行、水野美紀、石橋保他
北海道の恵庭岳に隕石が落下した。しかしその痕跡だけを残して、隕石は消失していた。それを皮切りとして北海道では怪現象が頻発。オーロラの発生、光ファイバーケーブルの消失、謎の生物によるビール工場の襲撃――それらの出来事は徐々に札幌へと近づいていた。そしてついに事態は大きく動き出す。札幌の地下鉄で謎の生物が電車を襲撃、同時に巨大な植物がビルを突き破るように出現した。自衛隊は生物と植物の掃討のために出動、ガメラも札幌に飛来する――。
平成ガメラの二作目。主要スタッフは前作から引き継がれ、前作と同じくリアルかつシリアスな作劇が貫かれている。平成ガメラは作品ごとにその切り口を異にしているが、前作が「王道の怪獣映画」ならば今回は「戦争映画としての怪獣映画」とでも呼ぶべき作品となっており、宇宙怪獣レギオンの侵略に対する自衛隊の戦いがストーリーの主軸である。自衛隊全面協力のもと、実際の戦車や兵器が数多く登場する他、有事における作戦の展開や民間人の避難、索敵、通信などが細かく丁寧に描かれ、「自衛隊と怪獣との戦争」を徹底的にシミュレートしている。
しかし本作最大の魅力は、何と言っても新怪獣レギオンであろう。レギオンとは巨大なマザーレギオン、小型のソルジャーレギオン、そしてレギオンプラント(草体)が形成する共生関係の総称で、劇中での正式名称も「symbiotic Legion」である。マザーとソルジャーは土の中に含まれる二酸化ケイ素を食べ、酸素を放出する。草体はその酸素を糧として急成長、開花すると大爆発を起こす。酸素濃度の上昇は爆発の威力を増大させ、草体の種子は宇宙空間に打ち上げられる。種子には新たなマザーレギオンの卵が産み付けられており、また別の星で繁殖を行うのだ。両者は互いの繁殖のために密接な関係を築き上げているのである。
しかし、レギオンの脅威はその宇宙規模の繁殖力だけではない。前述したようにレギオンは大量の酸素を放出し、大気組成を作り変えてしまう。そのため地球生物とレギオンの共存は不可能、また電磁波で会話を行うレギオンは、他の電磁波の発生源を敵とみなして攻撃するため、人類文明にとっては天敵となる。実際に作中でも、札幌、仙台といった人口密集地に営巣し、最後は首都圏を目指して侵攻している。その存在の危険性を突き詰め、また、大都市を襲撃する理由付けもなされた設定が秀逸である。怪獣映画ではしばしば「怪獣との共存」が取り上げられるが、本作ではそんな可能性をハナから排除。「怪獣退治」という言葉すら生ぬるい、「滅ぼさなければ滅ぼされる」という状況はまさに戦争というしかない。
さらに素晴らしいのはそのデザインで、群体かつ甲殻類というモチーフはデストロイアと重複しているが、そのアプローチは全く異なり、シャコをメインモチーフとしたマザーレギオンの琥珀色のボディは、無機質でありながら美しさと恐怖を併せ持つ。スーツアクターが背中合わせで中に入る着ぐるみは、人の体型を感じさせない工夫が凝らされ、その異形のフォルムは他に類を見ない。また虫系でありながら、ガメラに頭部をへし折られた際、目を真っ赤にして反撃に打って出るシーンでは、無機質な中にも感情が垣間見られる。設定、デザインともに独創的な魅力を持ったレギオンは、今でも根強い人気を保つ。「復活怪獣ではなく新怪獣を出す」という制作陣の決断は、この上なく成功したと言えるだろう。
本作は高い評価を得て、怪獣映画としては初めて日本SF大賞受賞を受賞した。観客動員数は前作を上回ったものの、次回作「ガメラ3」の制作には間が置かれることとなった。
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