「モスラ」(1996)……護るために闘う・新生モスラ爆誕


製作国:日本

監督:米田興弘

製作:富山省吾

企画:田中友幸

プロデューサー:北山裕章

原案:田中友幸

脚本:末谷真澄

撮影:関口芳則

特殊効果:渡辺忠昭

美術:部谷京子

音楽:渡辺俊幸

特技・撮影:江口憲一、大根田俊光

特技・美術:大澤哲三

特技監督:川北紘一

助監督:三好邦夫

出演:小林恵、山口紗弥加、羽野晶紀他


 ゴジラシリーズは一旦の終了を迎えたが、東宝怪獣映画の系譜が途切れたわけではなかった。「VSデストロイア」の翌年、東宝はゴジラに代わる新ヒーローにモスラを抜擢、三部作の第一弾となる「モスラ」を公開した。「モスラ対ゴジラ」以来のモスラ主役映画である。


 ストーリーは、太古の封印から解放されたデスギドラとモスラとの戦いを描く怪獣対決モノ。環境破壊への警鐘を全面に押し出しつつ、主人公一家、モスラ親子、そして少美人姉妹を通じて描かれる家族の姿もテーマのひとつ。またゴジラシリーズ異常にファンタジックな内容になっているのが特徴で、さらにファミリー層を意識した作りになっている。


 本作は完全新作であり、過去の作品との繋がりはない。モスラのデザインは「VSモスラ」のものと共通しているが、造形物は新しく作られたもので、設定上のサイズも小さくなっている。インファント島や小美人の設定はそのままだが、小美人はモスラの巫女であると同時により妖精らしく描かれ、今までの小美人よりもずっとアクティブに動き回り、物語を牽引する。悪の小美人も登場し、両者の対立もドラマの中心となる。


 また本作では子供モスラの誕生も描かれるが、その子供モスラこそが三部作の真の主役。最初は親モスラの危機に駆けつけるべく、未熟な状態で生まれるも、デスギドラ相手に果敢に挑みかかっていく(ここでは歴代で初めて成虫モスラと幼虫モスラの同時攻撃が描かれる)。その後は屋久杉に繭を張り、成虫へと変態。成虫は今までのモスラとは異なり、グリーンを基調としたカラーリングで、スマートかつヒロイックなデザインとなった。モスラの見た目をここまで大胆にアレンジしたのは今回が初である。このモスラは様々な特殊能力やビーム攻撃を持っており、防御力も今まで以上、さらにすさまじいスピードで飛行可能。母性的で儚いというモスラのイメージを払拭するほどの強さを持つ、まさしく新ヒーローになるべくして生まれたモスラである。

 ちなみにこの新生モスラは名称が定まっておらず、「新モスラ」「グリーンモスラ」「モスラ・レオ」「モスラ・エクセルド」など、資料によってまちまちである。新モスラが最も一般的だと思われるので、ここでは新モスラと呼称する。


 さて、モスラ親子と激戦を繰り広げるのが、新怪獣デスギドラだ。その名から解るようにキングギドラの亜種だが、全身が銀色で、鱗はなく、四足歩行型で、翼は赤い。キングギドラとの共通点は三つ首くらいである。設定上では「不定形の宇宙生物がかつて交戦したキングギドラの姿を模したもの」などとされている。植物の生命エネルギーを吸収し、森林を不毛の地に変えてしまう。正義のモスラに対して明確な悪の存在として演出されており、また自然のエネルギーを得た新モスラとは対局の存在である。溶岩流や火砕流に似た攻撃を使う他、終盤では翼を生やし、ごくわずかだが新モスラとの空中戦も見せた。

 植物のエネルギーを狙うという特性上、デスギドラが襲うのは緑豊かな森林ばかりで、都市部への侵攻は一切なく、自衛隊との交戦もない。しかし迫力に欠けるかといえばそんなことはなく、怪獣バトルは盛り盛りな上、大量の火薬を惜しげもなく使った爆発の連続、そしてダムの決壊シーンはたいへん見応えがある。またドラマパートも特撮的な見せ場が多く、特に主人公宅のリビングで繰り広げられる小美人同士の空中戦は、スピーディな展開の連続で飽きさせない。急速に発達してきたCGも、ミニチュアと適切に使い分ける形で用いられ、川北特撮の新たな魅力を引き出した。ジュブナイルチックな作りは大人のファンには受けが悪いかも知れないが、総じて出来は良く、ゴジラともガメラとも違う新たな怪獣映画を生み出すことに成功している。


 本作の配給収入は11・5億円を記録。好評を受けて翌年には第二作目が公開された。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る