「ゴジラVSデストロイア」(1995)……ゴジラ死す!平成シリーズ完結編

製作国:日本

監督:大河原孝夫

製作:田中友幸、富山省吾

脚本:大森一樹

撮影:関口芳則

特殊効果:渡辺忠昭

美術:鈴木儀雄

編集:長田千鶴子

音楽:伊福部昭

特技・撮影:江口憲一、大根田俊光

特技・美術:大澤哲三

特技・編集:東島左枝、伊藤伸行

特技監督:川北紘一

特技助監督:鈴木健二

助監督:三好邦夫

出演:林泰文、辰巳琢郎、石野陽子他


 ゴジラとリトルが暮らしていたバース島が、ウランの爆発によって消滅した。行方をくらましていたゴジラは香港に出現。しかしその体はオレンジ色に発光し、赤い熱戦を吐きながら香港の街を破壊した。ゴジラは爆発の影響を受けて体内の核エネルギーが不安定になり、いつ核爆発を起こしてもおかしくない、危険な状態だった。一方のリトルも爆発の影響でゴジラジュニアへと成長を遂げ、ベーリング海のアドノア島へ帰ろうとしていた。ジュニアを追うゴジラ。スーパーXⅢの冷凍兵器とカドミウム弾によってゴジラの核爆発は回避されるが、メルトダウンの危機が迫っていた。タイムリミットが近付く中、ゴジラとデストロイアを交戦させ、オキシジェン・デストロイヤーの力でゴジラを抹殺する作戦が立案される――。


 平成シリーズ最終作。延びに延びていたハリウッド版「GODZILLA」の公開の目処が付き、日本版ゴジラは一旦の終了を迎えることとなった。キャッチコピーの「ゴジラ死す」が示すとおり、ゴジラの最期が描かれている。当時人気の絶頂にあったゴジラの死は、大きな話題を呼び、新聞などでも大きく報道された他、ファンによる抗議活動も起こり、告別式も執り行われた。東宝もゴジラの死を全面に押し出したプロモーションを展開、公開前には各種メディアで「ゴジラ最期の日まで○日」というカウントダウンが行われた。ゴジラ死亡が社会全体を巻き込んだ一大イベントとなっていたことが窺える。


 ゴジラの死の理由は、エネルギーの暴走による自壊。全身を赤熱化させた本作のゴジラは「バーニングゴジラ」と呼称され、放射熱線も赤色がデフォルトとなっている。着ぐるみには800個以上の電球が仕込まれ、またそれを制御するためのコードも引きずっていていため、スーツは過去最重量となった。そのため動きが重く、撮影した映像を早送りして使っていた。また蒸気が噴き出すギミックもあるが、ガスが着ぐるみの中に入って酸欠を引き起こしたり、電飾によって感電したりする危険もあったという。ゴジラより先に中の人が死にそうである。


 本作は、同じく「ゴジラの死」を描いた第一作「ゴジラ」と密接な関係にある。主要人物が第一作で山根博士に引き取られた新吉少年の子供であり、また河内桃子が同じ役で出演している。そして伊集院博士が生み出したミクロオキシゲンと、かつてゴジラを葬ったオキシジェン・デストロイヤーとの類似性が語られ、芹沢博士の映像が挿入される。そして新怪獣デストロイアは、まさにそのオキシジェン・デストロイヤーの化身とも呼ぶべき存在であり、ゴジラの最期の敵として立ちはだかる。


 デストロイアは甲殻類をモチーフにしたような怪獣。「古代の生物が怪獣化した」という出自はゴジラと同じだが、ゴジラ以上に異形の存在となっている。最初は微小体と呼ばれるミクロサイズでの登場。水族館の熱帯魚を次々白骨化させていくというショッキングな映像で、強烈な第一印象を残す。その後はヘドラのように成長を繰り返し、身長2メートルほどの幼体の大群がビル内で警察の特殊部隊と交戦、再登場後はひとつに合体して身長40メートルの集合体(中間体)となる。弱点の低温攻撃ももはや通じず、武器にしていたミクロオキシゲンもオキシジェン・デストロイヤーへとパワーアップ。劇中ではこの時点で、デストロイアという名前を与えられる。その後はゴジラジュニアと交戦、圧倒するも最後はジュニアの熱戦に吹き飛ばされ、品川火力発電所へと墜落した。


 最後は悪魔的なフォルムの完全体へと進化を遂げ、ゴジラとジュニアの感動の再会に割って入り、ジュニアをぶち殺してしまう。怒り狂ったゴジラとデストロイアの決戦はまさに壮絶、暴走状態のゴジラにはもはやオキシジェン・デストロイヤーすら通用せず、ゴジラは怒りをぶつけるようにデストロイアに肉弾戦を挑む。デストロイアは腹部に大きなダメージを受けるも、集合体に分裂してゴジラに群がり、再び完全体に戻ったときには受けた傷も再生しているという、完全生命体の名に恥じぬ不死身ぶりを見せつけた。そしてついに訪れるメルトダウンの時。平成シリーズの全てが、ここに集約されている。


 本作は田中友好、伊福部昭、川北紘一、薩摩剣八郎が参加した最後のゴジラ映画となった。平成ゴジラシリーズはこれで終了となったが、その功績は、作品としての評価以上に、新世代の怪獣少年を無数に生み出したことにあると言っても過言ではないだろう。

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